対数
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オリジナルの定義

ネイピアらが示した対数の定義は現在用いられているものとは異なっていた。

ネイピアによる対数の定義は次のようなものである:正の実数 x に対して x = 10 7 ( 1 − 1 10 7 ) p {\displaystyle x=10^{7}\left(1-{\frac {1}{10^{7}}}\right)^{p}}

を満たす実数 p がただ一つ定まる。この p のことを ネイピアの対数(: Napierian logarithm)という。この値は、−107 ln (x/107) と 7 桁の精度で一致する。ネイピアは、1594年に対数の概念に到達し、この定義を用いて20年間計算を続け、7 桁の数の対数表を完成させて1614年に発表した。

ビュルギもまた対数の発見者であるが、ビュルギが用いた定義はネイピアのものとはわずかに異なっている。ビュルギによる対数の定義は次のようなものである:正の実数 x に対して x = 10 8 ( 1 + 1 10 4 ) p {\displaystyle x=10^{8}\left(1+{\frac {1}{10^{4}}}\right)^{p}}

を満たす実数 p がただ一つ定まる。この p のことをビュルギの対数という。この値は、104 ln (x/108) と4桁の精度で一致する。ビュルギは、ネイピアよりも早く1588年に対数の概念を発見したが、1620年まで公表しなかったため、対数の発見者としてはネイピアが称えられることが多い。
冪の表記

三角関数において例えば (sin x)2 の意味で sin2 x と書くのと同様に、対数関数に対しても、2 以上の整数 n に対して logn x という表記が使われることがある[6][7]
計算

対数により、積の計算を、より簡単な和の計算に置き換えることができる。いくつかの例外を除き、有限の手順では対数の値を厳密に求めることはできないため、対数の計算には近似値を用いる。予め定めた近似の精度に応じて有効数字が決定される。対数の近似計算は計算量が多く高コストであるため、対数を含んだ計算には基本的に数表が用いられる。この対数値を列挙した数表を対数表という。対数表には限られた数しか値が載っていないため、対数表から対数値を参照する場合にはしばしば補間公式が用いられる。

2つの正の実数 x, y の積を求めたいとする。別の正の数 a ≠ 1 に対して、 x = a p y = a q {\displaystyle {\begin{aligned}x&=a^{p}\\y&=a^{q}\end{aligned}}}

という置き換えがいつでも可能であり、指数法則 a p a q = a p + q {\displaystyle a^{p}a^{q}=a^{p+q}}

が成り立つことから、以下の手順によって積 xy を求めることができる。
対数表を参照するなどして x を p に、y を q に変換する。

和 p + q を計算する。

対数表を逆に参照するなどして p + q の結果を a p + q に変換する。

これが求める積 xy である。

具体例

常用対数表を用いて積を求める例を示す。
345 × 4560 = 3.45 × 4.56 × 105 ・・・(1)

対数の性質より
log10(3.45 × 4.56) = log103.45 + log104.56

常用対数表より
log103.45 = 0.5378 , log104.56 = 0.6590

これより
log103.45 + log104.56 = 0.5378 + 0.6590 = 1.1968 = 0.1968 + 1

常用対数表より対数 0.1968 に近い真数を探すと
0.1968 ≒ log101.57

また、1 = log1010 であるから
log10(3.45 × 4.56) = log103.45 + log104.56 ≒ log101.57 + log1010 = log1015.7

これより、3.45 × 4.56 ≒ 15.7 ・・・(2)
(2)を(1)に代入して、
345 × 4560 ≒ 15.7 × 105 = 1,570,000

これは 345 × 4560 = 1,573,200 に対して上から3桁までの値が一致している。
(精度が必要な場合は有効数字の大きな対数表を用いる必要がある。一般に対数は無限小数の形で求められ、対数表の値は近似値である。)

対数の性質

以下の節において、a, b は 1 ではない正の実数、x, y は正の実数、p は実数、ln x は自然対数を表す。
基本的な演算

定義より a log a ⁡ x = x {\displaystyle a^{\log _{a}x}=x}

が成り立つ。

積の対数は(底が等しい)対数の和に等しい。 log a ⁡ x y = log a ⁡ x + log a ⁡ y {\displaystyle \log _{a}xy=\log _{a}x+\log _{a}y}

商の対数は(底が等しい)対数の差に等しい。 log a ⁡ x y = log a ⁡ x − log a ⁡ y {\displaystyle \log _{a}{\frac {x}{y}}=\log _{a}x-\log _{a}y}

p 乗の対数は、対数の p 倍に等しい。 log a ⁡ x p = p log a ⁡ x {\displaystyle \log _{a}x^{p}=p\log _{a}x}

また、底の p 乗の対数は、対数の 1/p 倍に等しい。(pは0でない実数) log a p ⁡ x = 1 p log a ⁡ x {\displaystyle \log _{a^{p}}{x}={\frac {1}{p}}\log _{a}x}
底の変換

loga x を用いた式から logb x を用いた式へと変形するには、 log b ⁡ x = log b ⁡ ( a log a ⁡ x ) = log a ⁡ x ⋅ log b ⁡ a {\displaystyle \log _{b}x=\log _{b}\left(a^{\log _{a}x}\right)=\log _{a}x\cdot \log _{b}a}

となることから、 log a ⁡ x = log b ⁡ x log b ⁡ a {\displaystyle \log _{a}x={\log _{b}x \over \log _{b}a}}


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