工事現場
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建設工事請負契約に限らず、請負契約は本来双務契約である。しかしながら、日本の請負工事契約には、ある種の「片務性」が存在する[4]

契約の原則は「当事者双方が同等な権利と義務を持つこと」である。しかしながら、日本の請負工事契約においては、契約変更に関して発注者が主導的な役割を発揮するのが通例となっている。契約変更に関する追加費用も、当事者間の交渉により決定されるのではなく、発注者が規定した所定の積算方式に基づいて算出される[4]

契約が双務契約であるならば、請負者は契約条件・設計・施工条件の変更による追加費用の請求(クレーム)に関する権利を持つはずである。しかしながら、公共工事標準請負契約約款をはじめとする日本の請負工事契約の約款においては、一般にクレーム条項が欠如している[4]
請負契約価格

建築工事では入札などで契約金額を決め,責任をもって工事を完成させる価格のこと。公共事業では入札参加者に設計図書を提示して入札に付し,予め作成した予定価格以下,かつ,一般的に最低の価格をもって応札した者が落札する。この価格が契約価格で、近年は最低価格に限度を設ける場合も少なくない[注釈 13]。請負のため,設計変更などの場合を除き価格の変更はない。いわゆる総価契約方式である。ただし,昭和50年代の国際的な石油高騰のように,物価が著しく変動した場合には契約金額を改定できるスライド条項が契約約款に記されている。
予定価格の上限拘束性

日本の入札制度においては、「予定価格を上回る価格での入札は一律失格とする」という制度運用がなされている。これは「予定価格の上限拘束性」と呼ばれる。日本以外の主要国における公共発注には、予定価格に上限拘束性はない[5]
その他

建設工事における「工事会社」「工事業者」という語は、当該工事を実施した担当会社、担当業者についての呼称として使用される。
建設工事以外の工事

項名としては「建設工事以外の工事」としているが、以下に掲げる工事が建設工事に該当する場合も存在する。電気通信工事のために道路の通行止めを行っている様子。
電気保安制度における工事

電気事業法第1条において、同法の立法目的として「電気工作物の工事、維持及び運用を規制すること」が掲げられている[6]。事業用電気工作物の工事、維持及び運用にあたっては、その保安を監督する者として、電気主任技術者[注釈 14]を配置しなければならない旨が同法で定められている[7]

電気工事士法は、一般用電気工作物及び最大電力500kW以下の自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事に対して適用される法律である。同法が適用される電気工事[注釈 15]は、同法で規定される電気工事士が行わなければならない[8]

電気工事業法は、電気工事士法に規定する電気工事を行なう事業に対して適用される法律である。同法が適用される電気工事業[注釈 16]を営もうとする場合、同法に基づく登録を行わなければならない[9]
電気通信事業における工事

電気通信事業者は、事業用電気通信設備の工事、維持及び運用にあたり、その保安を監督する者として、電気通信主任技術者[注釈 17]を配置しなければならない[10]旨が電気通信事業法で定められている。利用者が端末設備又は自営電気通信設備を接続する場合、同法で定める工事担任者に当該接続に係る工事を行わせ、又は監督させなければならない[11]
その他の用法

インターネットのウェブページなどにおいて、ページコンテンツを作る予定または作っている最中であることの表示に対し、「工事中」という表現を用いる場合がある。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 造船工事に付随する内装工事・電気工事・給排水設備工事・空調工事等は、実態としては建設工事とほぼ変わらない役務内容であるものの、工作物を対象とした役務提供でないため建設業法上の建設工事には含まれない。
^ 一般用電気工作物又は自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事を行うために必要な国家資格として電気工事士の資格がある。
^ 公衆回線CATVの通信回線に接続する端末設備の接続及び配線工事を行い、または監督するための国家資格として電気通信設備工事担任者資格がある。
^ 配線工事やLAN工事などは、内容によっては(建設業法の適用対象という意味での)建設工事に該当する場合がある。
^ b:建設業法別表第一に掲げる建設工事を指す。
^ 建設業法上の「建設工事の請負契約」を指す。前述「請負工事」の項における記述にもあるように、民法上の請負契約であるとは限らない。
^ ただし、IT書面一括法の規定により、相手方の承諾を得て建設工事の請負契約を電磁的措置によって行うことは可能である。
^ 濱口桂一郎は、いわゆる旧民法(明治23年法律第28号および法律第98号)では、請負の定義について「予定代価で労務を提供するものも請負に含まれていた」「仕事の完成を目的とするものに限られなかった」旨を指摘している。濱口桂一郎 (2015年12月). “日本の請負労働問題?経緯と実態”. 2023年1月26日閲覧。
^ 建設業法第19条は建設工事の請負契約の締結において一定の重要事項を記載した書面の交付を規定しているが、これは事後の紛争の防止を趣旨としており請負契約の有効要件ではない。
^ 建設工事の請負契約については、「一括下請負の禁止(建設業法第22条)」「主任技術者及び監理技術者の設置義務(建設業法第26条)」等、中間過程に関するルールが存在する。
^ 下請人の保護を図る必要から、建設業における下請負契約(下請契約)は建設業法において一定の制約を受ける(第16条・第22条・第23条)。
^ 建設工事の請負契約については、一括して他人に請け負わせること(一括下請負)は建設業法第22条により原則禁止されている。
^ 採算が合わない価格帯の入札・落札(低価格入札)は、「工事の質の低下を招くだけでなく、下請企業・労働者へのしわ寄せや安全管理の不徹底を招き、建設業の健全な発展を阻害するものである」とされるため。“低価格入札に対する対応について” (PDF). 国土交通省. 2020年7月28日閲覧。
^ 建設業法上の主任技術者とは異なる概念である。電気主任技術者を配置する義務があるのは「電気工作物を設置する者」であり、建設業法上の電気工事の主任技術者を配置する義務があるのは「建設工事の完成を約する契約を受注した者」である。
^ 建設業法上の建設工事に該当しない場合であっても、電気工事士法上の電気工事に該当するならば、電気工事士法が適用される。
^ 建設業法上の業種としての電気工事業とは異なる概念である。建設業法上の建設工事に該当しない場合であっても、電気工事業法上の電気工事に該当するならば、電気工事業法に基づく登録を行わなければならない。一方で、電気工事業法上の電気工事に該当する場合であっても、建設業法上の建設工事に該当しない工事を行なう場合については、建設業法上の業種としての電気工事業の許可は不要である。
^ 建設業法上の主任技術者とは異なる概念である。電気通信主任技術者を配置する義務があるのは「事業用電気通信設備を設置する者」であり、建設業法上の電気通信工事の主任技術者を配置する義務があるのは「建設工事の完成を約する契約を受注した者」である。

出典^ “土木請負工事工事費積算要領” (PDF). 国土交通省. 2020年7月28日閲覧。
^ “請負契約とその規律” (PDF). 国土交通省. 2020年7月28日閲覧。
^ 請負契約とその規律 国土交通省資料
^ a b c 小林潔司、大本俊彦、横松宗太、若公崇敏 (2001年10月). “建設請負契約の構造と社会的効率性”. 土木学会論文集 No.668. 土木学会. 2022年8月12日閲覧。
^ “予定価格の上限拘束性について” (PDF). 財務省主計局法規課 (2018年10月29日). 2022年8月13日閲覧。
^ 電気事業法第1条
^ 電気事業法第43条


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