許可を取ることで、毎年の決算の届出等が義務付けられる一方、法違反(無許可営業)とならないこと、社会的信用が増すこと、経営事項審査を受け公共工事に参加できることなどのメリットがある。
建設業許可は5年更新制であり、有効期間が満了する前に更新の許可申請をする必要がある。直前の決算等において許可要件を満たしていないと、許可は下りない。許可期限前に更新申請すれば、許可が下りる下りないの判断があるまでは、従前の許可番号で営業ができる。
許可の区分
(1)「国土交通大臣許可」か「都道府県知事許可」か
「国土交通大臣許可」とは、2つ以上の都道府県の区域内に営業所(常時見積もり、契約締結、金銭の受領、支払等建設工事の請負契約に関する重要な業務を行う事務所)を設けるときに義務づけられる許可のこと。例えば、東京都に本店(主たる営業所)を置いて大阪府や愛知県に支店(従たる営業所)を設けるような場合に必要となる。
それに対して、「都道府県知事許可」とは、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けるときに義務づけられる許可である。なお、「都道府県知事許可」であっても、営業所が同一都道府県に限るというだけで、営業エリアや施工エリアに制限はない。例えば大阪府内に営業所を置く大阪府知事の許可を受けている業者が、京都府での仕事を受注することもできる。他府県に従たる営業所を置く場合は、現在有効な都道府県知事許可から、国土交通大臣許可への許可換え新規申請となる。
申請書類の提出先は各都道府県を窓口に、都道府県知事許可の場合は各都道府県知事、国土交通大臣許可の場合は各都道府県知事を経由し、各地方の整備局になる。
(2)「特定建設業許可」か「一般建設業許可」か
「特定建設業許可」とは、建設工事の発注者(最初の注文者)から直接請け負った一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が2つ以上あるときは総額)が4,000万円以上(消費税込み。ただし、建築一式工事業に関しては6,000万円以上)となる下請契約を締結して施工しようとする者に、義務づけられる許可のこと。金額区分は請負金額ではなく、更に外注に回す金額の総額であることに注意。外注先の下請業者の保護を目的とし、発注代金の支払等に格段の義務が伴う。
一方、「一般建設業許可」の場合は、元請として工事を請け負った際に前述した制限金額を超える金額の工事を下請業者に発注することができない、高額工事を元請として受注する場合は、外注金額を枠内に抑え、直営(自家)施工することになる。これらは元請契約として受注する場合に限る制限である。
元請工事としてではなく、下請工事として請け負う場合に関しては、「一般建設業許可」であっても外注総額などの制約を受けず受注することができる。
「特定建設業許可」の申請を行うには、指定建設業の業種(後述)かそうでないかによって要件は異なるが、一般建設業許可に求められる資格要件よりは厳しいものとなっている。下請負人への支払い能力(自己資本などの財務内容)や、営業所ごとに専任配置する技術者の数が要件を満たしていないと特定建設業許可は取れない。
したがって、許可区分は、大臣特定、知事特定、大臣一般、知事一般の4種類となる。ひとつの業者が、「大臣」と「知事」若しくは複数の「知事」許可を同時に、又はある業種の許可を「一般」と「特定」を同時に取得することはない。ただし、業種が違えば、ある業種は特定、別の業種は一般で許可を取る場合はある。
許可年度を加えて、「特定建設業 建築工事業 国土交通大臣許可(特定-17)第○○○○号」などと表記される。これを明示した許可票を営業所及び工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。この許可票を通称「金看板」と呼ぶ。許可年度が5年以上前の広告や許可票を散見するが、この場合、更新したのか確認することも重要である。
許可の要件
一般建設業
一般の許可を受けるには次の要件を満たさなければならない(第7条)。
建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること[2]
常勤役員が一定の要件を満たすこと、または一定の要件を満たす常勤役員と常勤役員を直接に補佐する者の両方を置くこと
適切な社会保険に加入していること
営業所ごとに専任の技術者がいること(専任技術者)
建設工事の請負契約に関して誠実性のあること
財産的基礎、金銭的信用のあること
許可を受けようとする者が一定の欠格要件に該当しないこと
このうち、1.1.常勤役員および補佐者、2.専任技術者に関しては「名義借り」でなく、常勤の社員・役員や事業主であることが必須[注釈 5]であり、これらの資格者なしに許可を取ることはできない。許可取得・更新時だけでなく継続して必要であり、退職したり資格を失ったりした場合は、有資格者を補充するか、さもなくば建設業を廃業するしかない。
1.2.社会保険[注釈 6]に関しては、以下の要件が定められている。 建設業法上の建設業とは別に、労働基準法ほかの労働法制、及び職業安定法ほかの職業安定法制においても、建設業について独自の定義が存在する。 労働基準法における土木・建設業は、労働基準法別表第1 労働基準法における土木・建設業には、以下のような特徴がある。 労働保険徴収法における建設事業は、労働保険徴収法第12条
健康保険および厚生年金保険については、適用事業所[注釈 7]に該当する全ての営業所について、加入の旨を届け出ていること
雇用保険については、適用事業[注釈 8]の事業所に該当する全ての営業所について、加入の旨を届け出ていること
特定建設業
特定の許可は一般建設業の要件を満たすとともに、更に2.の専任技術者、4.の財産的基礎に厳しい条件を定めている。
指定建設業
上記の業種一覧で青地の(指定)とした7業種、すなわち、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、ほ装工事業、造園工事業の業種の特定建設業の許可を受けようとするときは、2.の専任技術者は実務経験では認められず、一定の国家資格(1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士などの資格)を所持、又は大臣特別認定者である必要となる。
労働法制・職業安定法制における建設業
労働基準法上の土木・建設業
「工業的事業[注釈 10]」に含まれる。
労働基準法第56条
労働基準法施行規則第48条の2の規定により、労働基準法第87条の適用対象とされる。
労働保険徴収法上の建設事業
労働保険徴収法における建設事業には、以下のような特徴がある。 職業安定法第32条の11
雇用保険料率について、一般の事業とは異なる料率が設定されている[注釈 11]。
労働保険徴収法施行規則第7条の規定により、労働保険徴収法第8条の適用対象とされる。
労働保険徴収法施行規則第77条の規定により、労災保険関係成立票(労働保険徴収法施行規則様式第4号)を見やすい場所に掲げることが義務付けられる。
職業安定法・労働者派遣法上の建設業務
職業安定法・労働者派遣法上の建設業務は、以下の行為が禁止されている。
有料職業紹介事業者による職業紹介の対象とすること(職業安定法第32条の11により禁止)[注釈 13]
労働者派遣事業の対象とすること(労働者派遣法第4条により禁止)[注釈 14]