工学
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

1325年ごろ文献に現れたときには「軍用兵器の製作者」を意味していた[7]。当時、"engine" には「戦争に使われる機械仕掛け」(例えばカタパルト)すなわち「兵器」という意味があった。"engine" の語源1250年ごろラテン語の ingenium からできた語で、ingenium は「先天的な特性、特に知能」を意味し、そこから派生して「賢い発明品」を意味した[8]。なお、"engineer" は "engine" に接尾辞 "-eer" がついた形で「機関の操作者」という意味、といったような説明がたいへんしばしば見られるが、(少なくともそれが現在の意味における「機関」(engine)ではなく)誤り(異分析)であり、英語版Wiktionaryのengineerの記事でも「Sometimes erroneously linked with engine + -eer. 」としている[9]

後に民間の橋や建築物の建設技法が工学分野として円熟してくると、civil engineering[10] (日本語にあえてすれば土木工学)と呼ばれるようになった。これは "engine" が元々「兵器」を意味していたことから、軍事とは無関係の分野であることを示すために "civil"(市民)とつけたものである。

つまり、古くは "engineering" という語は military engineering 軍事技術だけを意味していたことがある[6]。だが、18世紀以降は civil engineering(=軍事以外の技術)が発展し、それ以来 engineering という言葉は、エネルギーや資源を利用しつつ便宜を得る技術一般[6]を指すようになったのである。

近代的な「工学」と概念は上記のような経緯で形成されたわけであるが、そうした近代的な「工学」に合致するものを人類の歴史を遡ってあらためて探してみると、すでに古代にもそれは見つかる。古代の人々が滑車梃子車輪といった基本的機構を発明したころから存在していたことになる。基本的な機械的(物理的)原理を利用して便利な道具やモノを作るという意味で、これらの発明も工学の現代的定義に合致しているのである。
古代

アレクサンドリアの大灯台エジプトピラミッドバビロンの空中庭園ギリシャアクロポリスパルテノン神殿古代ローマローマ水道ローマ街道コロッセオマヤ文明インカ帝国アステカテオティワカンなどの都市やピラミッド、万里の長城などは、古代の工学の精巧さと技能を示している。

最古の名の知られている土木技術者としてイムホテプがいる[10]。エジプトのファラオであるジェセル王に仕え、紀元前2630年から2611年ごろサッカラジェセル王のピラミッド階段ピラミッド)の設計と建設の監督をしたと見られている[11]

古代ギリシアでは、民間用と軍事用の両方の分野で機械が開発された。アンティキティラ島の機械は、既知の世界最古のアナログコンピュータといわれており[12][13]アルキメデスの発明した機械は初期の機械工学の一例である。それらの機械には差動装置または遊星歯車機構の知識を必要とし、その2つの機械理論の重要な原理が産業革命でのギアトレーン設計を助け、今でもロボット工学自動車工学といった様々な分野で広く使われている[14]

紀元前4世紀ごろのギリシアで投石機が開発され[15]、中国、ギリシア、ローマでは三段櫂船バリスタカタパルトといった複雑な機械式兵器が使われていた。中世にはトレビュシェットが開発されている。
ルネサンス期レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452 - 1519)の自画像。ルネサンス期の人物。芸術家兼工学者の典型[16]。国王や貴族たちに対し、兵器製造に関する技術や(国王の偉大さを示すための)彫像の制作技術を身につけていることを売り込みつつ、彼らの庇護を得て、様々な活動を行った。建築物の設計、(当時の "写真" とも言える)絵画技法の探求、人体解剖を行い、ヘリコプターの構想まで行った。

ウィリアム・ギルバートは、1600年に De Magnete を著し、"electricity"(電気)という言葉も史上初めて使ったということで電気工学の祖とされている[17]

機械工学の分野では、トーマス・セイヴァリ1698年に世界初の蒸気機関を作った[18]。蒸気機関の開発が産業革命をもたらし、大量生産の時代が始まった。

18世紀には工学を専門とする専門職が確立し、工学は数学や科学を応用する分野のみを指すようになっていった。同時にそれまで軍事と民間の工学とされていた分野に、それまで単なる技能とみなされていた機械製作も工学分野の一つとされるようになった。
近現代産業革命で大きな役目を果たしたワット蒸気機関は工学の重要性を示す歴史上の例である。

電気工学の発端は1800年代アレッサンドロ・ボルタの実験であり、その後マイケル・ファラデーゲオルク・オームといった先駆者の実験を経て1872年電動機が発明された。19世紀後半にはジェームズ・クラーク・マクスウェルハインリヒ・ヘルツの成果によって電子工学の分野が始まった。その後の真空管トランジスタの発明によって電子工学の発展が加速され、今では工学の中でも特に技術者の多い領域となっている[10]

トーマス・セイヴァリジェームズ・ワットの発明によって機械工学の発展が促された。産業革命期に各種機械やその修理や保守のための道具が発達し、イギリスからさらに海外へと広まっていった[10]

化学工学産業革命期の19世紀に機械工学と共に発展した[10]。大量生産は新素材や新製法を必要とし、化学物質の大量生産の必要性から1880年ごろまでに新たな産業として確立された[10]。化学工学はそういった化学工場や製法の設計を担っている[10]

航空工学航空機の設計を扱う分野で、航空宇宙工学はそれを宇宙船の設計にまで広げた比較的新しい学問分野である[19]。その起源は19世紀から20世紀にかけての航空機の先駆的開発にあるが、最近では18世紀末のジョージ・ケイリーの業績が起源とされている。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:92 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef