岩波文庫
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1989年(平成元年)2月に出版された岩波文庫版(入江曜子春名徹訳)は、原書の全26章中、第1章から第10章・第16章と序章の一部が省かれている[注 13]。訳者あとがきでは、「原著は本文二十五章のほか、序章、終章、注を含む大冊であるが、本訳書では主観的な色彩の強い前史的部分である第一?十章と第十六章『王政復古派の希望と夢』を省き、また序章の一部を省略した」と述べている。

岩波文庫版で省略された章には、当時の中国人が共和制を望んでおらず清朝を認めていたこと、満洲が清朝の故郷であること、帝位を追われた皇帝(溥儀)が日本を頼り日本が助けたこと、皇帝が満洲国皇帝になるのは自然なこと、などの内容が書かれている[7]
旧版『危機の二十年』誤訳問題詳細は「危機の二十年」を参照

岩波文庫の旧訳版は、多数の誤訳や不適切な訳文が指摘された[8]。以後は「在庫なし」の状況となり、入手困難だったが、2011年(平成23年)11月に新訳版が出版された。
『きけ わだつみのこえ』改変問題詳細は「きけ わだつみのこえ#岩波書店『きけわだつみのこえ』改変事件裁判」を参照

1994年(平成6年)4月23日のわだつみ会総会で、副理事長の高橋武智が理事長に就任し、第4次わだつみ会が発足する。第4次わだつみ会は1995年(平成7年)に岩波文庫から『新版「きけ わだつみのこえ」』を出版したが、遺族や関係者から「誤りが多い」「遺族所有の原本を確認していない」「遺稿が歪められている」「遺稿に無い文が付け加えられている」「訂正を申し入れたのに増刷でも反映されなかった」といった批判を浴びる。1998年(平成10年)、遺族は中村克郎・中村猛夫・西原若菜が発起人となって、第4次わだつみ会とは全く別に「わだつみ遺族の会」を結成。うち中村克郎と西原若菜が遺族代表として、わだつみ会と岩波書店に対して「勝手に原文を改変し、著作権を侵害した[9]」として「新版の出版差し止め」と「精神的苦痛に対する慰謝料」を求める訴訟を起こす[10]。原告が提出した原本と新版第一刷の対照データをもとに岩波書店が修正した第8刷を1999年(平成11年)11月に出版し提出した結果、翌12月、原告は「要求のほとんどが認められた」として訴えを取り下げた[9]
『さまよえる湖』誤解説問題詳細は「ロプノール#「1600年周期」という誤解」を参照

科学者でもない翻訳者福田宏年の誤った解説を、何ら検証することなく掲載し、読者に重大な誤解を与えた。
収録された事のない古典

岩波文庫は世界の古典をかなり網羅しているが、収録された事がない古典もある。2021年時点での例をあげる。

ギルガメシュ叙事詩』他、古代オリエントの作品

書経』『礼記

墨子

戦国策

司馬遷史記』のうち「本紀」「表」

ウパニシャッド』『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ

玄奘大唐西域記

貞観政要

エッダ

マルコ・ポーロ東方見聞録

イブン・バットゥータ三大陸周遊記』あるいは『大旅行記

ペトラルカ『叙情詩集』

アリオスト狂えるオルランド

十八史略

封神演義

太田牛一信長公記

リヒャルト・ワーグナーニーベルングの指輪

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 文庫巻末に掲載されている発刊の辞「読書子に寄す―岩波文庫発刊に際して」に、「かつては民を愚昧ならしめるために学芸が最も狭き堂宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことは常に進取的なる民衆の切なる要求である。岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。」とある。なお、起草者は三木清で、当時の社長であった岩波茂雄の名で発表された。
^ その他の刊行書目として、『おらが春・我春集』、『病牀六尺』、『仰臥漫録』、『北村透谷集』(島崎藤村編)、『號外 他六篇』(國木田獨歩著)、『藤村詩抄』(自選)、『幸福者』、『出家とその弟子』、『賢者ナータン』(大庭米治郎訳)、『闇の力』(トルストイ著,米川正夫訳)、『生ける屍』(同著,同訳)、『叔父ワーニャ』(同訳)、『父』(小宮豊隆訳)、『令嬢ユリェ』(茅野蕭々訳)、『プラトン ソクラテスの弁明・クリトン』(久保勉・阿部次郎訳)、『認識の対象』(リッケルト著,山内得立訳)、『科学の価値』(ポアンカレ著,田邊元訳)。7月15日には『實践理性批判』(波多野精一・宮本和吉訳)が刊行された。
^ 2015年3月刊で休止
^ 1927年(昭和2年)の創刊当初は★1つで20銭であった。
^ 例外として「翻訳が新しくなったとき」などには、旧約のものを絶版にすることがある。


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