尽数関係
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1:2:4 イオ-エウロパ-ガニメデ(木星の衛星) - 太陽系内で唯一のラプラス共鳴(後述)

公転周期の整数比は共鳴の性質を簡潔に表す便利なものだが、実際には以下のようなより複雑な関係が存在している。

会合点が共鳴によって定義される平衡点の周りを振動する。

軌道の離心率が 0 でない場合、軌道の昇交点降交点近点が移動する。(共鳴に関係したこの種の移動は短周期のもので、永年的な歳差とは異なる。)

後者の例としてよく知られたイオとエウロパの 1:2 共鳴を考える。公転周期がこのような整数比になっていると、平均運動 n {\displaystyle n\,\!} (公転周期の逆数の次元を持ち、度/日の単位で表されることが多い)は次の関係を満たす。

n I o − 2 n E u = 0 {\displaystyle n_{\rm {Io}}-2n_{\rm {Eu}}=0\,}

しかし実際にイオとエウロパの平均運動の値を上式の左辺に代入してみると、結果は -0.7395 °/日となって 0 にならない。

実際には共鳴自体は完全だが、ここに近木点(木星に最も近い点)の歳差が加わる。よって正しい式は以下のようになる(これはラプラス方程式の一部となっている)。

n I o − 2 n E u + ω ˙ I o = 0 {\displaystyle n_{\rm {Io}}-2n_{\rm {Eu}}+{\dot {\omega }}_{\rm {Io}}=0\,}

すなわち、イオの平均運動は近木点の歳差を考慮に入れればエウロパの平均運動のちょうど2倍になる。もし移動する近木点からこれらの天体を観測すると、この二つの衛星は(近木点からの離角が)常に同じ位置で会合を迎えるのを見ることになる。上に挙げた他の平均運動共鳴の例でも同様の関係を満たしている。ただしミマスとテティスの場合は例外で、下記の式を満たす。

4 n T h − 2 n M i − Ω T h − Ω M i = 0 {\displaystyle 4n_{\rm {Th}}-2n_{\rm {Mi}}-\Omega _{\rm {Th}}-\Omega _{\rm {Mi}}=0\,}

この場合、会合点は両衛星の交点の中点を中心として振動する。
ラプラス共鳴

イオ-エウロパ-ガニメデの間に見られる最も注目すべき軌道共鳴では、以下の関係によって衛星同士の軌道上の位相が同期している。

Φ L = λ I o − 3 λ E u + 2 λ G a = 180 ∘ {\displaystyle \Phi _{L}=\lambda _{\rm {Io}}-3\lambda _{\rm {Eu}}+2\lambda _{\rm {Ga}}=180^{\circ }\,}

ここで λ {\displaystyle \lambda } は衛星の平均黄経である。この関係があるため、この系では3個の衛星の三重会合は決して起こらない。
「準」平均運動共鳴

太陽系の衛星の中には以下のような共鳴に近い関係のものも存在する。

土星系:

(5:3)
レアディオネ

天王星系:

(3:1) ウンブリエルミランダ

(5:3) ウンブリエルアリエル

(2:1) チタニアウンブリエル

(3:2) オベロンチタニア

土星系や木星系に共鳴が存在するにもかかわらず天王星系に(完全な)共鳴が見られない理由は分かっていない。

また、海王星‐冥王星以外の惑星の公転周期についても以下のような準共鳴状態が存在していると主張する者もいる。

(2:1) 海王星‐天王星

(3:1) 天王星‐土星

(5:2) 木星‐土星

ティティウス・ボーデの法則を参照のこと)しかし、様々な研究が行なわれているにもかかわらず、これらの準尽数関係については有力な証拠は得られていない。
太陽系外惑星の軌道共鳴

惑星同士の軌道共鳴関係は、太陽系外の惑星系で多数発見されている。3個以上の惑星が共鳴関係を成している例も発見されており、例えばグリーゼ876では、3つの惑星が、木星のガリレオ衛星と同様に1:2:4の公転周期で公転している。

大質量(木星質量以上)の惑星では、2:1の平均運動共鳴にあるペアが多く見出されている。このような共鳴関係は、惑星形成の過程で、隣接する惑星が惑星移動(軌道半径の変化)を起こした場合に生じるとされる[7]。一方、低質量の系外惑星でも共鳴は発見されているが、大質量惑星と比べてその頻度が低いことがケプラー宇宙望遠鏡の観測により判明している[7]
注釈[脚注の使い方]^ 太陽系形成論においては、ニースモデルグランド・タック・モデルなど、太陽系が形成されてから数億年の間は、惑星がダイナミックに軌道を変化させていたとする説が有力である。

出典^ a b c “ ⇒軌道共鳴”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年8月6日). 2019年10月22日閲覧。
^ a b c d e “ ⇒平均運動共鳴”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年8月6日). 2019年10月22日閲覧。
^ a b c “ ⇒永年共鳴”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2018年3月6日). 2019年10月22日閲覧。
^ Roy & Ovenden (1954). MNRAS 114: 232. Bibcode: 1954MNRAS.114..232R. 
^ a b c d e 長沢真樹子「永年共鳴と惑星系の進化」『日本惑星科学会誌』第17巻第4号、日本惑星科学会、2008年10月8日、2015年7月31日閲覧。 
^ a b c 吉川真「小惑星の分布とダイナミックス」『ISASニュース』第207巻、宇宙科学研究所、1998年6月、2015年7月31日閲覧。 
^ a b Winn, Joshua N.; Fabrycky, Daniel C. (2015). “The Occurrence and Architecture of Exoplanetary Systems”. Annual Review of Astronomy and Astrophysics 53 (1): 409-447. arXiv:1410.4199. Bibcode: 2015ARA&A..53..409W. doi:10.1146/annurev-astro-082214-122246. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISSN 0066-4146. 


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