帰化植物
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薬用植物チョウセンアサガオなど)

牧草(コヌカグサナピアグラスなど)

園芸植物(ムラサキカタバミなど)

材木用の樹木(小笠原におけるリュウキュウマツなど)

その他:緑化用(シナダレスズメガヤ、ギンゴウカンなど)

この両者の中間として次のような場合もある。

栽培を意図して持ち込んだ植物に紛れて入る場合
作物には、その畑に生育する雑草が付随する。これらを特に随伴植物という場合もある。そのような雑草は作物の種子に紛れて収穫され、次回も一緒に播種されるように適応したものがあり、当然のように作物の種に紛れて運ばれ、一緒に持ち込まれる。牧草や被覆植物などではそれほど混入を気にしない例もある。

植物質ではあるが栽培を意図しないものに紛れて入る場合
例えば培養土とともに入る例である。日本では検疫で土の持ち込みが禁止されているが、ミズゴケなどは認められているので、それと共に入ることもある。その他、乾燥した植物を荷造り時の詰め物にしたものから入った例(シロツメクサが有名)もある。

普通は人為的に撹乱された場所に侵入しやすい。例えば都市のさら地などでは、放置すれば帰化植物ばかり生えてくることが少なくない。外国との物資の出入り口である空港には特に帰化植物が多く見つかる。同様に工場などの物資の出入り口にも帰化植物が入りやすい。鉄道線路のバラストを敷き詰めたような厳しい環境であっても、むしろビロードモウズイカなどは好んで生育する。沖縄県などの米軍基地が所在する地域では、軍事物資にまぎれて帰化植物が侵入する事がある。沖縄県全域に生育する帰化種のシロノセンダングサ(タチアワユキセンダングサ)は、1969年代に嘉手納基地に侵入し、そこから広がったとされている(土屋・宮城、1991)。

多くの植物はそのような場所で繁殖するものの、すでに古くからの雑草で埋められている農村や、より自然環境の保存された場所にはあまり侵入しない。日本のタンポポに関しては、在来種とセイヨウタンポポの間にそのような関係があるとされ、都市化の指標生物としてセイヨウタンポポが指定され、その分布調査が行われたこともある。帰化植物の優占する路傍
白い花はヒメジョオン・高く伸びたのはタチスズメノヒエ

しかし、日本では河原湿地、池沼などでは外来種が侵入し、在来種に置き換わる例が少なくない。そのような環境はもともと一定の撹乱を受けつつ成立している側面があること、それに現在の日本では水環境に富栄養化などの環境悪化が進んでいることなどが原因とも言われる。

長期にわたって栽培されていながら、ほとんど逸出していない植物もある。例えばコスモスなど、河川敷などに大量に栽培される例も多いが、野生状態で見ることはまずない。高度に品種改良が行われたものも逸出しない。たいていはその過程で野外での競争には弱くなっているからと考えられる。それでも、交配で作出された園芸品種から野生化したヒメヒオウギズイセンのような例もある。
消長セイタカアワダチソウ

国外の植物が新たに野外で生育しているのを発見された場合、それは新しい帰化植物と見なされ、報告記録される。しかし、それがそれ以降も生育を続けるかどうかは定かでなく、しばらくして姿を消すことも多い。かと言って消滅したとは限らず、実際に別の場所で発見されることもあるから、それがすぐに帰化しなかったとは判断できず、帰化植物として記録されたままであることが多い。したがって、帰化植物として記録されたものが、すべて現在も生育しているとは限らない。

侵入した帰化植物が大繁殖する例がいくつか知られている。日本ではセイタカアワダチソウが1970年代に大繁殖をしてあらゆる空き地を埋め尽くす勢いであった。逆に日本のクズのように、日本国外で大繁殖して問題になっている例もある。植物に限らず、移入種が大繁殖する例はよく知られており、これはその地域になじんでいない生物であるだけに、天敵がいないなど、生物群集としてその種の個体数増を抑制する仕組みが存在しないためと言われる。

一般的には、島嶼で帰化植物による弊害が大きい。特に海洋島では在来種が圧迫される例が少なくない。そのような島では在来の植物相が豊かでない例も多く、例えば有用植物の不足から多くの植物を持ち込んだ例も多い。海洋島では在来の植生がバランスを欠いている場合も多く、空いたニッチを数少ない種で埋めているから、侵入種の繁殖を可能にしているとも言われる。ガラパゴス諸島ではアカキナノキ(Chinchona pubescens)がマラリア治療薬として持ち込まれ、山頂部の景観を変えるまでに繁殖している。

繁殖するには、その場にその種の生存可能なニッチが存在しなければならない。移入種が繁殖するのは、原産の種でそのニッチを占めるものとの競争に勝つからであろう。一概には言えないが、一般に島嶼では原産種の競争力が弱いものと考えられる。人為的撹乱のある場所では、そのようなニッチを人間が明けているので侵入がたやすいと見られる。

他方、一旦は定着したかに見えても、その状態が続くとも限らない。セイタカアワダチソウの場合、現在では高さが2mにもなる群落を見ることは少なくなり、道端に見かける雑草の一つになった感がある。これは、この種を攻撃するアブラムシなどの天敵が出現したことや、従来の植物が根の伸び方の関係で使用できなかった肥料成分をセイタカアワダチソウは深い位置まで根が伸びる性質によって使用できたことにより大きくなっていたが、時間を経てその肥料成分を大方使ってしまったこと[15]、などが要因である。オオマツヨイグサやオナモミなどは、一頃は日本中にごく普通に見られたものであるが、現在は見ることがほとんどなくなっている。オナモミについては、その代わりにオオオナモミなどがよく見られるので、より強力な新しい帰化種に置き換えられたとも考えられる。

上記のセイタカアワダチソウの場合、日本の生態系の一員として収まったという見方もある一方で、それによって生息域を奪われた植物(タコノアシなど)、及びそれに関連をもっていた動物群集のことを無視できないとする意見もある。
帰化率

ある地域の植物相のうちで、帰化種の率を帰化率と言う。日本では地域によって差はあるが、1930年代には数%と推測され[16]1960年代では10%以下[16]、2000年時点では10%前後とされ、都市部では20%を超す地域もある。

日本国外ではアメリカ合衆国が帰化率が高いことで知られ、在来種17000種に対して帰化種が5000もあり、平均した帰化率でも29%、州によっては45%に達するところもある。海洋島ではハワイマウイ島が47%とやはり高い値となっている。逆にアフリカタンザニアンゴロンゴロでは3%と非常に低いことが知られている。
影響と被害.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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出典検索?: "帰化植物" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2023年7月)
ジャイアント・ホグウィード

帰化植物が起こす大きな問題は在来生物相の撹乱である。特に、前述のように海洋島ではその影響が著しく、在来の植物を絶滅に追い込む要因にすらなる。このような判断は20世紀後半まではあまり意識されず、そのために安易に外来種が導入された事例が多々ある。それ以外の地域では、多くの帰化植物は人為的な撹乱地にのみ生育するものが多いが、なかには在来の植生に食い込んで大繁殖する例も少なくはない。セイタカアワダチソウのように他感作用で他の植物の生育を妨げるものや、ギンネムのように土壌を窒素過多にするものは植生の自然な遷移を妨害する。

大量に増えることそのものが人間生活に影響を与える例もある。日本では琵琶湖等でコカナダモが大繁殖し、漁業などの妨げになった例もあるし、ホテイアオイボタンウキクサは熱帯各地で運河などをせき止める被害を出している。

植物そのものが鋭い棘をもっていたり毒があったりするために被害をもたらす例もある。


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