島唄
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奄美大島を含む、徳之島以北は沖縄県先島諸島神謡を除いた節歌や、一部を除いた民謡と同様に本土と同じ五音音階の陽音階(律音階。ヨナ抜き音階参照)である場合が多く、日本民謡の南限という側面をも併せ持つ。一方で、沖永良部島以南(奄美群島では他に与論島)から沖縄本島地方では琉球音階が用いられることが多い。奄美群島は琉歌による歌謡の北限という側面も持っており、琉球歌謡の一翼を担う。琉歌は八音を中心に、五音・六音・七音を標準とする定型詩であり、基本的には「サンパチロク」といわれ、八・八・八・六を基本形とする。一方、口説きものも少なからず存在し奄美大島の一部や喜界島や特に盛んな徳之島及び沖永良部島などでは、七・五・七・五・七を基本とする「口説」も存在する。

演歌本土の民謡琉球民謡などでは逃げの声として避けられる裏声も、ヨーデルでのそれと同様に、頻繁に用いられるのが特徴的である。その理由に対し民謡研究家仲宗根幸市が以下の仮説を出している:

琉歌のルーツは神託に求められ、非日常的で神聖な行為と関連していたため。

おなり神(うない神)信仰による男性の女性の声に近づけて歌いたいという願望。

薩摩の支配下で大っぴらに苦しみを表現できなかったため。

山合の急峻な地形でのコミュニケーション手段。

音色変化と音域を補うという音楽的理由。

また、宇検村出身の唄者であった坪山豊はNHKのテレビやラジオの(鹿児島放送局による)取材やマスメディアの取材に対して坪山自身の出身地付近の入り組んだ半島状の地形ゆえに「裏声は対岸にいる人に届く声」や自身が製造していた船の「サバニ」や「アイノコ」などを使う「漁師同志が海上にて伝達に使う声だ」など実生活からの「裏声」の多用される理由を述べていた。
楽器
サンシン

主に用いる楽器の奄美のサンシンは見た目には沖縄の三線と似ているが、造りが沖縄の三線より全体的にやや大きく、根本的に完成されたものの仕向けそのものが沖縄の三線とは違った仕上げがなされるため、奄美のサンシンとして発注されたものは完成の段階で沖縄で製作されても沖縄の三線とは違ったものとなる。

の仕上げも上質なコクタンイスノキの芯材が使われている場合、棹になどの塗りで仕上げず木地そのものを磨き上げた塗りのない磨きの棹も好まれている。胴の構造も沖縄の三線と比較して大きめで高めの音を出しやすい作りのものが使われ、重量も重いものが廉価品を除いて使われていることが多い。

四枚の板での組み合わせやくり抜きなどでの製造の点では同じであるものの古い奄美製の胴では本土の三味線で言う丸打ち胴の様な内径側のくり抜き加工がなされた胴を見掛けることが多い、特に1945年(昭和20年)より三味線・三線製造を開始していた沖永良部島知名町にあった有限会社吉田蛇皮線製作所の製造した普通寸の三味線の胴にはそういう加工がなされていたことからも多い原因のひとつになっている可能性も考えられる。

棹などの製作方法の沖縄式の延べ棹と呼ばれる「棹そのものを1本の角材から切り出して製作」するやり方と日本三味線式を応用した「天は別づくりで棹を延べ棹で作り、組んで貼り合わせて仕上げる」という製作方法を用いる作者も前述の沖永良部島の吉田蛇皮線製造所系統の造り手の方に見受けられ、かなり沖縄式とは違う特徴を持っているものも見受けられる。

奄美群島全域的に三味線の胴に向く材はリュウキュウイヌマキなど豊富にあったが、棹材は沖縄県各地のように在来種の樹木にリュウキュウコクタンのような高級硬質木材が生えていた訳ではないので、基本的にはユス(イスノキ)、ハーユス(ヒトツバモッコク)、クワ(シマグワ)の芯材などを用いていたこともあり、黒檀類の棹材を多用していた沖縄の三線に比較して強度や材質の特性から自然と奄美では沖縄より大きく棹を作るようになったのではないかと考えられる。これはより硬く強い上質材でなければ細い棹は打てないとする沖縄の三線作りの常識とも一致する。

沖縄では太い弦を爪(水牛の角)や、最近では安値で管理しやすいギター用ピックなどでダウンストロークに弾くのに対し、奄美の島唄では細い弦を薄くて細長い竹べらやプラスチックのへらや好みにより鼈甲のへらを用いてアップストロークの返しバチを多用する。また、棹を押さえる左手の指で弦を弾く「はじき」や、ハンマリングの「うちゆび」、これらを組み合わせた3連音も多用される。このように奏法・調弦に大きな差があり、上記のような演奏技法を示す用語やその演奏技巧そのものも同じ奄美群島内でも地域や師匠となる唄者により呼び方も大きく異なるのも特徴である。

根本的な問題としても棹に張る弦の太さの違いや、それにともなう歌口や胴の作り方や組み付けなどの調整など差異や、弦や皮の根本的な張りの強さによる棹や胴などに対する負担も沖縄の三線とは段々と異なって来るようになり、その差が大きくなる部分が出てきたことから楽器本体の構造にも求められる強度や耐久性などの必要性に違いがもとめられ、基本的な仕向けの違いに起因する仕上げの違いが前述の通り存在するため、そのままでの沖縄の三線と奄美の三線との使い回しは通常では困難である場合が多い。

鎖国期から戦後にかけての物不足の時代にはニシキヘビの皮のかわりに、和紙を10枚重ねたものやセルロイドを和紙同様に重ね合わせたイチニチガッパ、セメント袋、パラシュート地の生地、ウシウマヤギウサギのようなニシキヘビ以外の動物の皮革などの代替品が庶民のあいだで愛用されたこともあった。

呼称は地域や年代によって様々だが、シャミセン(三味線)、ジャミセン(蛇味線)、ジャビセン・ジャヒセン(蛇皮線)、サンシン(鹿児島県指定伝統工芸品としての名称)[2]、サンシル(沖永良部島、徳之島など)、サンシヌ(与論島)、サンシン(三線)などと呼ばれるなど名称が必ずしも統一されている訳ではない。

沖永良部島以南には沖縄のものや類似する三弦や四弦の胡弓・皷弓(クーチョー・コーチョー)も存在し、かつては歌に歌われているように奄美大島にも胡弓くゎ(きゅきゅっくゎ)があったとされるが、琉球のものなのか、本土のものなのか、大陸系のものなのかは定かではない。
打楽器

リズムを取るための打楽器としては独特の太鼓のちぢん(の転化音)が普及している。
代表的な島唄
奄美大島

朝花節(流行り朝花)


長朝花節

おこれ節

おころ節

うけれ節

誇らしゃ節

ハイスリ節

そがる玉貞節

朝顔節

本朝花節

一切朝花節

別れ朝花節

行きゅんにゃ加那

ゆんみやんみ

取ったん金くゎ

俊良主節

らんかん橋節

黒だんど節

長くるだんど節

野茶坊節

長雲節

上れ日ぬはる加那

今の風雲節

午ぬ風雲節


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