少女小説
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『小説ジュニア』は戦前の少女小説とは一線を画す10代の性や愛をテーマのひとつとした「ジュニア小説」[25][28]をあつかい、このジャンルの小説誌の中心的存在となった[29]。その文庫として1976年(昭和51年)集英社文庫コバルトシリーズを発刊する[30]。少女向け小説誌『Cobalt』、少女向け文庫コバルト文庫の前身である。コバルト文庫の誕生には氷室冴子新井素子の存在を欠くことはできない[31][32]

氷室と新井は1977年(昭和52年)にデビューすると[33]1980年(昭和55年)に氷室は学園もの「クララ白書[34]、新井はSF星へ行く船[35]でそれぞれ人気を獲得している。2人の特徴は自身が若い女性であり、読者の同年代の少女たちを等身大の文体で活写し[36][35]、それでいて物語はしっかりしていたことにある[37]。女の子の一人称「あたし」で書き進められる新井の文体は一世を風靡し[38][39]、現在の少女小説にも受け継がれている[40][33]。その後もコバルト文庫は、久美沙織丘の家のミッキー」、藤本ひとみまんが家マリナシリーズ」とヒット作を生み出し[41]、少女小説の文庫として確固たる地位を築いた。

1987年(昭和62年)、講談社が少女小説の文庫X文庫ティーンズハートを発刊すると、少女小説ブームが訪れる[42][43]。X文庫ティーンズハートの画期的な点は団塊ジュニアであるイチゴ世代に対する徹底的なマーケティングで[44]、象徴的存在が花井愛子である[42]コピーライターとしてX文庫ティーンズハートの立ち上げから企画に関与していた花井は、独自の文体・物語・装幀を考案して少女の心をつかみ、総計200冊、2000万部を売り上げたと言われている[45][46]

ブームが嵩じるまで、コバルト文庫は「少女小説」として広報していたものの、一般には「ジュニア小説」とされることが多かった。花井愛子が積極的に取材に応じ、「少女小説」との発言を重ねたことにより、コバルト文庫を含めた「少女小説」の認知が広まった[47]
平成

少女小説ブームを担ったイチゴ世代が少女小説を卒業すると、少女小説ブームは終焉を迎えた[48]。そんななかで目立ち始めたのがファンタジー作品である[49][50]。少女小説ブームと入れ替わるように、1989年平成元年)より若木未生ハイスクール・オーラバスター」、1990年(平成2年)より桑原水菜炎の蜃気楼」、1992年(平成4年)より小野不由美十二国記」と、後の大人気シリーズが始まっている[51]。少女小説におけるファンタジー作品は、舞台が異世界でも現代の少女が主人公であったり[52]、超能力を持った人物が主人公でも舞台は現代の日本であるなど、読者である少女が共感しやすいように描かれている点では、それまでの等身大の少女を描いた少女小説と異ならない。これらのファンタジー作品の台頭は、後にライトノベルとしても評価されるようになる。

また1994年(平成6年)ごろ、男性同士の恋愛を描いた作品を掲載する漫画雑誌・小説誌が多数発行されるようになり、それまでJUNE耽美と呼ばれていた作品が、ボーイズラブとして広く一般的に読まれるようになった[53][54]


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