家族
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1883年には人口1000人あたりの普通離婚率が3.39となり、おそらく世界最高の離婚率となっていて、これは1896年の民法制定で離婚が抑制され激減するまで続いた[28]

明治時代に入り、1896年には民法が制定され、そのうちの第4編「親族」と第5編「相続」(いわゆる家族法)によって家制度および戸主権は強化・固定された[29]。ただし、理念的には直系家族が主とされていたものの、次男以下の独立家族が多かったことや父母の寿命が短かったことから、日本では戦前から比較的小規模な核家族が最も一般的な家族形態であり、1920年の時点で過半数の世帯が核家族化していた[30]。戦前の農村では大家族制度が主流であったという認識は(一部の地域を除き)誤りである。一方、大正時代に入ると都市部の新中産階級を中心に、ヨーロッパの「近代家族」の概念が普及した[31]
現代

太平洋戦争の終戦を機に民法の改正により家制度は廃止された[32]。経済復興と給与労働者の増加により家庭は家内労働の場という側面が薄まり、家庭の教育的役割が強調されていく。また直系家族に代わり核家族が主な家族理念とされたが、旧来の家族概念も残存した[14]

1950年代以降(高度経済成長期)の家族変動の最も顕著なものは同居親族数が減少したこと、および共同体の力の減退に伴って家族の基盤に変容が生じたこと、の二つの特徴があげられる。多数の人口が農村から都市へ移動し、兄弟の数も減った。戦後社会で育った子供たちはすでに中年から高齢にさしかかり、不況の中で社会から孤立する者が急速に増え無縁社会という言葉まで生まれた。1980年代以降は、夫婦の共働きも一般化しつつあり、1991年以降男性片働き世帯と共働き世帯の世帯数は拮抗するようになって、1997年以降は共働き世帯が完全に上回るようになった[33]。それによって育児子育てが保育園や学童クラブ、地域の野球やサッカー、スイミングスクールなどのスポーツクラブ学習塾などに一時的に委託されることも増え、性別役割分業の見直しが進みつつある。また、高齢化社会に伴う老親の扶養の問題も深刻化してきた[34]。また、女性の社会進出にともない、女性が旧姓を通称として用いることが多くなってきたほか、選択的夫婦別姓制度導入などを求める声も大きくなって来ている。「夫婦別姓」も参照
日本の家族の現状[ソースを編集]

2010年時点では、日本の家族構成は核家族が56.4%、直系家族等が10.2%、単独世帯が32.4%となっており、1960年代からのデータでは核家族は1980年代まで上昇した後微減傾向、拡大家族は一貫して減少傾向、単独世帯はほぼ一貫して増加傾向にある[35]。ただし単独世帯が1人であるのに対し核家族・直系家族は2名以上で構成されるため、総人口ベースでは2005年データで87%の人が家族と同居していることとなる[36]。また、一つの世帯に属する平均人員数は、調査の開始された1920年から1955年頃までは1世帯に対しほぼ5名で動かなかったものの、その後は急減していき、2005年には1世帯に2.58人とほぼ半減した[37]。地域的に見ると、2005年時点ですべての県において核家族世帯が最も多くなっているものの、都市部では単独世帯もかなりの数を占め、東京都では4割以上が単独世帯である一方、主に日本海側の農村県においては直系家族や大家族の占める割合が比較的高く、山形県では3割を超えている[38]

令和2年国勢調査によると、三世代同居率は以下の通り[39]。body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%}

山形県 13.9%

福井県 11.5%

新潟県 10.5%

秋田県 10.3%

富山県 10.1%

...

全国 4.2%

...

北海道 2.4%

神奈川県 2.2%

大阪府 2.1%

鹿児島県 1.9%

東京都 1.3%

欧米で近代的な「家族」の崩壊が進んでいる中で、日本ではいまだに近代家族の概念が強固に残っているとされる[40]。一例として、一部先進国においては婚外子の割合が結婚しているカップルの子どもの割合とほぼ同じとなっている国家も存在するが、日本においては婚外子の割合は2008年でわずか2.1%にすぎず、ほとんどが結婚した夫婦による子どもである。しかし、晩婚化や非婚化によって出産数が減少し、深刻な少子化が起こっている[41]。また、一般に欧米の家族では夫婦愛が最も重要であるのに対し、日本の家族愛は母性愛がその柱となっているとされる[42]
一家団欒

家族で一緒に食事をしたり談笑するなどしてなごやかに過ごすことを一家団欒と呼ぶ。こうした一家団欒は家族内のコミュニケーションの重要な手段であり、子供の心身の発達において良好な効果を上げることが判明しているため、教育面の視点などから広く推奨されている[43]

ただし、こうした家族での共食と一家団欒の思想が日本で成立したのは、明治時代中期にキリスト教の影響を強く受けた近代家族像が成立してからのことである。一家団欒は修身教育を通じて推奨され、主婦の専業化やちゃぶ台の普及によって徐々に広まっていったものの、定着したのは非常に遅く、日本では第二次世界大戦後のこととされる[44]
家族旅行

戦前から家族旅行は比較的裕福な市民において行われていたが、戦後の高度成長期には裾野が広がり、庶民の家庭においても家族で旅行することが定着した。社団法人日本旅行業協会が公表した統計では、『成人するまでに20回以上、つまり平均して年に1回以上家族旅行に行った人は、「我慢強い」「思いやりがある」「協調性がある」「社交的である」等、周囲とのコミュニケーションや気配りに長けている傾向が強い』という結果となっている[45]
家族に関するメディア報道[ソースを編集]

一部の家族が機能不全状態にあるという意識の広まりと共に、家庭でのドメスティックバイオレンス児童虐待などの事件がマスメディアを賑わすことが日常化している。これらの問題はどの時代にもあり、件数的には現代ではむしろ減少しているが、報道は増加している。近年は家庭内の暴力を人権問題として社会問題ととらえる傾向がある。増加する高齢者人口と在宅での高齢者看護などと共に、家族をめぐる社会問題が報道されている。

家族をめぐるメディア報道においては、現代の離婚件数が昔より増加しているかのような言論や(明治期の離婚は現代の1.5倍の件数であった)、「家族の終焉」といった、歴史的に見て適切ではない言説がなされる場合がある[46][47]。ただし、離婚率は1960年から緩やかに上昇傾向に入り、2000年まで増加し続けた。それでも世界的に見れば日本の離婚率は2006年時点でもかなり低位となっている[48]
新しい家族関係についての提唱[ソースを編集]
1950年代のニュー・ファミリー・センターによる提唱[ソースを編集]

1950年、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) 渉外局長エコルス大佐の夫人ナンシーの開く自宅パーティーにおいて若い世代の民主主義を履き違えてることが話題に上り[注 1]、そこで正しい家庭の民主化が提唱され、1951年2月にニュー・ファミリー・センター (N・F・C) が設立された[49][50]

ニュー・ファミリー・センターは戦後の日本人の青年を自尊心がなく、西洋の良いところだけでなく悪いところも真似をすると批判し、日本の美徳を取り戻させようとするものであった[51]。また家庭の民主化では自由の代わりに責任も生まれ、主婦は今までの内助の功だけでなく外助の功まで求められるようになるとし[52]井戸端会議を止めて買い物や洗濯と社交を分離し、社交を談話会や討論会へと発展させることを提唱した[53]。また親子関係では友達親子を理想としたとされる[54]
1970年代のニューファミリー[ソースを編集]

1970年代頃にはニュー・ファミリーという用語がマーケティング業界を中心に使われるようなった[55]。これは60年代の消費欲旺盛なヤングが結婚して70年代のニュー・ファミリーになるという説であり[56]、ニューファミリーは友達夫婦であることが想定されていた[55]

1972年には百貨店の丸井がニュー・ファミリー向けの展開を行った[57][58]ほか、1977年には女性誌でも「an・an」「non・no」「JUNON」の上位誌としてニューファミリーをメインターゲットに据えた「クロワッサン」「MORE」「ARURU」が登場した[57]

しかしながら同1977年には丸井が展開をニューファミリーからニューヤングへと切り替えた[57]ほか、前述のニューファミリー向け女性誌も部数が伸びず[57]、1978年には「ARURU」が休刊し[57]、「クロワッサン」も「女の新聞」へとリニューアルされ[59]、これにより「クロワッサン」はニューファミリーの女性ではなく離婚を含めたシングル謳歌を広めていくこととなった[60][59]


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