工学
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

これは自然科学分野でもアメリカ合衆国で2人目の博士号である[21]
コンピュータの利用スペースシャトルの大気圏再突入の際の高速な空気の流れのコンピュータ・シミュレーション

コンピュータが工学に果たす役割は大きくなっている。工学についてコンピュータが支援を行う各種ソフトウェアが存在する。数理モデルの構築や、それに基づいた数値解析もコンピュータを使用してなされている。

例えばCADソフトウェアは3次元モデルや2次元の設計図の作成を容易にする。CADを応用したデジタルモックアップ (DMU) や有限要素法などを使ったCAEソフトウェアを使えば、時間とコストのかかる物理的なプロトタイプを作らなくともモデルを作成して解析を行うことができる。

コンピュータを利用することで、製品や部品の欠点を調べたり、部品同士のかみ合わせを調べたり、人間工学的な面を研究したり、圧力・温度・電磁波・電流と電圧・デジタル論理レベル・流体の流れ・動きなどシステムの静的および動的特性を解析できる。これらの情報を総合的に関するソフトウェアとして製品情報管理がある[22]

特定の工学分野のためのソフトウェアもある。例えば、CAMソフトウェアはCNC機械に与える命令列を生成する。生産工程を管理するソフトウェアとして工程管理システム (MPM) がある。EDAは半導体集積回路プリント基板や電子回路の設計を支援する。間接材調達を管理するMRO (Maintenance, Repair and Operations) ソフトウェアなどもある。

近年では、製品開発に関わるソフトウェアの集合体として製品ライフサイクル管理 (PLM) ソフトウェアが使われている[23]
社会的状況

工学は本質的に社会や人間の行動に左右される。現代の製品や建設は必ず工学設計の影響を受けている。工学設計は環境・社会・経済に変化を及ぼす強力なツールであり、その応用には大きな責任が伴う。多くの工学系の学会は行動規約や倫理規約を制定し、会員や社会にそれを周知させようとしている。

工学プロジェクトの中には論争となっているものもある。例えば、核兵器開発、三峡ダム建設、SUVの設計と使用、重油抽出などである。これに対して、企業の社会的責任について厳しい方針を設定している工学企業もある。

工学は人間開発の重要な駆動力の1つである[24]。アフリカのサハラ砂漠周辺の工学的キャパシティは非常に低く、そのためアフリカ諸国の多くは独力で重要なインフラストラクチャを開発することができないでいる。ミレニアム開発目標の多くを達成するには、インフラストラクチャの開発と持続可能な技術的開発ができるだけの十分な工学的キャパシティを必要とする[25]

海外での開発や災害救助を行うNGOは技術者を多数抱えている。次のようないくつかの慈善団体が人類のために工学を役立てることを目指している。

国境なき技師団 (Engineers Without Borders)

Engineers Against Poverty (EAP)

Registered Engineers for Disaster Relief (RedR)

Engineers for a Sustainable World (ESW)

他の学問分野との関係
科学.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}科学者はあるがままの世界を研究し、技術者は見たこともない世界を創造する。—セオドア・フォン・カルマン現代のタービン。タービンが自然界にそのままあったわけではない。自然界に存在しなかったものを創造したわけである。また、その創造のために、様々な自然科学的な理論を大いに活用するが、実際に用いるのはそうした純理論だけではない。経験則も用いたおかげで、こうしたタービンも実現しているのである。

Fung らは古典的な工学教科書 Foundations of Solid Mechanics の改訂版の中で、次のように書いている。

工学は科学と全く異なる。科学者は自然理解しようとする。技術者は自然界に存在しないものを作ろうとする。技術者は発明を強調する。発明を具現化するには、アイデアを具体化し、人々が使える形で設計しなければならない。それは装置、道具、材質、技法、コンピュータプログラム、革新的な実験、問題の新たな解決策、既存の何かの改良である。設計は具体的でなければならず、形や寸法や数値が設定されていなければならない。新しい設計にとりかかると、技術者は必要な情報が全て揃っているわけではないことに気づく。多くの場合、科学知識の不足によって情報が制限される。そこで技術者は数学や物理学や化学や生物学や力学を勉強する。そうして工学における必要性から関連する科学に知識を追加することも多い。こうしてengineering sciences(理工学) が生まれた。[26]

科学的手法と工学的手法にはオーバーラップする部分がある。工学的手法は、科学的手法と、科学的に厳密には解明されていないが過去の同様の事例から確からしいと思われる経験則を組み合わせたものである。しかし、いずれの手法もその基本は現象などの正確な観察である。観察結果を分析し伝達するため、どちらも数学や分類基準を使う。

Walter Vincenti は著書 What Engineers Know and How They Know It[27] において、工学の研究は科学の研究とは違う性質を持っているとしている。工学は物理学化学が基本的によく理解している分野を扱うが、問題自体は正確な方法で解くには複雑すぎる。例えば、航空機における空気力学的流れをナビエ-ストークス方程式の数値近似で表したり、材料の疲労損傷の計算にマイナー則を使ったりする。また、工学では半ば経験則的な手法もよく採用している。科学では考えられない特徴であり、例えばパラメータ変化法がある。

「@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}歴史的に見ると工学は理学と相互に影響しながら発達してきたと言える。例えば、蒸気機関の効率についての研究からについての認識が深まっていった。熱についての理学的な研究が進められることによって冷却も可能になったと言える。[要出典]」とも言う[誰?][いつ?]。
医学と生物学

目的や方向性は異なるが、医学と工学の一部の分野の共通部分として人体の研究がある。医学においては、必要ならテクノロジーを使ってでも人体の機能を維持・強化し、場合によっては人体の一部を代替することも目指すことがある。

現代医学は既に一部の臓器の機能を人工のものと置換することを可能にしており、心臓ペースメーカーなどがよく使われている[28][29]医用生体工学は生体への人工物の埋め込みを専門とする領域である。

逆に人体を生物学的機械として研究対象とする工学分野もあり、テクノロジーによってその機能をエミュレートすることを専門とする。それは例えば、人工知能ニューラルネットワークファジィ論理ロボットなどである。工学と医学の学際的な領域もある[30][31]

医学も工学も実世界における問題解決を目的としている。そのためには、現象をより厳密かつ科学的に理解する必要があり、実験や経験的知識が必須となっている。

医学はその一部として人体の機能も研究する。人体を生体機械と捉えた場合、工学的手法でモデル化できる多数の機能を持っている[32]

例えば心臓ポンプによく似た機能を有し[33]骨格てこを繋げたような構造をしている[34]と理解することも可能である。また電気信号を発している[35]。このような類似性や医学における工学の応用の重要性の増大により、工学と医学の知識を応用した医用生体工学が生まれた。

システム生物学のような新たな科学の分野は、システムのモデリングやコンピュータを利用した解析など工学で使われてきた解析手法を採用して、生命を理解しようとするものである[32]
芸術蒸気機関車の設計図。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:92 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef