宗教法
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ブラジル人のカノン法の専門家エドソン・ルイズ・サンペルによれば、カノン法はヨーロッパ大陸ラテンアメリカの法のような多くの市民法の研究機関の誕生に含まれているという。カノン法は現代社会に大きな影響を与えているとサンペルは言う。

近年では、全てのラテン典礼カトリックの神学校の学生はカノン法(c. 252.3)を学ぶ過程を履修することを期待されている。教会職員の中には、職務を果たすために教会法博士か、少なくとも教会法有資格者であることを要求される者もいる(Judicial Vicars (c. 1419.1), Judges (c. 1421.3), Promoters of Justice (c. 1435), Defenders of the Bond (c. 1435)など)。さらに、司教総代理と監督代理はカノン法もしくは神学の博士であるか少なくとも有資格者であり(c. 478.1)、canonical advocateはカノン法の博士であるか真に専門家でなければならない(c. 1483)。通常、司教は聖典、神学、あるいは教会法に関して高い学位を持っていることになっている(c. 378.1.5)。スペインドミニコ会の聖職者ライムンドゥス・デ・ペンナフォルテ(1175年?1275年)はカノン法学の分野で重要な功績をあげたためカノン法学者の守護聖人となっている。
東方正教会

東方ギリシア世界の正教会は『ペーダリオン』(ギリシア語: Πηδ?λιον、舵)という名の下にカノンや註釈の集成を作成した。この名の由来はペーダリオンが教会を操舵するという所にある。正教会では伝統的に概してカノンを法というよりむしろガイドラインとして扱っており、主教たちは文化的な状況やその他の個別的な状況に合わせてカノンを適宜修正してきた。公会議(ギリシア語を使って熟議された)でカノンが法として使われることを予定していたならば我々はそれをカノン(ギリシア語: καν?νε?、規則)ではなくノモイ(ギリシア語: ν?μοι、法)と呼んでいたであろうが、実際にはほとんどの正教会ではカノンと呼んでいると指摘する正教会法学者もいる。しかし公会議における教義決定はガイドラインとして使われるよりもむしろ強制されるものである、というのは教義は教会が一致する上で不可欠なものだからである。
聖公会

英国国教会では、かつて結婚・離婚・遺産相続・名誉棄損といった多くの問題を扱っていた教会裁判所が、今日でも教会に関係するある種の問題(例えば、聖職者の守る規則、教会財産の変更、その他教会構内に関係のある事柄)に関する法を制定している。こういった独立した地位の起源はサクソン人によって利用された世俗・教会が入り混じった領土・裁判所をノルマン人が分離した12世紀にまで遡る。イングランドの他の法廷と対照的に教会の問題に適用される法は少なくとも部分的には大陸法の体系であって英米法ではなかったが、議会で制定された法の支配を強く受けていた。英国宗教改革以降、イングランドの教会裁判所は王立裁判所となった。オックスフォード大学及びケンブリッジ大学で教授されていたカノン法はヘンリー8世によって廃止された。それ以降教会裁判所で働く人々は大陸法の教育を受け、オックスフォードで大陸法博士を授与されるかケンブリッジで法学博士を授与されるようになった。こういった法律家(「博士」あるいは「シビリアン」と呼ばれる)はロンドンセント・ポール大聖堂の南にあるいくつかの通り、いわゆる「ドクターズ・コモンズ」の中心に住んだ。そこで彼らは遺言検認・結婚・海事といった問題を、19世紀半ばに立法権が英米法の裁判所に奪われるまで独占していた(海事法は英米法ではなく大陸法に基づき続け、シビリアンたちの職掌であり続けた)。

チャールズ1世はかねてよりムチャルズ城での会議に続いてのアバディーン司教団やその他のスコットランド中での反乱に直面しており、カヴェナンターの反乱の後1638年にカノン法を廃止した。

聖公会に属するその他の世界中の教会(例えば米国聖公会カナダ聖公会)はそれぞれ独自のカノン法の下に活動している。
長老派・改革派教会詳細は「長老制」を参照

長老派・改革派教会では、カノン法は「実務と手続」あるいは「教会の規則」として知られており、教会内の政治、規律、法的活動、信仰に関する教会の法を含む。
ルター派

コンコルディア』はルター派の歴史的な教義表明文であり、16世紀以降のルター派で権威を認められた10の信条より成る[6]。しかし、『コンコルディア』はカノン法とは違って教会の規則・規律の書というよりもむしろ(正統派信仰を述べた)信仰告白文である。各国のルター派教会はそれぞれ独自に教会の規則・規律を定めているが、これが「カノン」として言及される。
合同メソジスト教会

4年ごとに改定される『規律書』に合同メソジスト教会の法・規則・方針・ガイドラインが記されている。最新のものは2008年版である。

キリスト教のいくつかの教派では、律法はしばしば恩寵と対比される。律法と福音(英語版)を参照。ここでこの対比は、十字架上のイエスの贖罪に対する信仰を通じた救済を求めることに対して律法を遵守することによって救済を得ることについて言われる傾向がある。律法主義(英語版)、反律法主義(英語版)を参照。「カエサルのものはカエサルに」および「en:Letter and spirit of the law」も参照
イスラーム「シャリーア」および「フィクフ」、「ムタワ」、および「バシジ」を参照

シャリーア」はイスラーム神聖法(アラビア語: ????? ??????‎ q?n?n ?Isl?m?)としても知られており、イスラームの倫理規定・宗教法である。シャリーアは主に二つの法源に由来し、教訓は『クルアーン』と、スンナに見られるイスラームの預言者ムハンマドの慣行集に掲げられている。イスラーム法学(フィクフ)では第一法源で解明されていない問題に対して、第二法源を含めることでシャリーアを解釈し、適用範囲を広げる。この第二法源には大抵、ウラマー(神学者)の合意つまり「イジュマー」と「キヤース」を通したクルアーン・スンナからの類推が含まれる。シーア派法学者は難しい問題を解明する上で類推に頼るよりも「アクル」すなわち推論を行うことを好む。

ムスリムはシャリーアを「神の法」だと信じているが、この信仰が実際に何を伴うかに関してはムスリムの間でも違いがある[7]。イスラームの異なる学派に属するもののように、近代主義者、伝統主義者、原理主義者はシャリーアに関してそれぞれ異なる考えを持っている。異なる国・社会・文化でも同様にシャリーアに対して異なる解釈がなされる。

シャリーアは刑事・政治・経済といった世俗法が扱う多くの問題に加えて、性的関係、公衆衛生、食生活、礼拝、断食といった個人的な問題をも扱う。シャリーアが公的地位を得ている場所では、カーディーと呼ばれる裁判官によってシャリーアが適用される。


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