家族法
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このように、日本で相続法も含めて家族法として理解されるようになったのは、以下の要因があると考えられている[3]

日本国憲法施行される前の日本民法は、人事や身分を規定する親族法は家制度を主としているが、一方で財産の所属を規定する相続法も家督相続を主とした制度を採用していたため、両者は家という概念を通じて不可分の関係にあり、両者を統一的に把握するのが自然であったこと。

日本固有の「家」制度の存在ゆえ、旧民法の起草に当たっては、現行法の親族法および相続法に相当する部分は、フランス人のボアソナードには起草させず、日本人が起草したこと。

現行民法については、第1編から第3編までが明治29年法律第89号の別冊として定められ、第4編及び第5編が明治31年法律第9号の別冊として定められたこと。

中川善之助により身分行為という概念が提唱され、家族法における法律行為については財産法とは異なった法原理が妥当するという考えが支配的になったこと。

以上のような要因から、親族法と相続法の上位概念が生まれる余地があったが、日本国憲法の施行日と同日に施行された日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第74号)の施行により「家」制度が廃止され、現在では親族法と相続法との不可分性が希薄になった。また比較法の観点からも、親族法と相続法とを一体として捉えることは異例であるとして、大村敦志などを中心に、親族法に相当する部分のみを家族法と呼ぶべきとする見解も有力に主張されている[4]

これに対し、家族法に相続法を加えるべきとする少数説は、モンテネグロ一般財産法の起草者ヴァルタザール・ボギシッチなどによって唱えられている[5]。旧民法以来の日本法の立場は、日本政府に対するボギシッチの助言を容れたものである[6]

なお日本法において、家族法という語は比較的新しい用語である。本来は、民法典成立以前から存在した身分法の語を用いるのが一般的であったが[7]、「身分」という語が前近代的な士農工商などの社会階級的な意味での身分を連想させるため、第二次世界大戦後から民主化を目指してきた日本においては家族法の語が多く用いられるようになったのである[8]。また、立法資料によれば、日本民法典の編成において範を採ったドイツのザクセン民法典は、親族編と相続編を一体とする身分法として、財産法の後に置くことが指摘されている。フランス民法典等と異なり、あくまで身分関係よりも個人意思に基づく契約による権利義務の変動を中心に捉えるべきという近代個人主義思想に基づく[9]。ドイツ民法草案も同じ思想に基づくものと理解されている[10]
家族法をめぐる状況

時代の変化に伴い家族の在り方も常に変化しており、法的安定の要請(法規範が常時変転すると社会生活を送る上での判断基準が不安定になり、自由な行動を阻害してしまうおそれがあるから、法規範を変更することには慎重でなければならないという発想)と社会情勢の変化との衝突が最も鮮明に現れる法分野の一つともいえる。例えば、選択的夫婦別姓制度の導入は、男女共同参画などの観点から早期の導入を求める意見があるが[11]、その一方で現行制度の維持を望む声も一定程度存在し[12]、導入の是非について議論が行われている。
脚注^ 星野英一『家族法』放送大学教育振興会、1994年、13頁
^ 鈴木禄彌『相続法講義 改訂版』創文社、1996年、337頁
^ 内田貴『民法IV 親族・相続』東京大学出版会、2002年、6頁
^ 大村敦志『家族法』有斐閣、1999年、13頁
^ バルタザール・ボギシッチ、難波譲治訳「モンテネグロ民法典について その制定について採用された原則及び方法に関する小論」『政法論集』10号、京都大学教養部法政学会、1990年、83-85頁
^ 岡孝「明治民法起草過程における外国法の影響」『国際哲学研究』別冊4号 法の移転と変容、東洋大学国際哲学研究センター、2014年、25-28頁
^ 穂積陳重『法典論』第三編第四章(哲学書院、1890年、新青出版、2008年)
^ 裁判所職員総合研修所『親族法相続法講義案』6訂再訂版1-2頁(2007年、司法協会)
^ 前田達明『口述債権総論』第3版7頁(成文堂、2003年)
^ 松波仁一郎=仁保亀松=仁井田益太郎合著・穂積陳重=富井政章=梅謙次郎校閲『帝國民法正解』1巻19-20頁(日本法律学校、1896年、復刻版信山社、1997年)
^ 民法改正を考える会『よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて』朝陽会、2010年
^ 内閣府 家族の法制に関する世論調査2006年(平成18年)12月

関連項目

大韓民国の家族法

民法

夫婦別姓

相続

外部リンク

『家族法
』 - コトバンク










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