帯状疱疹
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一般的な症状初期の発疹

知覚神経の走行に一致して、皮疹出現の数日前から違和感や疼痛が出現することが多い(皮疹と同時、或いは出現後の事もある)。その後一般に帯状に紅色丘疹・浮腫性紅斑・紅暈を伴う小水疱が列序性に出現し、疼痛やそう痒感を伴う[11]。神経痛・神経障害のみで皮疹が出ないという病態(zoster sine herpete)もある。2週間以上治癒しない場合、免疫機能の異常が考えられる。

症状や発症部位によっては合併症として以下がある。

三叉神経第一枝領域(前頭部・前額部)に発症した場合や、ウイルス血症から水痘のように全身に水疱が播種状に出現した場合は、ウイルス性髄膜炎合併のリスクが高い。

鼻背や鼻翼に水疱を形成した場合をハッチンソン兆候と言い、三叉神経第一枝(眼神経)の枝である鼻毛様体神経が犯され、眼合併症(ぶどう膜炎角膜炎)を来す可能性が高い。

耳介やその周囲に水疱を形成した場合、聴神経の障害により眩暈・耳鳴が、顔面神経の障害により顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)に注意が必要である。

臀部下方や外陰部に水疱を形成した場合、稀であるが仙髄に影響が及び、膀胱直腸障害(排尿障害・尿閉・便秘)を来すことがある。

また、まれに特徴的な発疹を生じずに脊髄炎を起こした例[12]や、歯槽骨の壊死・の脱落が発生することもある[13][14]。なお、歯槽骨以外の骨の壊死の報告はない[13]
帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう、英語: Postherpetic neuralgia, PHN)とは、帯状疱疹に伴う神経痛様疼痛の総称で、皮疹が生じている最中の激しい疼痛と、皮疹治癒後に継続する痛みである[15]。なお、皮疹発症後1?3カ月を越えて残る疼痛は、帯状疱疹後神経痛と呼ばれる[16][17]。これは急性期の炎症によって、神経に強い損傷が生じたことで起きる。

急性期の痛みは、皮膚の炎症や神経の炎症によるが、帯状疱疹後神経痛は神経の損傷によるものなので、硬膜外ブロックや傍脊椎ブロックが疼痛緩和に有効である[18]。なおこの症状は、皮膚症状が重症な人、眠れないほどの痛みがある人、または高齢者ほど残り易いとされ[16]、約30%が帯状疱疹後神経痛に移行するとの報告がある[19]
診断・検査

臨床症状と経過で、容易に診断できるが、時に虫刺され、接触皮膚炎単純ヘルペス水痘、自己免疫性水疱症、熱傷などの疾患と鑑別を要することがある。帯状疱疹は、どの部位にどの様な形で出るかも不明ということもあり、早めの兆候を見逃さず、症状を過小評価しないことが大切である。特に上記の眼・顔面神経麻痺・膀胱直腸障害は、皮疹出現から1週間以上経過した後に出現することもあり、注意を要する。

ツァンク試験(Tzanck試験)は、水疱内容物を塗抹標本とし、ギムザ染色を行い巨細胞を検出する検査で、帯状疱疹以外でも巨細胞は多々認められるが、迅速診断としての有用性は高い。確定診断としては水疱内容物のウイルス抗原を検出する方法、水疱内容物や血液中のウイルスDNAをPCR法で検出する方法、血清IgG抗体価の上昇を確認する方法があるが、通常は行われない。一般のVZVモノクローナル抗体はHSVでも、抗原抗体反応(交叉反応)を起こす。
治療

アシクロビルビダラビンバラシクロビルファムシクロビルアメナメビル抗ウイルス薬が有効で、内服薬や入院治療によるアシクロビル、ビタラビンの点滴による治療により、治癒までの期間短縮が期待できる。ただし、抗ウイルス薬は水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖抑制効果しかなく、病初期72時間以内に投与しないと効果が期待できない。よって病初期以外は、症状を緩和する対症療法が主となる。

同時に、安静にし体力を回復することも大切である。適切な治療が行われれば、早ければ1週間ほどで水疱は痂皮化し治癒する。程度により水疱部が瘢痕化することもある。帯状疱疹の出現している時の急性期疼痛に対しては、アセトアミノフェントラマドールリン酸コデイン、アミトリプチリンが欧米で使用されている。またステロイド系抗炎症薬の投与も、急性期の疼痛を除去する作用がある。

帯状疱疹後神経痛(神経痛様疼痛)は、治癒した後も後遺症として残ることがある。眼と関係する顔面神経で、神経痛様疼痛が発症した際に、適切な治療をしなければ、視力に影響が出ることがある。神経痛様疼痛に対する治療法は確立していないが、疼痛に対し漢方薬による疼痛緩和療法[20][21]や鍼灸療法が行われる事もある[22][23]。必要に応じ、対症療法として神経節ブロック[11]理学療法非ステロイド性抗炎症薬三環系抗うつ薬抗けいれん薬、レーザー治療[24]を行う。

帯状疱疹後神経痛の治療法具体例として、以下のものが挙げられる。※印は保険適用外である。

薬物療法

ワクシニアウイルス接種家炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン

抗うつ薬(三環系抗うつ薬のアミトリプチリンSNRIデュロキセチン単独、および神経ブロックの併用[25])。アミトリプチリンは、1961年に日本で薬価収載された抗うつ薬だが、2016年2月、「末梢性神経障害性疼痛」の効能が追加された[26]

非オピオイド

アセトアミノフェン

非ステロイド系抗炎症薬


プレガバリンミロガバリン(2013年2月より、効能は「神経障害性疼痛線維筋痛症に伴う疼痛」)

オピオイド (トラマドールトラムセット)

麻薬コデインモルヒネフェンタニル

漢方薬補中益気湯[27]、桂枝加朮附湯など) ※

メキシレチン ※


局所療法

カプサイシン、アスピリン、硝酸イソソルビドリドカインなどの外用薬

神経ブロック

イオントフォレーシス

低出力レーザー[28][29]


ワクチンによる予防水痘ワクチン・帯状疱疹ワクチン詳細は「水痘ワクチン」を参照

前述の通り、帯状疱疹は潜伏感染している水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって引き起こされるため、そもそも水痘に罹患しなければ、帯状疱疹は発症しない。水痘ワクチンにより、帯状疱疹を発症する例も存在はするが、非接種の場合と比較して非常に稀な確率である。

免疫抑制剤を使用することになった患者で、帯状疱疹ワクチン接種を受けた者、受けていない者を対照に前向きコホート研究を行った研究がある。


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