前述のように、大会社においては経営適正化のために監査制度を中心として規制が強化されている。また、経営合理化のための制度も利用することができる。 大会社またはみなし大会社のうちで取締役が10名以上おり、その内1名以上の社外取締役がいる場合には重要財産委員会を設けることができる(1の3第1項1号、2号)。日本の大企業では取締役会が肥大化する傾向にあり、意思決定の速度が遅くなりがちであった。そのため経営委員会や常務会といった比較的少数の取締役を集めた会議体を設けて経営の迅速化を図る例が多くなった。その一方で取締役会はそこで決まったことについて承認を与えるのが通常となり、実質的にその権限が委任された形になった。しかしこれら少数の取締役らによる会議体は商法上に根拠がないため、法的な責任の所在や権限が曖昧である。そこでこれらについて法的な枠組みを与えたのが重要財産委員会である。 重要財産委員会は、商法260条2項1号、2号に規定された重要な財産の処分、譲受け、多額の借財のうち、取締役会の決議によって委任された事項を決定することができる機関であった。これにより迅速な経営判断を可能とするのが狙いである。その一方で取締役会の監督機能を担保するなどして適正な経営を確保するための規制も設けられた。すなわち、重要財産委員会で決まったことは取締役会へ報告しなければならず、監査役の出席義務・意見陳述権など取締役会に関する規定が準用されている。 なお、21条の36第4項で重要財産委員会に関する規定が適用されない旨が規定されているため、重要財産委員会制度と委員会等設置会社制度(後述)は両立し得ない制度であった。 大会社およびみなし大会社では監査に関して特別の規制を受ける。大まかに言って、会計監査法人の選任と監査役会の構成が要求されている。 まず、通常の監査役の他に公認会計士または会計監査法人を会計監査人として選任しなければならない(2条)。一方、通常の監査役を3名以上おかなければならず、これらによって監査役会を構成させることとした(18条1項)。さらに、そのうちの一人から常勤監査役を互選で選出させて監査の実質化を図り、監査役会を構成する監査役の半数以上は社外監査役でなければならないとして公正の維持を目指した。ここでいう社外監査役というのは、過去一度もその会社やその会社の子会社で取締役や従業員などになったことがない者でなくてはならない。 大会社であって、株主総会での議決権を持つ株主が1000人以上いる場合には株主総会での議決権行使に関して、二つの特別な規定がある。一つは、株主総会の招集通知を送る際にはその総会で議決権を行使する際に参考となる書類 なお、この規定はみなし大会社には適用されない。 大会社は委員会等設置会社という経営形態を採ることができた。詳しくは委員会等設置会社のページを参照。なお、21条の36第4項で重要財産委員会に関する規定が適用されない旨が規定されているため、委員会等設置会社は重要財産委員会を設けることはできない。 小会社においては前述のような考慮から、規制が大幅に緩和されていた。まず監査役の権限が会計監査のみに限定され、それに伴っていくつもの商法の規定が適用されないこととされた(22条、25条)。その他にも25条によって多くの規定が適用除外の対象とされ、規制が簡素化されていた。
取締役会に関する特例(重要財産委員会)
監査に関する特例
議決権行使に関する特例
委員会等設置会社
小会社に関する特例
関連項目
株式会社
委員会等設置会社
監査役
大会社
外部リンク
⇒株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法) 法庫(廃止時点の条文)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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