小畑達夫
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宮本や袴田はこれにより、治安維持法違反のほか、不法監禁致死罪および銃刀法違反の罪に問われた[1][注釈 1]
経歴

1907年(明治40年)、秋田県北秋田郡二井田村(現大館市)に教員の長男として生まれた。母を幼少時に亡くし、父は小学校5年生のときに死亡、実母の妹イクに育てられた[2]秋田県立大館中学校に進学。伯父に大杉栄の弟子がいて、影響を受け在学中から公然と天皇制を批判していた。同級の種市健らと社会主義研究会を組織し、地域の文化人や学生を集めて映画研究会を開催した。1925年大正14年)3月、「野犬を食った」ことを理由として[3]」、中学4年で退学処分を受けた。

1929年(昭和4年)、上京し逓信省に就職し、郵便局職員として中央、本所、浅草の各局に勤務[注釈 2]。大館中学の1年上級の黒沢敏雄のすすめで、日本労働組合全国協議会(全協)傘下の日本通信労働組合に加盟、組織部員となった。1931年同労組の常任委員に就任[注釈 3]。同年6月末に、万世橋警察署に検挙された。取り調べを通じて「郷里にいる母に孝養を尽くしたいから」と悔悟の色を示したこともあり、起訴保留となり釈放。一時郷里へと戻ったが、まもなく潜伏生活へと戻った[4]。このころ平野謙の恋人だった根本松枝ハウスキーパー (日本共産党)にした。

1932年(昭和7年)、日本共産党に入党[注釈 4]。このころ、帰郷して種市ら大館中学時代の社会主義研究会のメンバーを手掛かりに全協秋田地区協議会を組織した。1933年5月同党中央委員。同年9月、財政担当になり、10月に財政部長。

同年12月23日、自身が所属する共産党から、警察に内通したスパイであると疑惑を持たれて、大泉兼蔵とともに東京府東京市渋谷区幡ヶ谷の同党アジトで「査問」という名称の取り調べ中に、同24日午後1時過ぎ急死した。遺体はアジトの床下に埋められたが、1934年1月16日、警察の捜査により発見された(詳しくは日本共産党スパイ査問事件を参照)。袴田里見の暴露したところでは、小畑を死亡させたのは宮本顕治であるという[5]。実弟の大川俊男[注釈 5]が遺体を引き取り、故郷の友人に当てた手紙に「兄は裏切り者ではなかった」と記した[6]。また、のちに日本共産党を除名された兵本達吉が小畑の出身地である秋田県で現地取材したところによれば、誰もが小畑に限ってスパイなどやる男ではないと語ったという[6]。兵本は「宮本は小畑について「激論しただけでも、また一寸指なんか触っただけでも」ポロッと死ぬような「特異体質、梅毒性体質、心臓の弱い体質」であったと供述しているが、そうした事実はまったくなかった」[6]と書いている。

小畑が死亡した直後の同党中央委員会で、スパイであることの基本的事実は明白として大泉兼蔵とともに除名処分にされ、翌12月24日付同党機関紙「赤旗」号外で発表された。戦後の研究では、スパイであったかどうかわからないという説[7]や、スパイでなかったという説[3]も出ているが、直接会ったことのある平野謙は最晩年の著述でスパイ説を述べ、日本共産党は一貫してスパイであったと主張している。[8][注釈 6]
歌手 小畑実との関係

継母のイクが後に東京に住み、大家として面倒を見た下宿人が歌手の小畑実である。彼は1953年秋田県大館市に、かつて世話になったイクとその子である小畑達夫の墓を建てた[9]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 戦後、日本共産党所属の国会議員となった弁護士青柳盛雄によれば、治安維持法だけで投獄された者は転向を誓うと半年ほどの観察期間を経て仮出獄が認められていたが、宮本顕治や袴田里見らは同志を査問にかけリンチで殺してしまったために、転向を表明しても仮出獄はできなかった[1]。したがって、宮本らの場合は、「転向しなかった」のではなく「転向できなかった」というのが真相に近いという[1]
^ 袴田里見は、1939年7月25日の公判調書によると、小畑は「三等郵便局(戦後の特定郵便局に相当する)の事務員」だったと述べたとされる。
^ 『日本共産党の七十年』上巻p.108によると、全協日本通信労働組合中央委員を務めていた。
^ 入党時期を、倉田1994は「1932年秋」、栗木1997は「1932年4月」としている。
^ 大川は後に人民戦線事件に連座し逮捕された。
^ 戦後入党した兵本は暴露本の中で古参党員には「小畑なんてスパイだ。あんな奴は殺ってもかまわない」と語る党員も多かった[8]。と書いている

出典^ a b c d 兵本(2008)pp.46-51
^ 『新・日本文壇史 5巻』川西政明、岩波書店、2011、p154
^ a b 栗木安延 1997.
^ 異分子の摘発は党幹部の指揮『東京朝日新聞』昭和9年1月17日夕刊(『昭和ニュース事典第4巻 昭和8年-昭和9年』本編p539 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
^ 兵本達吉 2008.
^ a b c 兵本(2008)pp.388-390
^ 倉田稔 1994.
^ a b 兵本(2008)pp.375-378
^ 小畑実、「【北に消えたテナー】永田絃次郎の生涯(1)日本編」]産経新聞、2010年6月20日

参考文献
書籍

立花隆日本共産党の研究講談社、1978年

袴田里見 『昨日の同志宮本顕治へ』新潮社、1978年

日本共産党中央委員会 『日本共産党の七十年』新日本出版社、1994年5月

栗木安延「「小畑達夫」」『近代日本社会運動史人物大事典』日外アソシエーツ、1997年1月20日。 

兵本達吉『日本共産党の戦後秘史』新潮社新潮文庫〉、2008年10月(原著2005年)。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4101362915


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