富岳_(スーパーコンピュータ)
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「富岳」は富士通が開発したCPUであるA64FXを搭載している。このCPUは、フロントエンドをARMv8.2-Aベースに新たな拡張であるSVE(Scalable Vector Extension)を追加した[18] ものとして、バイナリレベルでARMとの互換がとられた一方、マイクロアーキテクチャは「京」でも使用された富士通製SPARC64の構造を踏襲している[19]。「富岳」は「京」の約100倍の性能と、世界最高水準の実用性を目指している[20]。「富岳」は富士通独自のTofu Interconnect Dを使用して結合された158,976個のA64FXを使用している[21]
ソフトウェア

「富岳」はIHK/McKernelという名前の軽量マルチカーネルオペレーティングシステムを使用している。このオペレーティングシステムはLinuxと軽量カーネルのMcKernelの両方を使用し、同時に並行して動作する。両方のカーネルが実行されるインフラストラクチャーはInterface for Heterogeneous Kernels (IHK) と呼ばれる。高性能シミュレーションはMcKernelで実行され、Linuxは他の全てのPOSIX互換サービスで利用できる[22][23][24]
性能

2020年6月、国際スーパーコンピュータ会議にて発表されたTOP500において1位となった。日本のスーパーコンピュータとしては、2011年6月・12月に「京」が1位となって以来9年ぶりである。また、物理現象をシミュレートするHPCG(High Performance Conjugate Gradient)、人工知能計算のベンチマークHPL-AI、ビッグデーター解析のGraph500においても1位となり4冠を達成[25][26]。その後、2020年11月、2021年6月及び11月の時点でも4部門で首位を維持し続け、4期連続の4冠を達成した[27]

この他、消費電力当たりの性能ランキングGreen500では2020年6月の時点で9位[28]
価格性能比について

2018年、「富岳」の構築費用は1300億円(国費 1100億円、民間投資 200億円)と報道された[29]

また、構築費用とは別に「富岳」の運用に必要な経費は、毎年150億円以上[30][31]が計上されている。しかし、2022年においては光熱費の急激な上昇により、運用費の不足が予測されたため、全計算ノードの約1/3を約4カ月間停止している。[32]

ニューヨーク・タイムズ紙は米国で計画中の「富岳」の性能を超えるエクサ級のスパコンのコストは最大でも6億ドルであるのに対して、10億ドルを超える「富岳」のコストを高額な支出と表現した[33]

なお、時期・用途・構成などは異なるが、当時の他の主なスーパーコンピュータ(計画中を含む)との性能・費用などの単純比較は下表の通り。

性能・費用比較表システム名運用開始年運用終了年性能
LINPACK
PFLOPS)費用
(億円)消費電力
MW)TOP500順位ベンダーCPU・GPUOS
El Capitan(開発中)2023(予定)-2000(理論値ピーク性能、予定)643

(6億ドル)40未満(予定)-HPEAMDEPYC(Zen 4)、Radeon InstinctLinux
Aurora2023-585.3557

(5億ドル)以上[34]24.72023年11月- 2位HPE,IntelXeon CPU Max、Data Center GPU MAXLinux(SUSE)
LUMI[35]20212027379.7

174

(1億6000万ドル)7.12022年6月-2023年6月 3位HPE,AMDAMD第3世代 EPYC , AMD Instinct 250XLinux

(Cray OS)
Frontier2022-119464322.72022年6月- 1位HPE,AMDAMD第3世代 EPYC , AMD Instinct 250XLinux

(Cray OS)
富岳2020-4421300[36]29.9[37]2020年6月 - 2021年11月 1位富士通A64FX(ARM)Linux(RedHat)
Summit2018-148350

(3億2500万ドル)[38]10.1[37]2020年6月 - 2021年11月 2位

2018年6月 - 2019年11月 1位IBMPOWER9, Tesla V100Linux(RedHat)
Sierra2018-947.4 [37]2020年6月 - 2021年11月 3位

2018年11月 - 2019年11月 2位
神威・太湖之光2016-93300

(約18億元)[39]15.4[37]2020年6月 - 2021年11月 4位

2016年6月 - 2017年11月 1位NRCPCSunway SW26010Linux(Raise)
20112019101120[40]12.7[41]2011年6月 - 2011年11月 1位富士通SPARC 64Linux

歴史

2018年(平成30年)

11月22日の
総合科学技術・イノベーション会議でポスト「京」開発の中間評価が公表され、妥当と評価[42]


2019年(平成31年/令和元年)

4月15日、富士通は理研との間でハードウェアの製造、出荷、設置の正式契約(製造開始)を発表[42]

5月23日に名称を「富岳」に決定したことを発表した[16]

8月27日に「富岳」のロゴマークが公開された[43]。ロゴマークのデザインは、「『富岳』の性能の高さとユーザーの拡がりを表現」しているとされる[43]

9月17日 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律施行規則[44]が「富岳」に合わせて改正され、第二条第四項に云う特定高速電子計算機施設として指定される[45]


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