帯状疱疹
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帯状疱疹

首と肩の辺りに発生した帯状疱疹
概要
診療科感染症内科学, 皮膚科学, 神経学
分類および外部参照情報
ICD-10B02
ICD-9-CM053
DiseasesDB29119
MedlinePlus000858
eMedicinemed/1007 derm/180 emerg/823 oph/257 ped/996
Patient UK帯状疱疹
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帯状疱疹(たいじょうほうしん、: Herpes zoster, Zoster)は、水痘・帯状疱疹ウイルス: Varicella-zoster virus)によって引き起こされるウイルス感染症の一種。
概要

帯状疱疹の原因は、子どもの頃に感染する水痘(水ぼうそう)と同じ水痘・帯状疱疹ウイルスである[1]ヘルペスウイルスの一種であるため、性器ヘルペスと同様に一度でも感染すると、ウイルスは体内の背骨付近の神経節に潜む[2][1]。そのため、加齢ストレス過労後天性免疫不全症候群で免疫力が低下した時に症状が起きる。

水痘にかかったことのある人なら、誰でもその後に帯状疱疹を発症する可能性がある[2][3][4]。1997年から2019年の宮崎県の疫学研究では、帯状疱疹の発症率は50歳以上で増加すること、50歳代と60歳代では女性の方が男性より多いという結果であった[1]

日本において帯状疱疹予防ワクチンは50歳以上を対象に任意接種となっているため、医師らは早期治療とワクチン接種の重要性を呼び掛けている[3]
疫学的知見胸部の帯状疱疹帯状疱疹 84歳男性 3病日目

「1年の中で特に起こりやすいという時期はない」とされていたが、宮崎県内の医療機関(開業医39施設と総合病院7施設)が1997-2006年に行った4万8388例(男2万181人、女2万8207人)に対する調査[5][6]では、8月に多く冬は少なく、帯状疱疹と水痘の流行は逆の関係にある。この現象は、10年間毎年観測された。

この調査とは別に、年齢的に水痘患者数の多い小児との接触の機会の多い幼稚園保育園の従事者には、帯状疱疹の患者数が少ないことも明らかになっている。これは、ウイルスとの接触によるブースター効果で免疫価が高くなり、帯状疱疹が発症し難くなっているものと考えられる。

一般的には、体調を崩しやすい季節の変わり目に多い。基本的には一生に1回であることが多いが、2回以上罹患する人もいる(発症部位は異なることが多い)。再発するのは5%以下[7]。ただし、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病後天性免疫不全症候群(AIDS)、骨髄疾患や免疫抑制薬などで、CD4免疫機能が低下していると、短期間に何回も繰り返す。

また、2014年10月より日本で水痘ワクチンの1-2歳児を対象とした定期接種が実施された事により、帯状疱疹患者の急増が認められている[8][9]

帯状疱疹の活性化時期には、体液中に水痘ウイルスが存在する可能性があり、口腔内から検出されることもある。また皮膚と皮膚の接触感染は勿論、体液感染・飛沫感染・空気感染、物品を介しての伝染もある。

妊娠中に帯状疱疹を発症しても、非妊娠時と経過は変わらず、先天奇形は起こらないと云われているが、帯状疱疹は胎児に感染するので、産婦人科での診察が必要である。高齢者の場合、神経痛が強く残ることがある。疱疹後神経痛、帯状疱疹後神経痛という。疼痛治癒は長期に及ぶ。

帯状疱疹の中には、ごく稀に全身に発疹が出てしまうものもある。これは「汎発性帯状疱疹」といい、重病の扱いを受ける。
臨床所見
原因

帯状疱疹は、潜伏感染している水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因であって、他人から感染して発症するわけではない。しかし、水痘を罹患したことがない人物(特に子供・妊婦には注意が必要)には、接触感染などで水痘として感染する恐れがある。

一度水痘に罹患すると、たとえ治癒しても水痘のウイルスが神経節中に潜伏している状態(潜伏感染)が続く(この状態自体に害はない)。ストレスや心労、老齢、抗がん剤治療・HIVの進行、太陽光等の刺激などにより、免疫力が低下すると、ウイルスが神経細胞を取り囲んでいるサテライト細胞の中で再度増殖する(再活性化)。この増殖によって生じるのが帯状疱疹である。ウイルス再活性化のメカニズムは不明。

60歳代を中心に50歳代から70歳代に多くみられるが、過労やストレスが引き金で若い人に発症することもある。年齢が若いから軽症ですむとはかぎらず、その患者の抵抗力により重症度が決定される。初期に軽症であっても、無理をすることでいくらでも重症化する疾患である。

ごく稀に、骨髄移植に伴いドナーが保有していた病原体により移植後に発症する事がある[10]
一般的な症状初期の発疹

知覚神経の走行に一致して、皮疹出現の数日前から違和感や疼痛が出現することが多い(皮疹と同時、或いは出現後の事もある)。その後一般に帯状に紅色丘疹・浮腫性紅斑・紅暈を伴う小水疱が列序性に出現し、疼痛やそう痒感を伴う[11]。神経痛・神経障害のみで皮疹が出ないという病態(zoster sine herpete)もある。2週間以上治癒しない場合、免疫機能の異常が考えられる。

症状や発症部位によっては合併症として以下がある。

三叉神経第一枝領域(前頭部・前額部)に発症した場合や、ウイルス血症から水痘のように全身に水疱が播種状に出現した場合は、ウイルス性髄膜炎合併のリスクが高い。

鼻背や鼻翼に水疱を形成した場合をハッチンソン兆候と言い、三叉神経第一枝(眼神経)の枝である鼻毛様体神経が犯され、眼合併症(ぶどう膜炎角膜炎)を来す可能性が高い。

耳介やその周囲に水疱を形成した場合、聴神経の障害により眩暈・耳鳴が、顔面神経の障害により顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)に注意が必要である。

臀部下方や外陰部に水疱を形成した場合、稀であるが仙髄に影響が及び、膀胱直腸障害(排尿障害・尿閉・便秘)を来すことがある。

また、まれに特徴的な発疹を生じずに脊髄炎を起こした例[12]や、歯槽骨の壊死・の脱落が発生することもある[13][14]。なお、歯槽骨以外の骨の壊死の報告はない[13]
帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう、英語: Postherpetic neuralgia, PHN)とは、帯状疱疹に伴う神経痛様疼痛の総称で、皮疹が生じている最中の激しい疼痛と、皮疹治癒後に継続する痛みである[15]。なお、皮疹発症後1?3カ月を越えて残る疼痛は、帯状疱疹後神経痛と呼ばれる[16][17]。これは急性期の炎症によって、神経に強い損傷が生じたことで起きる。

急性期の痛みは、皮膚の炎症や神経の炎症によるが、帯状疱疹後神経痛は神経の損傷によるものなので、硬膜外ブロックや傍脊椎ブロックが疼痛緩和に有効である[18]。なおこの症状は、皮膚症状が重症な人、眠れないほどの痛みがある人、または高齢者ほど残り易いとされ[16]、約30%が帯状疱疹後神経痛に移行するとの報告がある[19]
診断・検査

臨床症状と経過で、容易に診断できるが、時に虫刺され、接触皮膚炎単純ヘルペス水痘、自己免疫性水疱症、熱傷などの疾患と鑑別を要することがある。


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