以下に左利きが発生する要因とされている説を列挙する。 言語と手仕事の両面において、高度な運動神経を必要とする場合、ヒトの脳の片側の半球
脳の半球説
左利きの人の脳は、右利きの人よりも脳の各所に機能を分散する度合いが高い。左利きの人が脳卒中の発作に見舞われた場合、右利きの脳卒中患者よりも復帰が早い。 1970年代以降に単一遺伝子によって利き手が決定されるという理論が提唱された[5]。マリアン・アネットの理論がその代表で、右利き遺伝子が優性、左利き遺伝子が劣性と仮定された。ただし両親からともに左利き遺伝子を受け継いだ場合は、右利きか左利きかが環境によって偶然に決定され、それが完全にランダムなら左利きの割合は12.5%になる[9]。しかしゲノムワイド関連解析の結果から、利き手の決定は単一遺伝子では説明がつかず、40以上の遺伝子座が関与していると推定されている[10]。 胎児期や出産時になんらかの理由で左脳を損傷すると、左脳による右手のコントロールに問題が生じ、左利きになりやすくなるという説が1970年代に提唱された。正確にいえば、右利きと左利きの比率は基本的には遺伝によって決定されるが、一部の人の左利きは脳損傷によって生じるという理論である[5]。脳損傷は具体例には酸素欠乏や脳性まひ、細菌性髄膜炎などで起きる。この理論の傍証として、脳性まひ患者や側頭葉てんかん患者の左利き率が高いこと、出産時に酸素欠乏になりやすい双子に左利きが多いことが挙げられる[5]。またこの説は、脳に損傷が起きても多くの場合は軽微であり、脳の発達可塑性により神経学的な問題がほとんど起きないことを前提としている[5]。 ゲシュヴィンドらは、テストステロンなどの性ホルモンが、胎児の左脳の発達を遅らせ、右脳の発達を促進することで、左利きが生じるという説を1980年代から発表している[5]。 プレヴィックは、胎内での胎児の姿勢が、聴覚系の発達に影響を及ぼし、それが小脳を通じて利き手に影響するという説を提出している[5]。この理論では多数の人間が右利きとなるが、妊娠後期の胎児の前庭器官になんらかの損傷が発じると、聴覚系のシステムが変容され、左利きが生まれる[5]。 メカニズムは不明だが、利き手は出生前に胎内で決まっているという研究がある。2004年、英ベルファストのクイーンズ大学博士・ピーター・ホッパーによって行われた研究によると、人間が右利きになるか左利きになるかは妊娠10週間目の頃に決定しているという新発見がなされた。 この研究にあたって、妊娠中の女性1000人に超音波走査を実施した結果、例えば10週間目から12週間目の頃に胎児が左手の親指よりも右手の親指を頻繁に吸っていた場合、子供はほぼ確実に右利きとして生まれてくるという関係性が得られた。 またホッパーらはそれ以外にも10週間目の頃の胎内での手の動きと利き手の関連性についてのいくつかの発見があったとしているが、胎内において脳が手に対してそれらの命令を出しているという証拠はなく、また脳の命令よりは脊髄反射によるものである可能性が高いと話している[11]。 左利きの戦士は左手に剣を持ち、右手に盾を持って戦うため、左半身にある心臓を危険にさらし致命傷を負う確率が高くなり、従って右利きの人間が多く生き残るという説があった。これは非常によく言われる説であるが、否定されている。まず、心臓の位置は左半身ではなく身体のほぼ中央にある。
遺伝
脳の損傷
胎内の性ホルモン
胎内での姿勢
利き手の決定時期
その他
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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