寒い国から帰ってきたスパイ
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ル・カレは執筆当時、西ドイツのボン駐在のイギリス外交官に偽装して情報活動に従事していた[2]

作品の根底には、西側諸国による時に違法な作戦が含まれていたその情報活動が、自身の政府が奉じる民主主義によって正当性を与えられるとしていたことへの反発がある。戦時中をカナダで過ごした理想主義的な共産主義者のフィードラーと、元ナチスで戦後も反ユダヤ思想を捨てず殺人を躊躇しないムントは著しい対照を成している。イギリスの情報機関はムントを二重スパイとして利用し、フィードラーを粛清させる。ムントは物語の終盤でリーマスを逃亡させるが、自身の安全を確保するため、情報を漏らす危険のあるゴールドの射殺を許可したことが示唆されている。ゴールドを利用したイギリス情報部は、ムントによるゴールドの殺害を懸念するものの、実際に手をうとうとはしない。ル・カレはこの作品において「個人は思想よりも大切」であることを西側諸国へと示したかったと述べ、「大衆の利益のために個人を犠牲にして顧みない思想ほど危険なものはない」とも語っている[3]
評価

英国推理作家協会から1963年度のゴールド・ダガー賞に選出された。1965年にはアメリカ探偵作家クラブからエドガー賞 長編賞が授与された。両賞を共に受賞した作品はこれがはじめてである。2005年にはダガー賞受賞作品の中でも最良の作品であるとして「Dagger of Daggers」賞を送られている。

作品は「タイム」が、同誌が創刊された1923年から現在までに出版された英語で書かれた小説の「史上最高の小説100册」(All-Time 100 Novels)に選んでいる[4]。2006年にはアメリカの図書業界向けの権威ある雑誌である「Publishers Weekly」により、歴代最高のスパイ小説に選ばれている。
登場人物

アレック・リーマス(Alec Leamas):ベルリンにおけるイギリス
秘密情報部(ケンブリッジ・サーカス)の責任者

ハンス=ディーター・ムント(Hans-Dieter Mundt):東ドイツの諜報部(アプタイルンク)副長官。現場作戦の指導者。元ナチス反ユダヤ主義

フィードラー(Fiedler):ムントの部下。対敵諜報局長。ユダヤ人

リズ・ゴールド(Liz Gold):イギリスの図書館員。イギリス共産党

管理官(Control):イギリス秘密情報部の長官

ジョージ・スマイリー(George Smiley):イギリス秘密情報部の元職員

ピーター・ギラム(Peter Guillam):イギリス秘密情報部の職員

カルル・リーメック(Karl Riemeck):東ドイツ政府の高官。ドイツ社会主義統一党最高会議メンバー。イギリスのスパイ

脚注^ アダム・シズマン 著、加賀山卓朗、鈴木和博 訳『ジョン・ル・カレ伝 <上>』早川書房、2018年5月25日、354頁。 
^ “ ⇒John le Carre: 'I was a secret even to myself'”. The Guardian (2013年4月12日). 2013年12月22日閲覧。
^ ジョン・ル・カレ『「寒い国から帰ってきたスパイ」訳者あとがき』ハヤカワ文庫、1978年、332頁。 
^ “ ⇒All-TIME 100 Novels The Spy Who Came in From the Cold”. The TIME (2010年1月18日). 2013年12月22日閲覧。

外部リンク

寒い国から帰ってきたスパイ - ハヤカワ・オンライン

The Spy Who Came In From The Cold、John le Carre: The author's official website

典拠管理データベース
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