初等解析学において定数は、そこで扱う演算によっていくつか異なる扱いをされる。例えば微分において、定数函数の導函数は零函数である。これは取りも直さず、微分係数が函数のある変数に関する変化率を測るものであって、定数函数は定義により変化をしないものなのだから、導函数が零であるのは必然である。他方、積分の場合は定数函数の原始函数において、その定数函数の値は積分変数に掛かる係数になる。極限の評価においては、定数は評価の前後で変わらず同じ値のままである。
)が含まれる。これが生じるのは不定積分が微分して得られる函数の原函数を恢復することを目的とするという意味において微分の逆演算になっているという不定積分の性質によるものである。既に注意したように定数函数の微分は零函数であり、微分演算は線型作用素であるから、定数だけしか違わない任意の函数同士は同じ導函数を持つ。このことの重要性を顕示するために積分定数は不定積分に加えられ、それにより可能なすべての解函数を表すことが保証される。積分定数(一般に C と書かれる)は、それが固定されているが未知 (fixed but undefined) の値であるものという意味での「定数」を表している。