射出座席
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また、音速以上の速度での脱出はほとんど起きないことも判明したため、2010年末に退役したオーストラリア空軍F-111Cを最後に、モジュール式の正式採用例はない。

B-58は当初は通常の射出座席だったが、超音速飛行中の脱出で死亡事故が起きたため、座席をシールドで覆い与圧するモジュール式に変更された。小型であり内部は非常に狭いものの、衝撃吸収用のエアバッグや着水時に作動するフローティングシステム、や食料を備えシェルターの役目も果たすなど意欲的な設計であったが、当初から問題視されていた開発費の増大に拍車をかけることとなった。

F-104Aの初期型のように下方に向かって射出する方式もあったが、低空飛行時の脱出は不可能であり、安全性の目安にされるゼロ・ゼロ射出(後述)もできないため、現在では採用されていない(F-104も生産途中から上方射出式の座席に変更されている)。
ヘリコプターでの採用

現在の射出座席は、主に戦闘機など小型の航空機を中心として使用されているが、ヘリコプターに射出座席を搭載する計画もあった。 しかし、ほとんどのヘリコプターは射出の際にメインローターが干渉してしまう関係上搭載されず、射出座席が装備された機体はロシアカモフ設計局が開発したKa-50/Ka-52などごくわずかしかない。Ka-50では脱出時に障害となるメインローターを火薬で吹き飛ばしてから射出される。
現況

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2022年9月)
サンダーバーズ6番機のF-16からのACES II射出座席による脱出。パイロットのストリックリン大尉は無傷だった。先に吹き飛ばされたキャノピーと、続いて射出される座席が見える 2003年9月14日アイダホ州マウンテンホーム空軍基地における事故の際に撮影

現代の射出座席は大きく進化を遂げた。射出可能な速度域が広がり、高度0速度0の状態からでも、パラシュートが十分開く高度までパイロットを打ち上げる「ゼロ・ゼロ射出」が可能な射出座席がほとんどとなっている。また、座席を打ち出すための推進装置として、火薬よりもパイロットにかかるGが小さいロケットモーターが多く使われている。

脱出時にはキャノピーへの衝突を防ぐため、火薬を使ってハッチやキャノピーを丸ごと投棄したり、あるいはキャノピーにプリマコードを埋め込んでおき、グラスを細かく砕くようになっている。しかし、火薬よりかかるGが小さいといっても、パイロットには15-20Gがかかるため、適切な姿勢をとっていない場合は脊柱を痛めるなどの可能性がある。そのため、射出される直前に全身がシートベルトで拘束され適切な姿勢に矯正されるようなものが多い。悪条件が重なった場合、先に投棄されたキャノピーに射出されたパイロットが衝突する危険性や、コックピット内に発生するロケットモーターの高温の噴出ガスでパイロットが火傷を負うこともある。

このような危険性と取り扱い上の注意事項から、アメリカ軍では戦闘機など射出座席を装備する航空機へ搭乗する人間には射出座席の訓練を修了し、「航空機搭乗員」の資格を取得することを義務付けている。これは操縦も操作も行なわず乗っているだけの人間であっても修了義務があるため、訓練を受けていない観光客などが戦闘機に乗ることはできない。一方、ロシア連邦軍他一部の国ではこの義務がないため、観光客が訓練なしに戦闘機に乗ることができる場合もある。また、射出後はパラシュート降下するため、当然パラシュートの操作ができることも要求される。

脱出後、水上に着水した場合でも、ハーネスに内蔵されたライフジャケットで最低限の浮力は得られる。着水時に意識を失っているような場合でも確実にパラシュートが外れるよう、ハーネスに自動切り離し装置が内蔵されているものが多い。ただし、パラシュートの切り離しに失敗したり、パラシュートが搭乗員にかぶさるように落下してきた場合は、絡まったパラシュートに引き込まれるなどして溺死する場合もある。

モジュール式の場合は、救援が来るまで雨風をしのぐ避難所として利用できる(海の場合はいかだとして機能する)。

マーチンベーカー社は、自社製の射出座席で生還した人々に対するネクタイバッジ、認証書、ネクタイピン〔女性パイロットの場合はブローチ〕[10]や会員証を作成して「イジェクション・タイ・クラブ」(Ejection Tie Club)のスポンサー活動を行っている。1957年にこのクラブが設立されて以来2012年までに5,800名がここの会員に登録されている[11]
宇宙船への装備

射出座席は有人の宇宙船にも搭載されている。

世界最初の有人宇宙船であるボストークは、重量の関係からカプセル全体を安全に減速できるだけの大きさのパラシュートを搭載できなかったため、大気圏再突入後、高度7,000mで搭乗者を座席ごとカプセルから射出し、搭乗者のみパラシュート降下する設計となっていた。ボストーク1号で初の宇宙飛行を行ったユーリイ・ガガーリンもこの方式で帰還したが、国際航空連盟による「宇宙飛行」の定義では乗員が機体に搭乗したままで着地ないし着水することとされており、当初ソビエト連邦はガガーリンの宇宙飛行が定義に照らして認められないことを懸念し、射出座席が搭載されていることは語っていなかったが、宇宙飛行が認定されてからそれを使ったことを明らかにした。

アメリカでは、ジェミニ宇宙船において射出座席を装備しているが、これは大気圏内における非常脱出用である[12]

やがて、安全に着陸できるだけのパラシュートが搭載可能になると、射出座席は装備されなくなったが、後にスペースシャトルに再び搭載されることとなった。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}ただこれは、試験飛行の期間に限定されて搭載されただけであり、正式な運用が開始されると実用性の低さ(シャトルが低高度・低速でないと助からない)や重量増や機構の複雑さから取り外されてしまっている[要出典]。チャレンジャー号爆発事故では乗員が海面に激突するまで生存していた可能性があるとされ[13]、再び射出座席などの緊急脱出装置の装備が検討されたが、機体の大幅な設計変更(操縦室の屋根を丸ごと吹き飛ばす仕組みが必要になる)や乗員数の削減を要する事から実現しなかった。なお、ソ連版スペースシャトルといえるブランには射出座席が標準装備されていた。
射出座席の一覧

この節に雑多な内容が羅列されています。事項を箇条書きで列挙しただけの節は、本文として組み入れるか、または整理・除去する必要があります。(2022年9月)

イギリス

マーチンベーカー・エアクラフト

マーチンベーカー_Mk.1

Mk.2(英語版)

Mk.3

Mk.4(英語版)

Mk.5(英語版)

Mk.6(英語版)

Mk.7(英語版)

Mk.8(英語版)

Mk.9(英語版)

Mk.10(英語版)

Mk.11

Mk.12

Mk.13

Mk.14

Mk.15

Mk.16

アメリカ

グッドリッチ (現:UTCエアロスペースシステムズ)

ACES II

ACES5

ソビエト連邦・ロシア

ミコヤン・グレーヴィチ設計局

KM-1(ロシア語版、ドイツ語版) - MiG-21(PF以降)、MiG-23MiG-25MiG-27に搭載。

ツポレフ設計局

KT-1M(ロシア語版) - Tu-22Mバックファイアに搭載。

ヤコヴレフ設計局

KYa-1M(ロシア語版) - Yak-38フォージャー用に開発。量産機ではK-36VMを搭載。

NPP ズヴェズダ

K-36D - MiG-29Su-27Su-24Su-25Yak-38Tu-160に搭載。

中国


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