小惑星の名前については、現在では天体の中で唯一、発見者に命名提案権が与えられている。
まず、新天体と思われる天体を2夜以上にわたって位置観測し、その観測結果が小惑星センター (Minor Planet Center, MPC) に報告されると、発見順に仮符号が与えられる。 仮符号は以下の書式に従う英数字からなる [2]
。仮符号を付けられた天体は既知の天体との軌道の同定作業が行われる。最終的に軌道が確定して新天体だと確認されると、小惑星番号が与えられた上で命名される。
発見者(すでに死去している場合は軌道確定のための計算を行った者)によって提案された新小惑星の名前は IAU の小天体命名委員会によって審査される。名前はラテン語化するのが好ましいというのが世界的な暗黙の了解事項であるが、現在ではそうでないものも多い。その他にも、「発音可能な英文字で16文字以内であること」、「公序良俗に反するもの、ペットの名前[注 1]、すでにある小惑星と紛らわしい名前[注 2]は付けられない」、「政治・軍事に関連する事件や人物の名前は没後100年以上経過し評価が定まってからでないとつけられない」、「命名権の売買は禁止[注 3]」などの基準がある[3]。
なお、トロヤ群はトロイア戦争に参加した戦士[注 4]の中から、ケンタウルス族(後述)にはケンタウロス族の名前、太陽系外縁天体には各民族などの創世神話から命名を行うという規則がある[注 5]。
また、人名については、かつては「姓・名」を分けて命名できた((3744) ジャック・ロンドン (Jack London) など)が、21世紀初頭には姓と名を結合した命名が為されている((79896) ビルヘイリー (Billhaley) など)。また、別々の小惑星に命名提案された人名を結合するケースなども見られる。
近年では、ほぼ同じ大きさの二重小惑星に命名する際に、それぞれの天体に付けた名前をハイフンで結合して小惑星名とするケースが見られる。例としては、(79360)Sila-Nunam(en)、(341520)Mors-Somnus(en)がある。
基本的には、一度命名した小惑星名は変更できないことになっているが、何らかの問題が生じた際には例外的に変更された例がいくつかある。詳細は「小惑星番号#例外」を参照
また、申請の際に名前の綴りが変更されることがある。 小惑星名を日本語で表記する方法は、メディア等によってまちまちである。片仮名もしくはアルファベットで表記する場合もあり、日本や中華人民共和国など、漢字文化圏に因んで命名された小惑星に関しては、漢字表記する場合もある。 当初は他の惑星と同じように、小惑星に対してもローマ神話の神の名が与えられていた。やがて小惑星が多数見つかるようになると、他の神話の神や文学作品の登場人物、あるいは実在した人物や地名なども用いられるようになった。なお、初期に見つかった小惑星に女神の名が付けられたことから、男性の名前でも女性化して命名されていた。例としては (511) ダビダ(デイヴィッド・トッド (David Tod) →Davida)などがある。そして、1896年に最初の地球軌道に接近する小惑星、1906年に最初のトロヤ群小惑星が発見されると、それらのように特異な軌道を持つ小惑星には男性名(神または英雄など)が付けられることになった(上記の2個はそれぞれ (433) エロス、(588) アキレスと命名された)。その後、小惑星の数が更に増加するにつれて名前の数が足りなくなる恐れが出てきたため、比較的自由な命名が許されるようになった。 第二次世界大戦後、アメリカ合衆国内に小惑星センターが設立され、小惑星および彗星の観測記録や番号登録、命名などを小惑星回報 (MPCs
表記
命名の歴史
MPCsによって名前とその由来が公表されるようになったのは、小惑星番号にして概ね1500番台以降である。1998年末以降に命名された小惑星(3000番台から9000番台の一部と、10000番台以降のすべて)については、ジェット推進研究所の小天体データベースにほぼ例外なくMPECsの命名文が収録されている。Lutz D. Schmadel の“Dictionary of Minor Planet Names”(2006年に第5版、2008年にその補遺が発行された)には、それまでに命名されたすべての小惑星が掲載されているが、MPCs以前に命名されたものについては由来が不明な場合もある。
分類
固有軌道要素による分類