小説
[Wikipedia|▼Menu]
中国の小説「小説家 (諸子百家)」、「六朝から清末の文言小説 」、および「白話小説」も参照

前近代中国において「小説」という用語が使われ始めたのは、図書目録上でのことだった(『漢書』「芸文志[1])。しかもそれは、文学芸術的な用語として生まれたのではなかった。「芸文志」には「街談・巷語、道聴・塗説する者が造る所なり[2]」「諸子十家、その観るべきもの、ただ九家のみ[3]」という記述がある。街巷で語られた話や道端で聞いたり言ったりしている者が作り上げたのが小説であるとされ、九流の諸子とは異なり、一ランク下のものと考えられていたことが分かる。

遡って、『荘子』「外物篇[4]」には「小説を飾り以て縣令を干むるは、其の大達に於いて亦た遠し[5]」とある。直訳すれば、取るに足りない言説で県令になることを求めるのは、その目標から遠い、となる。ここで言わんとすることは、手段と方法を合わせることで目的に到達することが出来るということである。

後漢になると、桓譚は、その著の『新論』中において、小説に対する議論を展開しているが、ここには大きな変化が見られる。つまり「かの小説家は残叢の小語を合し、近く譬喩を取り、以て短書を作り、治身理家に、観るべきの辞あり」と述べられているのである。ここで用いられている小説は、後代の小説と、似通った意味合いで用いられる。但し桓譚が用いている「短書」とは、なお軽慢の意があることは免れない。

中国で唯一の小説家皇帝曹丕のような例外はあるものの、古代中国での小説は以上のように上流階級から蔑まれる物であった。しかし、これ以降の時代には主に民衆から支持を得る形で小説が人気を得ていく。

六朝時代の小説は、内容的に神異的になり、志怪小説と呼ばれた。代の伝奇小説に至ると「奇」が勝ちをおさめた。魯迅が『中国小説史略』[6][7]の中で指摘しているように、と同様に唐代で一変し、なお怪異を求める風は存したが、その文学性は格段に洗練された。つまり、唐代の「伝奇」は、従来のように怪異を叙述しながら、人事の機微までをも描き得ており、それは、前代の「志怪」の描ききれていないところであったのである。代表的なのは、『枕中記』や『霍小玉伝』[8]である。また唐代には、通俗小説が出現し、後世の文学に多大な影響を与えた。

代には、庶民の社会生活を描写した「話本」が出現し、『碾玉観音』[9]や『錯斬崔寧』[10]などの代表作[11]が作られた。宋代話本の特色は白話小説と呼ばれ、白話(口語)を用いて描写される点にある。よって、唐代の伝奇に比べて更に通俗的となった。

元曲が著しく発展した代は、伊藤漱平によれば小説史に於いては不作の時代だったが、唐・宋伝奇の末流として、元初という小説不作の時代に開いた浪花(あだばな)ともいえる『嬌紅記(中国語版)[12]』があるが、字数が唐・宋代のものより多いため小説長編化の途上の作品とされる[13]

代以後、小説の発展は成熟期を迎えた。唐代の伝奇、宋代の話本の伝統を継承し、創作の題材上においては、歴史、怪異、英雄、世情を論ずることなく、すべてを網羅するようになった。明代の通俗小説は、長編と短編の二大潮流に分かれることとなる。長編小説は「四大奇書」を代表とする。短編小説は、馮夢龍凌濛初編纂の「三言二拍」を代表とする。

代の小説では、「紅楼夢」という中国長編小説の一大傑作が生まれた。
日本の小説

日本では、江戸時代仮名草子読本などはあったが、近代小説が誕生したのは明治時代以降である。Novelの訳語に「小説」という、江戸時代に曲亭馬琴たちを中心にして自作を表現するために使われていた中国由来の言葉をあて、従来の勧善懲悪を斥け、人情を映す文学作品として定義したのは坪内逍遙の『小説神髄』(1885年 - 1886年)である。その文学理論を実践したのが坪内逍遥の『当世書生気質』である。

もともと中国で国史・正史に対して、民間の俗話のことを「稗史小説」と呼んでいた。「日本の近現代文学史」も参照
媒体の拡がり
小説

1990年代末よりネット小説の試みが行われた。岩井俊二による映画「リリイ・シュシュのすべて」は岩井自身によるネット小説がもとになっている。村上龍の小説『共生虫』はインターネット上から注文すると紙の本に印刷して配達されるというオンデマンド出版の形態をとっていた。2003年には、携帯サイトに連載されていたYoshi著「Deep Love」シリーズが大ヒットした。2004年、匿名掲示板2ちゃんねる上で、投稿の形を取って発表された「電車男」が新潮社から書籍化された。現在、日本ではオンライン小説(web小説)と呼ばれている。
デジタルノベル

「インターネットの小説」はサイト上で読む小説であるが、この数年「デジタルノベル」と呼ばれるものも一般的である。デジタルノベルは、「サウンドノベル」「ビジュアルノベル」とも呼ばれ、インターネットの広がりで主にソフトウェアをダウンロードさせる形で提供される。本文と共に背景画、主要人物のキャラクター画が表示され、マウスクリックや実行キーを押すことで読み進めることが出来る。フリーウェアシェアウェアそれぞれあるが、吉里吉里LiveMakerNScripterなどのデジタルノベル製作ソフトなどの登場で手軽に公開できるようになったことから、個人製作のフリーウェアが圧倒的に多い。ソフトウェア配布サイトのVectorなどでは、多数のデジタルノベルが公開されている。個人製作といっても、本媒体のものと比べて必ずしも質が劣るわけではなく、出版するに充分値するようなものも多い。デジタルノベル製作ソフトには動画やBGM、画面効果を挿入できるものも多いため、それらを組み合わせて、優れた演出効果を出すこともある(オープニングやエンディングの映像など)。

近年は小説家になろうなどのインターネット上の発表を前提とする公開も目立っている。これは紙文化の時代のゲラ刷りや入稿や推敲といった旧来の小説成立プロセスを、大きく揺るがすものである。
分類
長さ・発表形式による分類

短編小説

掌編小説

ショートショート


中編小説

長編小説

連載小説

内容による分類

私小説

恋愛小説

青春小説

冒険小説

歴史冒険小説

秘境探検小説

海洋冒険小説


推理小説(ミステリー、ミステリとも)

サイエンス・フィクション小説(SF小説)

ハードSF小説

スペースオペラ小説

サイバーパンク小説

スチームパンク小説


ファンタジー(幻想小説)

ホラー小説(怪奇小説)

怪談


歴史小説時代小説伝奇小説

武侠小説

児童文学

童話

絵本


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:44 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef