宝冠章
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例外として、明治天皇の生母である中山慶子と、大正天皇の生母である柳原愛子に勲一等宝冠章が授与されているが、共に天皇の生母という立場であり、なおかつ国家より皇族に準ずる扱いを受けた者であるため、日本の一般女性で宝冠大綬章(勲一等)を授与された者は現在に至るまで存在しない。

日本の一般女性が授与された宝冠章の最高位は勲二等宝冠章で、奥むめお(元参議院議員1961年(昭和36年))ら女性政治家や、中根千枝社会人類学者、1998年(平成10年))ら、勲四等宝冠章の授与としては芸人の内海桂子(1995年(平成7年))ら社会的活躍の著しい女性に授与された事例がある。勲一等に相当する勲章は1965年の中山マサのように男女共に授与された唯一の勲章である瑞宝章が授与されており、女性政治家においても宝冠章の勲一等は直接の縁が無かった。このような叙勲における男女不平等が、後述する栄典制度改革へとつながった。

儀礼による叙勲以外でも、日本国に対して功労のあった外国人に授与された事もある。例としては、皇太子明仁親王などの英語教師を務めたヴァイニング夫人の勲三等宝冠章授章がある。また特筆すべき例としては、元イギリス首相マーガレット・サッチャーが勲一等宝冠章を授与されたことが挙げられる。外交儀礼による交換ではなく、純粋に個人の功労が評価されて大綬章(勲一等)が授与された非常に希な事例である[注釈 1]

2003年(平成15年)の栄典制度改正以降は、旭日章桐花章及び菊花章が男女の隔てなく公平に授与されることとなったため、日本人に対しても、外国人に対しても、功労の評価による宝冠章の通常運用は行われなくなった。同年に勲一等格の勲章を叙勲された女性として扇千景赤松良子がいるが、いずれも旭日大綬章を授与されている。

現在でも国家の正式な勲章の一つとして存続しているが、女性皇族や外国人女性賓客などを対象とした非常に限定的な運用がなされている。
外国人に対する儀礼的叙勲での運用勲一等宝冠章を佩用した満州国皇后婉容

現在では、国賓の来日や皇族の外遊などの際に儀礼的に勲章を交換する儀礼叙勲に用いる勲章として限定した運用がなされている。

このような儀礼叙勲のほとんどの場合は宝冠大綬章(旧:勲一等宝冠章)が用いられ、皇帝国王大公首長大統領など「国家元首かそれに相当する人物の正式な女性配偶者」が対象になる。従って皇后王妃、などの王族身位を持つ者がほとんどであるが、大統領夫人(ファーストレディー)等の国家元首の配偶者には平民である者にも授与される。

また王室を持つ君主国の場合、王女内親王(英:Princess)などの身位を持つ多くの女性王族は宝冠大綬章(旧:勲一等宝冠章)の授与対象となる。(君主との親等が遠い場合には勲一等瑞宝章などを授与する場合もある)外国王室の女官や政府高官などにも二等、三等などの宝冠章が授与されているのが昭和天皇訪欧の写真集などで確認できる。

1882年(明治15年)2月、当時ハワイ摂政リリウオカラニには、勲一等旭日大綬章が授与されたが、女性への授与を想定しない勲章のため例外的措置だった[1]。その後、リリウオカラニが女王に即位してから、1892年(明治25年)3月に勲一等宝冠章が授与された。このように、制定初期は女王などの元首の称号を有する女性でも一律に勲一等宝冠章が授与されていた。授賞の実例として、リリウオカラニとオランダ女王ウィルヘルミナの二例がある(後掲の表を参照)。

女性国家元首に対する叙勲基準は比較的早期に改定され、「女王」など元首身位を女性が有している場合は、旧制度時代から現在に至るまで、宝冠章ではなく大勲位菊花大綬章以上の勲章が授与される。授賞の実例として、エリザベス2世 (イギリス女王)、マルグレーテ2世 (デンマーク女王)コラソン・アキノ(フィリピン大統領)などがいる。

近年では皇太子・王太子等の推定相続人としての称号を持つ女性王族(王太女)に対しても菊花章が授与されるようになった。授賞の実例として、スウェーデン王太女ヴィクトリアなどがいる。

逆に、元首である女性君主や皇太子・王太子などの身位を持つ女性の正式な男性配偶者王族である場合は大勲位菊花大綬章が授与される。授賞の実例として、デンマーク女王マルグレーテ2世の配偶者であるヘンリク (デンマーク王配)、イギリス女王エリザベス2世の配偶者であるフィリップ (エディンバラ公)などがいる。
女性皇族に対する叙勲勲一等宝冠章(現:宝冠大綬章)を佩用した香淳皇后勲一等宝冠章(現:宝冠大綬章)を佩用した上皇后美智子。「身位#叙勲」も参照

皇室典範の法体系に属する「皇族身位令」(明治43年皇室令第2号→昭和22年廃止)では、皇族女子及び婚姻により皇族となった女性の叙勲について、下記の通り定められていた。


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