寄生とは本来種間関係を表す用語だが、生体間の直接の栄養授受という意味で「雌の体の上に雄が寄生する」と表現することもある。深海性のアンコウ類には、雄が雌より極端に小さく、雌の体表に噛みつくような形で固定されているものがある。雄は小さい間に雌に出会うと、雌にとりついて、そのまま寄生生活にはいる。これは深海という個体数や生息密度の限られる環境下で、繁殖時の出会いの機会を確保するための適応と言われる。これらの中には、雄の体の循環系や消化器系といった器官が退化して、ほとんど雌の体と同化してしまうミツクリエナガチョウチンアンコウなどの種も存在する。他にも、寄生性の甲殻類やユムシ動物のボネリムシ
、コケ植物の一部などにそのような例がある。このような雄を矮雄という。また、胎生の動物においては胎児は母親の胎内にあって母親から栄養等の補給を受けているから、胎児は母親に寄生しているということもできる。同様な関係は種子植物の本体と配偶体の間にも成立する。 寄生生物が宿主に体して与える影響には、さまざまなものがある。 基本的には、寄生者にとって、宿主の死は自分の生存を危険にさらすので、好ましいことではない。しかし宿主を死に至らしめる寄生生物も存在する。 寄生によって宿主が重大な病気や命に関わる被害を受ける場合がある。このような現象は、寄生者が微生物である場合が多い。それに対して、ある程度以上の大きさの寄生者は宿主にそれほどの損害を与えない場合が多い。これは寄生者にとって、宿主間の移動がその生活上で最も困難な部分であるためであろう。逆に、微生物の大きさであれば、宿主間の移動は空気感染や接触感染など比較的簡単であるから、宿主を殺すことは寄生者の生存にとってさほどの負担とならないのであろう。微生物が寄生者であり、その寄生によって宿主が生活上の負担を強いられる場合、その寄生者を病原体と呼ぶ。 微生物であっても、宿主の死はやはり危険なことに違いはない。したがって、宿主への被害は世代を経るうちに小さくなる例がある。梅毒はコロンブスが中央アメリカからヨーロッパへ持ち帰ったころは、数週間のうちに重症化して命にかかわったというが、現在では何年もかかって重症化するようになっている。 大型の寄生虫では、日本住血吸虫が宿主の命にかかわる例であるが、そのような例は他には多くない。フィラリアは犬の場合は致命的でありえる。人の場合は象皮病を引き起こす。これも宿主の生活上は大きな負担である。 特に、本来の宿主でない生物に寄生虫が迷入すると、寄生関係のバランスが崩れて寄生虫は生き延びても生活環を次の段階へ移行できなかったり、宿主に芽殖孤虫症やエキノコックス症など致死的な重篤疾患をしばしば引き起こす。エイズやエボラ出血熱など、新種のウイルス感染症も同様のことが当てはまる。 それ以外の大抵の寄生虫では、宿主にさほどの負担をかけない例が多い。サナダムシなど、体長が最大で10mに達するが、大抵の場合健康を害することはないと言う。人間に寄生する物でも、精々肛門から同生物が出てきた際に精神的なショックを受ける程度で、食糧難
宿主への影響
昆虫が植物に寄生する場合、植物組織が異常に成長してこぶを作る場合がある。このようなものを虫えい(虫こぶ、gall)と呼び、原因昆虫の食料および生育の場となっている。菌類が寄生してこぶ(菌えい)が生じたり枝葉が異常成長する(天狗巣)例もある。 寄生者が宿主に働きかけて、特殊な行動を取らせる例がある[2]。 吸虫類のロイコクロリディウム(Leucochloridium)である。この寄生虫は成虫の宿主は小鳥であるが、幼生はオカモノアラガイ
寄生と行動様式などの変化
植物でも、ヤッコソウはスダジイの根に内部寄生するが、寄生された根は地表付近に出て広がり、そのためヤッコソウの花が地上に出やすくなる。
フクロムシの場合、寄生されたカニ等の甲殻類は雄であっても雌化する。すなわち、胸部に折れ曲がった腹部が幅広くなり、卵をここに抱える雌と同じ形になる。フクロムシの虫体はカニが抱卵する時に卵の入る場所に発達するので、このことは、カニに対してフクロムシの虫体が卵塊であるようにカニに錯覚させ、カニに卵塊を守る行動を取らせるための操作である可能性が示唆されている。