嵐が丘
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5週間後のクリスマス前日、嵐が丘へと戻ったキャサリンは見違えるような淑女となっており、ヒースクリフは近寄りがたいものを感じてよそよそしい態度をとってしまう。キャサリンも、もはや元の粗野な振舞いに戻ることはできず、二人の間には距離が生まれていた。

その翌日、クリスマスパーティーに出席するため、リントン家の兄妹が嵐が丘を訪れる。屋敷は美しく飾り付けられ、食卓には御馳走が並ぶ。しかしリントン家からの申し入れでヒースクリフは同席を拒まれる。彼を可哀そうに思ったネリーは、場にふさわしいよう身なりを整えてやるが、ヒンドリーに悪態をつかれて追い出され、エドガーからは伸びっぱなしになっていた髪を「仔馬のたてがみ」と馬鹿にされる。怒りを爆発させたヒースクリフは熱いアップルソースをエドガーに浴びせ、エドガーは女の子のように泣きじゃくってキャサリンに呆れられる。ヒースクリフはヒンドリーに折檻されたうえ屋根裏部屋に閉じ込められるが、ネリーに助け出される。ヒースクリフはヒンドリーに対する恨みを募らせ、いつか復讐してやると悪態をつく。

フランセスはヒンドリーの息子ヘアトンを出産後、体力を回復できず亡くなり、悲しみから酒びたりとなったヒンドリーは、酔っては幼いヘアトンを殴るようになる。屋敷は荒れ果てて誰も寄り付かなくなったが、キャサリンに恋したエドガーだけは通い続けていた。

ある日、キャサリンに招待されたエドガーが屋敷を訪れると、キャサリンは掃除を続けて部屋を出て行かないネリーと激しく口論しているところだった。その様子に怯えたヘアトンが泣き出すと、キャサリンは肩を乱暴に揺さぶって泣き止ませようとする。驚いたエドガーが止めようとしたところ、はずみでキャサリンは彼を打ってしまう。腹を立てたエドガーは絶交を宣言し、キャサリンは泣き出す。結局はこの喧嘩が逆に作用して、二人の仲は急速に深まった。

その夜、キャサリンはエドガーに求婚され、承諾したことをネリーに打ち明ける。容姿も良く話し上手で、裕福なエドガーは理想の結婚相手であり、一方、身分違いのヒースクリフと結婚すれば、自分も下層階級に落ちてみじめな生活を送るしかなくなってしまうと悩むキャサリン。ネリーはその考えを批判し、ヒースクリフを捨てられるのか、ヒースクリフの気持ちを考えないのかと咎めるが、キャサリンは、自分が魂の片割れであるヒースクリフを捨てることなど絶対にないと断言し、エドガーと結婚すればその資産でヒースクリフを援助し、出世させてやれると語る。

たまたまこの会話を立ち聞きしたヒースクリフは、キャサリンが自分との結婚を否定したところで耐え切れなくなり、その後の彼女の本音を聞かないまま家を飛び出してしまう。ヒースクリフが行方不明になったことを知ったキャサリンは錯乱し、ショックから寝込んでしまうが、ネリーの看護とエドガーの励ましにより回復。エドガーと結婚し、ネリーを伴って鶫の辻へと移り住んだ。

3年後、ヒースクリフはどういう手を講じたものか、裕福な紳士となって荒野に舞い戻る。しかしそれは自分を虐待したヒンドリー、キャサリンを奪ったエドガー、そして自分を捨てたキャサリンへの復讐を果たすためであった。

彼の目的を知らないキャサリンは思いがけない再会に大喜びするが、エドガーはその様子を見て嫉妬と不安を抱き、さらに妹のイザベラがヒースクリフに惹かれ始めたことを知って困惑する。粗野な野生児である彼の本質をよく知るキャサリンも、イザベラにはふさわしくない相手だと忠告するが、恋に夢中になったイザベラは昔の関係を持ち出してキャサリンに反発する。

ヒースクリフは当初イザベラを冷たく扱っていたものの、むしろエドガーとキャサリンに対する復讐のチャンスだと考えなおし、積極的にイザベラを誘惑し始める。それを止めようとするキャサリンに、これは復讐だとヒースクリフは宣告し、二人は激しい口論となる。ネリーは二人を止めようとエドガーに告げ口するが、その行動が誤解を招き、今度はキャサリンとエドガーが口論となってしまう。エドガーはヒースクリフの出入りを禁止し、彼と別れるか自分と離婚するかとキャサリンに迫る。激高したキャサリンは食事もとらないまま3日間も閉じこもり、精神を病んで次第に衰弱していく。心配したネリーは医者を呼びに行くが、イザベラはその夜のうちにヒースクリフと駆け落ちしてしまう。

それから2か月後、エドガーの子供を身ごもっていたキャサリンは、精神錯乱と妊娠による消耗が重なり、明日をも知れない状態となっていた。そこへネリー宛に、嵐が丘のイザベラから手紙が届く。手紙には、今更ながらキャサリンの忠告が真実であり、ヒースクリフに騙されていたと気付いた。毎日つらい思いをさせられ、もはやヒースクリフに憎しみを抱いていると綴られ、このことを兄と義姉には知らせないでほしいが、ネリーが来てくれることを心待ちにしていると結ばれていた。イザベラの身を案じて嵐が丘に出向いたネリーは、そこでヒースクリフに捕まり、キャサリンとの密会を強要される。

ネリーの手引きにより、ヒースクリフはエドガーの留守を衝いて鶫の辻を訪問し、最後の逢瀬を交わす。幽鬼のような姿となり、死を待つばかりのキャサリンを見たヒースクリフは動揺し、思わず彼女への素直な愛情を口走る。キャサリンも最後には彼を受け入れ、二人はようやく寄り添うことができた。しかしそこへエドガーが帰宅し、気が気でないネリーは二人を引き離そうと騒ぎ立て、かえって事をエドガーに気付かせてしまう。ヒースクリフの腕の中で気を失っているキャサリンを見たエドガーは、怒りのあまりヒースクリフに掴み掛るが、ヒースクリフはそんなことよりまずキャサリンの手当てをしろ、と言い放ち屋敷を去る。キャサリンは何とか意識を回復するが、正常な精神状態に戻ることはなかった。

その夜、キャサリンは最後の力で出産を終えると亡くなり、エドガーは残された娘に母と同じキャサリン(キャサリン・リントン、以下キャシー)と名付け、亡き妻と区別するためにキャシーと呼ぶようになる。エドガーはキャサリンをリントン家の墓地ではなく、緑の丘に埋葬した。その翌日、悲しみの中にある鶫の辻に、怪我だらけのイザベラが駆け込んでくる。ヒースクリフの暴力から、命からがら脱出してきたのだ。その後イザベラはロンドンへと逃れ、そこでヒースクリフの息子リントン(リントン・アーンショウ、以下リントン)を出産する。

酒に溺れる日々を送っていたヒンドリーはヒースクリフに賭博を仕掛けられ、気付けば嵐が丘の屋敷と土地を抵当に彼から借金を重ねるようになっていた。そのヒンドリーが亡くなったことで、ヒースクリフが嵐が丘の新たな主人となる。嵐が丘の全権力を握ったヒースクリフはさっそく、本来なら嵐が丘の後継者であったヘアトンを、かつての自分同様の下働きに落とす。ヘアトンは利発で健康な子供で、その面差しは叔母に当たるキャサリンによく似ており、ヒースクリフも内心ヘアトンを気に入っていた。しかしヘアトンは憎きヒンドリーの息子であり、ヒースクリフは復讐のために自分の心を捻じ曲げ、愛情を捨て去ったのだ。こうしてヘアトンは教育を与えられずこき使われるうちに、品性を失い、汚い恰好をした教養も愛想もない人間へと変わってしまう。

キャシーは父エドガーの愛情を一身に受け、鶫の辻の箱入り娘として大切に育てられる。彼女が12歳になったころイザベラが亡くなり、遺言により一子リントンはエドガーに引き取られることになる。エドガーがロンドンに出掛けている間に、好奇心旺盛なキャシーは嵐が丘の敷地へ入り込み、そこで偶然ヘアトンと出会う。ヘアトンは18歳になっていたが、ヒースクリフから受けた仕打ちの結果、未だに読み書きもできず、まともな言葉遣いさえできないままであった。お嬢様育ちのキャシーはそんな人間が存在すること、しかもそれが自分のいとこであることを知って驚くが、それでも友達ができたと喜ぶ。

エドガーは鶫の辻にリントンを連れ帰る。リントンは病弱で気難しい少年だったが、キャシーは彼を歓迎する。しかしそこへ嵐が丘の下男、ジョウゼフが使いに現れ、ヒースクリフが息子リントンを寄越すように命じたと告げる。その翌日、エドガーは渋々、ネリーを付き添わせてリントンを送り出す。しかしリントンを見たヒースクリフは失望し、あっさりと彼を見限ってしまう。ヒースクリフの態度に怯えたリントンは泣きわめく。

キャシーが16歳になるころ、虚弱なリントンは20歳まで生きられまいと言われていた。また、エドガーも体が弱っており、どちらが先に亡くなるかという状態だった。ヒースクリフは、鶫の辻の先代であるエドガーの亡父の遺言がまだ有効であり、男性の血縁だけに相続権があることに目を付け、自分の息子でありエドガーの甥であるリントンと、エドガーの娘だが相続権のないキャシーを結婚させることで、鶫の辻を間接的に自分のものにしようと企む。

ヒースクリフは策を弄してリントンをけしかけ、キャシーはリントンに恋したと錯覚し、父エドガーに内緒で会いに行くようになる。事態を知ったエドガーはキャシーにヒースクリフの危険性を説いて聞かせる。キャシーは会いに行くことはやめたものの、秘かにリントンと文通を続けていたが、ネリーに手紙の束を発見され、焼き捨てられてしまう。

エドガーが病に倒れ、キャシーの気持ちが落ち込んだすきを突くように、ヒースクリフはリントンの状態が思わしくないので会いに来るよう誘う。ヒースクリフの巧みな言葉に騙されたキャシーは再びリントンに会いに行くようになり、折悪しく病気になったネリーは3週間も寝込んでしまったため、彼女を引き留めることができなかった。

しかしリントンは自分の体調が悪いことを訴え、ヒースクリフの機嫌を気にするばかりでキャシーを落胆させ、二人の仲はまるで進展しない。業を煮やしたヒースクリフは、キャシーが回復したネリーを伴って訪れた際、二人を引き離し、数日間にわたって監禁する。このままでは父エドガーの死に目に会えないと脅されたキャシーは結婚を了承してしまう。

なんとか嵐が丘から脱出したネリーは、手勢を集めてキャシーを奪還しようとしていた。エドガーは遺言状を書き換えようと弁護士を手配するが、ヒースクリフの買収工作で失敗に終わる。そこへリントンの手助けで屋敷を抜け出し、キャシーが戻ってくる。キャシーはかろうじて父を看取ることができたが、鶫の辻はすでにヒースクリフのものとなったも同然だった。

エドガーの葬儀後、キャシーを連れ戻すべく鶫の辻にやってきたヒースクリフは、ネリーにキャサリンの墓を暴いた、自分が死んだらキャサリンの隣に葬られ、土の下で一緒になりたいと思っていたと気味の悪い告白をする。彼女の死から18年、ヒースクリフは復讐にひた走る一方でキャサリンへの思いに苦しめ続けられていた。


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