市町村防災行政無線
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周波数帯は70MHz帯・400MHz帯を使用している[2]。同報系防災行政無線のアンサーバック機能を利用して、データを収集するシステムを構築している自治体もある。
市町村合併による統合と運用

市町村合併に伴い、システムの統合が進められているが、問題も生じている。設備の老朽化による更新や、デジタル方式へ移行により改善も見られる。

メーカー・システムが異なる設備を使用していた場合、統合運用が困難になる場合がある。特に旧市町村でのメーカー・導入年に大きく差がある場合、制御方式・動作条件や設備の更新時期の違いで問題が発生する。そのため両者を橋渡しをするシステムを独自制作したり、更新時期まで新旧設備を併用することがある。

主指令卓(役所)と副指令卓(吸収合併された市町村の役所)、また子局や中継局を有線通信(自営回線やNTT専用線)で結ぶ構成では、断線や回線不良等で通信が途絶する恐れがある。

移動系では周波数の統一が必要であり、相互連絡に不都合が生じる。共通波で相互連絡を取ることも可能だが、既設システムに当該周波数が導入されていない場合、新たに免許申請や無線設備の改修等が必要になる。

デジタル化

2003年4月に、総務省において「市町村デジタル同報通信システム推奨規格」(総務省推奨規格)が策定され、同年7月には「市町村デジタル同報通信システム」の標準規格が策定された。

利点

電波の利用効率が向上する。

複数チャンネル化・複信通話(
全二重通信)が可能[注釈 7]

静止画像・ファクシミリ・文字情報などのデータ通信が容易である。アナログ方式ではモデムを使用してデータを音声信号に変換する必要があるが、デジタル方式では音声もデータ通信で伝送されているため、ソフトウェアの改修だけで対応することができる。

全国瞬時警報システムと接続が容易である[20]

移動系は都道府県防災行政無線と同一規格であるため、非常時には都道府県防災行政無線を使って自治体をまたいだ通信をすることができる。

欠点

多額の導入費用・長期間のアナログ-デジタル併用運用などの負担が大きい。このためデジタル方式に移行するための国の補助制度が設けられている。なお800MHz帯地域防災無線については2011年[平成23年]6月で廃止され、デジタル方式に移行が完了している。

アナログ方式では戸別受信機以外にも、一般に市販されている広帯域受信機・防災ラジオでも受信することができるが、デジタル方式では汎用の受信機が市販されておらず、専用の個別受信機を使用しなければいけない。デジタル無線電話を復号出来る受信機は、非常に高価である。

音声コーデックは人間の声の周波数帯域に特化されているため、ミュージックチャイムやサイレンなどの音質が劣化したり、ごくわずかではあるが遅延が発生する[10]。アナログ方式のときと同様に外付けのモーターサイレンを設置したり、受信機にサイレン・チャイム音鳴動装置を付加することで対応している自治体もある。

アナログ方式に比べ、デジタル方式の整備費用は高価である(2015年3月末現在、デジタル方式の整備率は、移動系は17.1%、同報系は41.2%[10])。ただし市町村合併・設備の老朽化を機に、国の補助金を利用してデジタル方式に移行する自治体もある。

問題点
騒音

防災無線は限られた数のスピーカーで全世帯に、かつ屋内にいる人間にも強制的に聞かせるという考えのシステムである性質上、本質的に騒音問題を抱えている。特に防災無線スピーカー設置場所の近隣住民に取っては音量が過剰となり、住民から放送差し止めを求める訴訟も起こされている。ただし、いずれも市町村側の主張が認められ、原告の請求は退けられている。

災害情報にしても必要とする人と必要ないとする人がおり、両者から苦情が来るなど運用が難しいという[21]

また、音波を使うために市区町村の境界に近い地区では隣接する自治体に聞こえてしまう。
濫用

特に緊急性の無い内容の放送を行い、騒音公害となっているケースもある。鹿児島県阿久根市では、市長である竹原信一が在任中、自身のブログの記述で障害者団体から抗議を受けた際、防災行政無線を用いてマスコミ批判の放送を行った[22]感染症対策などでわかりきった内容のことを毎日放送され苦情が来る例もある[23]
時報

放送設備の点検を兼ねて行われている時報だが、音量が大きいことから苦情が自治体に寄せられることがある[18]。自治体への苦情が寄せられているが対応は役所によりまちまちである。一例では、愛知県飛島村では1日4回時報が鳴らされていたが、苦情を受け1日1回にした[24]。一方、青森県おいらせ町では毎日朝6時、12時、18時に防災無線が放送され、市民から「眠れない」との苦情が来ているが、「多くの町民に根付いているため変更の予定はない」と回答している[25][26][27]。静岡県富士市では、午前7時にチャイムが鳴り「赤ん坊が起きる」「夜勤明けなのに眠れない」などの苦情が市に寄せられていた。2020年に行われた市の調査でも「なくても困らない」という意見が4割以上との結果出ており、午前7時のチャイムは廃止となった[28]

一方で、農作業など屋外で作業をしている市民には帰宅の目安となっていることもあり、時報を止めない要望があることもある。千葉県富津市では、児童の見守りの告知に代わり、2022年6月末日で午後6時の時報を取りやめる予定だった。しかし時報を続けるよう市民からの要望があり、継続されることが決まった[18]
聞き取りづらさ


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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