寄付
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江戸時代の大坂(大阪)には、「きたのう貯めて、きれいに使う」という精神が美徳としてあった[10]。そのため、大阪の八百八橋は皆町人の寄付で作られたといわれる位である。この「きたのう貯めて、きれいに使う」の言葉の意味は、一言で言えば、商売上の勘定と、公共への支出の勘定は別であるという意味である。つまり、商売上はきたないといわれる程に無駄を省いて、倹約に倹約を重ねて資本を蓄えるのが商人の美徳だが、しかし、商売から離れれば、人として、世のためや人のためにはできるだけの事をやるのが美徳であるとの価値観のことである。

この様な精神は明治以後にも続き、中ノ島公会堂の公共施設や美術館、小学校などが市民の寄付で作られた。しかし、第二次世界大戦で大阪が灰燼に帰し、商業の中心が東京へ移ると、このような精神も「お上中心」の消費都市である江戸文化の延長の東京では「下らぬ」ものとなり、日本全体には広がらなかった。

明治になり社会構造が大きく変わると、相互扶助に代わって寄付が盛んになっていった。第二次世界大戦以前は、皇室財閥などによる寄付が寄付総額の30%に上るなど、福祉のかなりの部分を寄付が担っていたが、大戦後は福祉国家が理想とされるようになると、福祉は政府が責任を持つという意識が広がり、寄付の相対的地位は低下していった。それでも1995年阪神・淡路大震災の際は、未曾有の災害状況に多数の義捐金が寄せられたが、被災者への公平配分を原則とする中、被災者の全体像の把握に時間を要し、全額の配分には約1年半を要した(災害義援金はまず赤十字と中央共同募金会で構成される「義援金配分委員会」にプールされ、一人当たりの支給額が決定された上で交付される。なお、日本における寄付総額が前年の2倍に増加した)。2000年頃からは、ゆるやかな連帯による社会の再構築が日本各地で模索され始めた。そうした運動を支えるNPOへの寄付が、現実的な寄付金の必要とされる人への交付という点からも注目されるようになっている。

2003年には、大賀典雄ソニー名誉会長(当時)が退職慰労金16億円を長野県軽井沢町へ全額寄付しようとしたが、贈与税の問題などから、手取り分12億1699万円で事業主として軽井沢大賀ホールを建設、完成後に町に無償供与するという形を取らざるを得なくなるという事態が発生した[11]。この事例は、贈与税が日本における寄付の阻害要因となっている典型的な例である。

2010年12月以降、漫画『タイガーマスク』の伊達直人などの架空のキャラクターの名義で、素性を明かさずに児童養護施設などに寄付を行う「タイガーマスク運動」が起きているが、その根本に密かに慈善を行う事を美徳とする照れの文化と、逆に欧米のような素性を明かした寄付は「売名だ」と非難される点が指摘されており、根本が改善されない限り、この運動は一過性の祭り・流行に終わるという指摘もある。

2020年3月13日、政府は、天皇が即位したことに伴い、天皇が社会福祉事業へ1億円以内の寄付ができるようにするため、国会に提出する日本国憲法第8条の規定による議決案を閣議決定した[12][13]。この議決案は、3月26日、衆議院本会議において全会一致で可決[14]され、3月31日、参議院本会議において全会一致で可決[15]され国会の議決がされた。2020年4月6日、宮内庁は、天皇の即位にあたり、天皇自らが社会福祉事業のための2団体に計1億円寄付すると発表した[16]
義捐金と義援金募金箱2010年日本における口蹄疫の流行

「義捐」(ぎえん)は明治時代に作られた和製漢語である。「義」は、正しい行い、もしくは公共のために力を尽くすことを意味し、「捐」は、捨てる、捨て去るの意である。すなわち「義捐金」は、正しい行いのため、公共のために捨てる金を意味する(イスラームにおける喜捨相当)。戦後の国語改革で「捐」が当用漢字に採用されなかったため、「義えん金」と混ぜ書き表記した。現在はほとんどのメディアで「義援金」という表記が見られるが、これは新聞協会による独自の基準で定めた代用表記である。夏目漱石の「吾輩は猫である」に、「義捐を取られる」と口にする苦沙弥先生を、猫が「変なことを言うものだ」と笑っている場面がある。法令上の表記としては、東日本大震災関連義援金に係る差押禁止等に関する法律(平成23年8月30日法律第103号)以後制定された義援金に係る差押禁止等に関する法律では、「義援金」という表記となっている。
寄付と義援金

義援金とは、国や地方自治体から、または日本赤十字社や中央共同募金会を経由して、被災者に直接に金が配分される[17]。対照的に「寄付」は、災害時であっても大抵の場合は、支援活動を行う団体、具体的には認定NPO法人や公益財団法人などに渡され「物資を購入する」「スタッフを派遣する」といった活動のための資金として、使われる[17]
募金と寄付金の混同「街頭募金」も参照

「募金=金(かね)を募る」だから「寄付金=金(かね)を寄付する」の対義語なのだが、「寄付金」と表現すべきを「募金」と誤表現する事例が多い。[18][19][20]
募金・義援金の形態
募金箱

日本では例えば「あしなが育英会」 「緑の募金」 「青い羽根募金」など街頭募金がある。

赤い羽根共同募金」では、あきかん募金箱に続いて1994年に組立式募金箱を開発した[21]

箱という言葉がタイトルに入っている「あゆみの箱」でも5度の募金箱のリニューアルがあり、2007年からのものが6代目となっている。

他に、コンビニなどの店舗(レジ前など)に設置する形態もある[22]セブン-イレブンの場合、通常は「みどりの基金」として行い、深刻な災害発生時には箱のステッカーを張り替え、一定期間それを対象にした義援金募金活動を実施している[23]

金額の集計作業は規模が大きい募金ほど大変で、硬貨計算機が普及していない時代には、コインホルダー(コインカウンター)等を用いて手作業でしていたという[24](現在でもそうしている場合もある[25])。
クレジットカードや各種金融機関からの定期的な自動振替

定期的な寄付をする仕組みでは、便利に寄付ができるように自動的に毎月送金できる仕組みもある。
その他

ドラえもん募金(テレビ朝日が1999年から実施)は、携帯電話大手三社のキャリア決済で、自動的に寄付できるシステム[26]

募金機能が付いた(清涼飲料水などの)自動販売機もある[27][28]

ファミリーマートでは店内端末「Famiポート」で募金を指定した後、レジで支払う方式も実現させた[22]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ @media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}本来の用字は寄附であって「寄付」は簡略表記だという俗説があるが、「付」には「授ける」「渡す」という意味があって寄付の意味と整合的である。“附”は元来盛り土の意味だったがのちに「付」と混用されたもの[要出典]。法律や法令の条文では「寄附金控除」や「寄附行為」という用語など、「寄附」の字で書かれているものが多い。
^ 前述の通り、寄付金には非課税な国も多く、アメリカにおいては非課税な上に、市民や一般のために奉仕する事は尊敬の対象になると同時に、寄付をしない資産家・企業は徹底的な批判に晒される。

出典^大阪・門真市議:「迂回寄付」で税還付 4640万円、自民支部通す 毎日新聞 2013年4月8日
^ 迂回寄付、和歌山・奈良の衆院議員も[リンク切れ] 読売新聞 2013年4月12日
^迂回寄付で税還付、自民党の京都市議2人も 読売新聞 2013年4月12日
^迂回寄付、自民大阪は調査見送り…会長還付発覚 読売新聞 2013年4月12日
^維新・兵庫代表も迂回寄付…自民県議時代 読売新聞 2013年4月12日
^ 還付分、政治家の利益に…迂回寄付、続々発覚 読売新聞 2013年4月12日
^ 寄附金を支出したとき国税庁
^ a b 桜井 2011, pp. 15?25.
^ 桜井 2011, pp. 11?12, 39?54.


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