官僚
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中央官庁で勤務する官僚は、国会対応に追われ、連日の庁舎泊まり込みや月150時間ほどの時間外労働が常態化しており[8]残業を終えると深夜になることも珍しくないため、霞が関には午前1時でもタクシーが行列を作っている[9]。特に労働政策を所管する厚生労働省は、残業時間の長さから『強制労働省』と揶揄されていることから、長時間労働の抑制対策に乗り出している[10]

しかしながら、2020年12月25日河野太郎規制改革相による記者会見より、「霞が関がブラック化している」と危惧して2020年の10月と11月に調査した在庁時間調査[11] より、霞が関で働く国家公務員の全体の5?6%が人事院が定める超過時間の上限の月100時間を超えていた。更には、過労死ラインにあたる月80時間超えは11?12%、45時間超えは35?36%も在庁つまり時間外残業を行っていた実態が明らかとなった[11][12][13]。その要因として、内閣人事局によると、前述にもあるように国会議員の質問への対応や政策の企画立案、予算編成作業が挙げられた[14]

特に20代のキャリア(I 種・総合職)職員は特に深刻であり、100時間を超えた者は17?18%、80時間超えは20代キャリア職員全体の約3分の1、45時間を超えた者を含めると約3分の2を占めた。平均在庁時間も全体で約2時間であるのに対して、20代キャリア職員は約3時間と1時間長く、若手キャリア職員に仕事の荷重が多く圧し掛かっている[11][13][14]

そのため、在職10年未満のキャリア職員の退職が年々増加しており、2013年度の76人から2019年度の109人と約1.4倍に増加していた。特に、2018年度以降は在職10年未満のキャリア職員の退職者が100人を超えている[15]

また、退職の意向を持っている30歳未満の国家公務員の内、長時間労働を理由としたものが男性が約34%、女性で約47%であり、規制改革大臣河野太郎は2020年11月18日に自身のブログにて、このことについて問題提起した。そしてブログ内には、国家公務員の総合職を目指す者が減少していることにも触れており、申込者のピークである1996年の45,254人から2022年には18,295人と前年(17,411人)より増加しているもののピークの約40%に減ってきており、長時間労働が公務員採用に負の影響を及ぼしている[16][17][18]

また、2020年秋ごろに行われた在庁時間調査による結果は、以下の通りであり、30代以下と40代以上と I 種・総合職とそれ以外の職種で明確な差があった。また、この調査より、令和2年度臨時国会での全ての国会議員質問等の終了時間に当たる最終通告時間が正規の業務終了時間を過ぎたケースが約3分の2に上ること、その内の約55%が20時過ぎとなっていることが判明している[11]

霞が関で働く国家公務員(課室長級の管理職職員含む)の正規の勤務時間外在庁時間別の職種・年齢別内訳
(2020年10月・11月)[11]正規の勤務時間外
在庁時間内訳月別職員数(人)
全体20代かつ
I 種・総合職I 種・
総合職U・V種
一般職
専門職・
その他20代
以下30代40代50代60代
以上
50,682約270011,46725,35913,8568,85914,58816,8629,384989
45時間超10月18,6801,7885,1068,1275,4474,1386,6615,9631,86058
11月17,4991,7725,0257,5674,9074,0966,2535,4741,62452
80時間超10月6,2478862,2082,2831,7561,6462,3651,83938710
11月5,5228412,1181,9801,4241,5332,1521,5133204
100時間超10月2,9404721,1329468628001,1957961472
11月2,6174521,1178436577611,0516821203




在庁時間は、職員が正規の勤務時間外に在庁した時間である。
具体的に、登庁してから正規の勤務開始時間までと勤務終業時間から退庁までの時間の合計である。
また、土日祝日の出勤やテレワークでの正規の勤務時間外も含んでいる。

在庁時間45時間超は、80時間超と100時間超も含まれている。80時間超も同様に100時間超も含まれている。

20代かつT種・総合職職員の職員数(全体)は、概数である。


霞が関で働く国家公務員(課室長級の管理職職員含む)の正規の勤務時間外在庁時間別の職種・年齢別内訳の割合
(2020年10月・11月)[11]正規の勤務時間外
在庁時間内訳月別割合(%)
全体20代かつ
I 種・総合職I 種・
総合職U・V種
一般職専門職・
その他20代
以下30代40代50代60代
以上
45時間超10月36.96544.532.039.346.745.735.419.85.9
11月34.56443.829.835.446.242.932.517.35.3
80時間超10月12.33219.39.012.718.616.210.94.11.0
11月10.93118.57.810.317.314.89.03.40.4
100時間超10月5.8179.93.76.29.08.24.71.60.2
11月5.2189.73.34.78.67.24.01.30.3




在庁時間は、職員が正規の勤務時間外に在庁した時間である。
具体的に、登庁してから正規の勤務開始時間までと勤務終業時間から退庁までの時間の合計である。
また、土日祝日の出勤やテレワークでの正規の勤務時間外も含んでいる。

在庁時間45時間超は、80時間超と100時間超も含まれている。80時間超も同様に100時間超も含まれている。

20代かつT種・総合職職員の割合は、少数1桁を四捨五入している。


上記の調査とは別に人事院事務総局職員福祉局が2024年3月26日に発表した「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等(令和4年度)について」[19]によれば、2022年度内に時間外勤務の上限を超えて超過勤務を命ぜられた国家公務員一般職は全体の約10%であり、霞が関(本府省)での場合は約26%と跳ね上がる。また、2022年度内に1か月100時間以上の時間外勤務を行った他律部署で働く職員は全体で約7%であり霞が関の場合は約14%となる。

国家公務員一般職(課室長級の管理職職員含む)の超過勤務を命ぜられた職員の割合の内訳(2022年度)全体他律部署自律部署
全体上限基準別全体上限基準別
1月100時間未満年720時間以下2?6月平均80時間以下月45時間超は年6回まで1月45時間以下年360時間以下
全体(%)9.9167.4710.5137.76.94.6
本府省(%)25.528.513.51319.123.315.313.99.7
本府省以外(%)6.63.31.10.91.72.57.26.54.3


年度末定員の総数を100とした場合の割合である。

他律部署とは、他律的業務の比重が多い部署のことである。
なお、「他律的業務」とは、業務量、業務の実施時期その他の業務の遂行に関する事項を自ら決定することが困難な業務をいう。

自律部署とは、各省各庁の長が他律部署と指定されていない部署のことである。

中央官庁の官僚だけでなく、自衛隊等も含めた国家公務員で見た場合、2023年は約49万人(休業者を除く)の内約4万人が週60時間以上労働しており、比率にして約8.2%(週労働35時間以上の者に限れば約9.5%)である。更に49時間以上の者も含めた場合、約10万人となり約20.4%(週労働35時間以上の者に限れば約23.8%)となる[20]
地方公務員の場合は約119万人中約11万人が週60時間以上労働しており、比率にして約9.2%(週35時間以上雇用者に限った場合は約11.5%)であり、49時間以上の者も含めた場合、約21.8%(週労働35時間以上の者に限れば約27.1%)となり、国家公務員より高くなる傾向にあった[20]

公務員全体で見た場合、後表の業種別で見た週労働60時間以上の割合は、2007年以降微減しているものの、週労働40時間以上の労働者に限れば12%前後で推移しており、他の業種が減少している中で、時間外労働の縮減が進んでいない現状がある。また、労働者全体では2007年は9業種が公務員より長時間労働の割合が多かったが、2023年は2業種と減少しており、河野太郎の言葉を借りれば、「公務員が相対的にブラック化している」現状がある。
アメリカ合衆国

高級官僚は、基本的に大統領が、職業公務員以外から指名する猟官制度で、大統領の交代と共に入れ替わる。職業公務員は課長クラスまでしか昇進しない。
フランス

フランスの官僚制は、メリット・システムスポイルズ・システムの折衷型である。日本以上にキャリア選抜が険しく、また日本以上に激しい官僚政治の国家としても知られる。高級官僚は、政治家の意向によって、キャリアの中から選抜される。官僚の社会的地位は日本より高い。

事務官キャリアは国立行政学院(ENA)、技官キャリアはエコール・ポリテクニーク卒業生で占められる。ENA卒業生の人数は極めて少なく、毎年わずか数十名程度である。エコール・ポリテクニークも定員は百名程である。
ドイツ

元々日本のキャリア制度は、ドイツの公務員システムを参考にして作られた。しかしその後の歴史的経緯から、ドイツはフランスと同様にメリット・システムと、スポイルズ・システムの折衷型に落ち着いた。

公務員は「官吏」(いわゆる官僚)と「職員・労働者」で構成される。官吏の中で政治的官吏(高級官僚)は、キャリアの中から政治任用される。キャリアになるためには、大卒後2年の準備勤務を経て高級職ラウフバーン試験に合格する必要がある。高級職ラウフバーン(Laufbahn)試験は司法試験も兼ねており、合格すると弁護士になることもできる。
イギリス

日本と類似したメリット・システムによるキャリア制度となっている。試験名の日本語訳によっては、高等文官試験と表記されることがある。1855年に開始。インドの高等文官試験に影響を与えた。
インド

イギリスとほぼ同様のシステムとなっている。


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