上記のように、かつて家族は社会の基礎構成単位として広汎な機能を持っていたが、社会の発達による機能分化に伴って諸機能が外部化され、家族の機能は大幅に縮小しつつある[6]。一方で、生産機能は失ったものの生活共同体としての家族の機能は失われているわけではなく[7]、また教育的機能についても学校などの外部教育機関で長期間の教育が不可欠となる一方、子育ては依然として家族の中心的機能の一つであるばかりか、一家族あたりの子供の数の減少に伴い、家族内での比重はむしろ増しつつある[8]。現代家族の機能については性的機能・生殖機能・教育的機能・経済的機能の4つに限定するものから、さらに縮小した機能を想定するものまでさまざまな理論が存在する[9]。
ライフサイクル[ソースを編集]
家族にもライフサイクルがあり、そのステージに応じて達成すべき発達課題がある。
家族のライフサイクル[10]発達段階発達課題
1どの家庭にも属さない、ヤングアダルト
家族から分離して自己を確立する
親密な同年代と仲間関係を持つ
職業上で自己を確立する
2結婚による家族の誕生
夫婦関係を形成する
互いの実家、友人関係と関係を再構築する
3幼い子供を持った家族
子供たちのために、夫婦は心理的物理的空間をつくる
親としての役割を務める
祖父母=孫関係を含めた拡大家族を構築する
4思春期の子供を持った家族
子供らが家庭の内外を自由に出入りすることを受容する
中年夫婦は、夫婦関係、人生職業上の課題を乗り越える
老年世代を配慮する
5子供たちの脱出と出立
夫婦関係を再構築する
成長した子供たちと父母は、互いに大人同士として付き合う
義理の子供と孫たちを含めた拡大家族を再構築する
父母は、祖父母の心身の障害、死別に対応する
6人生の晩年を送る家族
社会的・肉体的衰退に対応し、夫婦関係を再構築する
中年世代へ、中心的な役割を譲り渡す
年長者としての知恵と経験を活かし、孫たちに対してよい祖父母になる
配偶者、同胞、同世代の仲間の死別に対応する
家族の類型[ソースを編集]
定位家族と生殖家族[ソースを編集]
人々はその多くの割合が、その生涯で次のような2種類の家族とかかわる[1]。
自分が子供として生まれ育った家族 (定位家族 family of orientation)[1]
自分が結婚して新しくつくる家族 (生殖家族 family of procreation)[1]
ただし近年の先進諸国(西欧・北欧、アメリカ、日本など)では、定位家族から離れた後は一人暮らしを続け、生涯結婚せず上の2番目に挙げた「生殖家族 family of procreation」を1度も経験しないまま生涯を終える人の割合(生涯未婚率)が増加している。たとえばアメリカで2018年の統計で35%に到達している[11]。日本も生涯未婚率が2023年の推定値で男性が28.25%、女性が17.85%に達している[12]。
核家族と拡大家族[ソースを編集]核家族、アメリカ(1970年代)
家族はその成員によって、核家族と拡大家族とに分類される。「核家族 / 拡大家族」という分類法は、アメリカの人類学者ジョージ・マードックが用いた用語「nuclear family / extended family」という分類用語の訳語である[1]。
核家族 - 夫婦のみ、または未婚のその子供によって構成される家族形態である[13]。夫婦どちらか片方のみと未婚の子供によるものもこれに含まれる。
拡大家族 - 核家族よりも多い成員から構成される家族であり、長男など家系を継ぐ子供の家族にその親が同居する直系家族や、両親と複数の子どもとその家族が同居する複合家族などが含まれる。
なお上の「核家族 / 拡大家族」という分類は一夫一婦制の場合に限られ、複婚が行われる場合は複婚家族という別の区分となる[6]。
なお上で挙げた家族形態は時代や文化によって千差万別であり、一つの文化内においてさえ一般的なモデルは存在するもののすべて同じスタイルの家族というわけではない。日本では戦前までは直系家族が基本的な家族モデルとして想定されていたものの、戦後(第二次世界大戦後)は核家族へと移行した。しかしすべてが核家族というわけでは当然なく、直系家族や大家族の家族も存在する[14]。しかし日本も含め、世界的に社会が発展するに従って家族の規模は縮小する傾向にあり、19世紀にはほとんどの国で1世帯の平均人員は5人前後だったものが、20世紀末には先進国では2.5人前後にまで減少した[15]。