小笠原諸島
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スクランブル化とデジタル圧縮を施していた理由は、小笠原地域以外(本土や近隣諸国など)で衛星回線の電波を傍受され、放送を視聴されるのを防ぐためであった[注釈 5]。スクランブル方式は「小笠原向け方式」と云われる独自の方式で、解読するデコーダーは一般では入手出来なかった。また衛星回線の使用には年額4億円もの莫大な費用がかかり、この放送の視聴のために島民から毎月3,000円を「テレビ放送受信費」として徴収し、NHKや在京民放各社も費用を出していた。にもかかわらず、マイクロ波を使用した衛星回線は天候変化に弱く、大雨などの際には受信障害が発生していた。なお、沖縄県大東諸島でも小笠原向けの衛星中継回線が活用されテレビの視聴が可能となったが、天気予報等は全て東京向けのものがそのまま流され、沖縄県には系列局の存在しない日本テレビテレビ東京は視聴できないようになっていた。
地上デジタルテレビ放送への移行

従来の地上テレビ放送(アナログテレビ放送)は2011年7月に終了することが決定していたが、その後の小笠原諸島における地上デジタルテレビ放送の受信については、衛星回線経由と海底光ファイバーケーブル経由の両案が検討されていた。最終的にはインターネットなどの通信事業と併せて、都が主体となって情報基盤整備を行うこととなり、小笠原向けの地上デジタル放送の伝送は「統合情報基盤光ケーブル」と称される海底ケーブル経由で行われることとなった[70]。当時の報道によると、2009年内に業者選定および工事発注を行い、2011年7月の地上アナログ放送終了までには整備を終わらせる予定と報じられた[71]

統合情報基盤光ケーブルでの放送送信は、まず八丈島にある八丈中継局を同島内で受信し、そこから父島・母島に向けて海底ケーブルで伝送する[注釈 6]方式で、父島・母島内での伝送には、莫大な予算費用と工事期間を要するデジタル中継局の新設ではなく、既設の小笠原村営光ファイバーケーブルが利用された[72]

なおその整備に先駆け、2010年3月からは地デジ難視対策衛星放送(BSセーフティーネット/標準画質放送)が本放送を開始し、小笠原村はその対象地域に含まれることとなった。それに伴って同年6月30日、旧来の衛星回線によるアナログテレビ放送の送信が終了した。ただし父島・母島の両テレビ中継局は、NHK-BSの2波、およびBSセーフティーネット放送の対象外であったTOKYO MXの計3波を送出する地上アナログテレビ中継局として存続した。

2011年5月18日、小笠原村ケーブルテレビによる在京各局の地上デジタル放送(ハイビジョン画質)の試験放送が開始され、村はBSセーフティーネット放送の対象地域から外れた。同年7月24日には地上アナログテレビ放送終了日をもって父島・母島両中継局も廃局となり、後述の通りラジオ中継局として転用された。

以上の経緯により、現在小笠原諸島内では地上デジタルテレビ放送の電波を送信する中継局はない。
ラジオ

局名父島母島
NHK東京
FM79.6MHz79.6MHz
NHK東京
第182.6MHz82.6MHz
NHK東京
第284.6MHz84.6MHz

2013年3月31日、父島・母島それぞれにNHKラジオ第1・第2・FM放送の3波すべての中継局が設置された。これは2011年までアナログテレビ放送を送信していた中継局を転用したものである。外国波による混信対策のため、中波のNHKラジオ第1・第2も含めFM波での送信である。他のラジオ局の中継局は設置されていない。

なおインターネット環境があれば、インターネットラジオradiko」および「NHKネットラジオ らじる★らじる」は23区・多摩地域と同様のサービスが利用できる。

小笠原諸島には長らくラジオ中継局が存在しなかったため、超短波(FM)放送は異常伝播時以外は全く聴くことができず、中波放送(AM)も一部地域を除き電離層に反射して届く夜間に限り聴くことが出来る程度であった。日中に直接受信で聴取可能だった放送は短波放送(ラジオたんぱ=現・ラジオNIKKEIや、NHKワールド・ラジオ日本の国外向け日本語放送[注釈 7]など)に限られ、1990年代以降は放送衛星によるCSラジオBSデジタルラジオ[注釈 8]が加わったものの、在京ラジオ各局の安定的な聴取は2010年のradiko試験運用開始(ただし村内の高速インターネット回線整備は2011年)、および2013年のNHKラジオ中継局設置まで待たなければならなかった。
医療

父島と母島にそれぞれ村営診療所があり医師歯科医師がそれぞれ常駐している。問診のみならず、一般的な血液検査機器(自動血球計算器、自動生化学測定器など)および、超音波画像診断装置上部消化管内視鏡単純X線撮影装置、X線透視装置、ヘリカルスキャンCT装置が両島に配備されている。これは特に母島診療所においてこの規模の離島としては国内に類を見ない設備[73]である。これを補完するために専門医による診療は定期的巡回診療の際に行われる。

診療所で対応困難な急病人が発生した場合は村役場からの連絡を受け、東京都知事が海上自衛隊に出動要請を行って海上自衛隊機で搬送することになる(後述)。
急患搬送

本土から小笠原諸島へは非常にアクセスしにくいため、島内で急を要する重病が発生した場合は自衛隊や海上保安庁による搬送が行われる。海上自衛隊硫黄島航空基地所在の救難ヘリコプターにより一旦硫黄島へ向かい、硫黄島から自衛隊や海上保安庁の航空機によって本土に搬送される方法、または海上自衛隊岩国基地所在の第31航空群第71航空隊が海上自衛隊厚木基地に常時1機待機させている救難飛行艇で本土へ搬送する方法があったが、現在は厚木への前進待機が中止されている為、全て硫黄島経由で搬送されている。以前は小笠原のヘリポートに夜間照明が設置されていなかったため「夜間に発病すると手遅れ」とも言われていた[52]が、現在は夜間でも搬送ができる。


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