他種の公益法人と異なり、宗教法人法では「現に反社会的勢力に所属している、または離脱してから一定期間が未だ経過していない」ことを役員就任の欠格事由に定めていない。この状況について、地域内に大規模な暴力団を抱える福岡県や兵庫県その他の合わせて9県が、「脱税やマネーロンダリング目的で休眠状態の宗教法人を乗っ取り、悪用する懸念がある」として宗教法人の役員資格にも暴排条項を織り込むよう内閣府に提言しているが、内閣府は「少なくとも最近10年間で実例が無く、規定を設けても実効性に乏しい」として、具体的な対応を行っていない[3]。これに対し近畿大学の田近肇教授は「暴力団員にも信教の自由はあるが、法人役員の欠格事由に暴排規定を追加するための足かせにはならない」と主張し、暴排条項の新設は暴力団員個人としての信教の自由を侵害する理由にならないと指摘している。[4] 宗教法人は、規則認証や合併による設立時に財産目録を、また毎年の会計年度が終了してから3カ月以内に財産目録と収支計算書を作成しなければならない(法第25条第1項)。また、信者及びその利害関係者から当該書類の閲覧を求められた際に、要求が不当な目的を伴っているものと認められない限りは、請求を拒絶できない(法第25条第3項)。 さらに、収益事業を行っている場合や、年間の総収益が8000万円を超えている場合は、収支計算書を税務署にも提出しなければならない(租税特別措置法第68条の6)。 但し、以下の全ての条件を満たす法人に限っては、収支計算書の作成が当面の間に限り任意となる(宗教法人法附則第23号、平成8年9月2日文部事務次官通達)。これは、収支計算書の提出義務が平成8年度の宗教法人法改正によって新設されたものであるため、法改正以前から存在する法人に配慮した経過措置としての意味合いがある。 なお、貸借対照表の作成は全ての宗教法人において任意と扱われるが、財産目録に資産及び負債が記載されているため、実務上は財産目録で代用される。 このうち、2、3、4、6については、会計年度終了から4ケ月経過するときまでに、その写本等を所轄庁に提出しなければならず(法第25条第4項)、正当な理由なくこれを怠った場合は、宗教法人の代表機関(代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人ら)は、10万円以下の過料に処せられる(法第88条第5項)。 所轄庁は提出された書類の取り扱いに際して、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない(法第25条第5項)。 所轄庁は、以下に該当する場合は、宗教法人審議会の意見を聞いた上で、当該宗教法人に対し報告を求め、又は所轄庁の職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる。所轄庁の職員が質問するために当該宗教法人の施設に立ち入るときは、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者の同意を得なければならない(法第78条2第1項)。 所轄庁は報告徴収・質問に際して、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない(法第78条2第4項)。また報告徴収・質問は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない(法第78条2第6項)。 所轄庁が宗教法人に報告を求め、また質問した際に、当該宗教法人が報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、また所轄庁の職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合は、宗教法人の代表機関は、10万円以下の過料に処せられる(法第88条第10項)。 宗教法人は、任意に解散することができるほか(法第43条第1項)、以下の事由が発生した場合に解散する。 裁判所は、以下の事由に該当する宗教法人に対し、所轄庁・利害関係人・検察官の請求または裁判所の職権に基き、解散を命ずることができる(法第81条)。 文化庁宗務課は『宗教年鑑』を発行しており、これは日本国内における宗教法人の動静を説明する唯一の公的機関資料である。以下のとおりの三部構成が取られている。 平成7年版(1995年)以降の発行分は文化庁のホームページからダウンロードできる。なお、平成26年版(2014年)以降は冊子媒体での頒布を行っておらず、ダウンロードのためのページを設定することによって公開としている。 宗教法人は統計上、神道系・仏教系・キリスト教系・諸教に分類される。「諸教」とは、それ以外の3つに分類されないあらゆる宗教(例えば、イスラム教(宗教法人日本ムスリム協会)など)のことである。ただし、これらの分類は当該宗教法人からの届けに基づくものであり、いずれかの宗教の影響を強く受けているにもかかわらず「諸教」に分類されているものも少なくない。 宗教者は、「宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職等で修行中の者、信者であって何等の給与を受けず奉仕する者等は労働基準法上の労働者ではない」[6]を根拠とし、一般の企業の労働者と同様に労働契約に基づき賃金を受ける場合を除いては雇用保険及び労災保険のいずれからも除外される。一方で当該通達は、具体的な労働条件等を一般企業と比較し個々の事例について実情に即して判断することも求めているため、同じ法人に属する他の宗教者から儀式の執行や布教活動に関し恒常的に指揮命令を受けている場合において労働紛争が生じた際、紛争の当事者に労働者としての権利がある前提で対処すべきかが曖昧な状況となる。 宗教法人とは宗教法人法第2条に謳われているとおり、「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を強化育成することを主たる目的とする宗教団体へ法人格を与えたもの」であり、宗教、公益活動を団体として常時行っていることが鉄則である。さらには宗教法人法などのとおり、所轄庁等へ毎年活動実態などを報告する義務もあるが、ここ数年間、無報告や不活動な宗教法人が倍増している(2004年以降)。 中には、インターネット上で堂々と宗教法人の法人格が売買されるケースもある[7][8]。 そこで、宗教行政の主管である文部科学省や文化庁は、法第81条などに基づき「不活動宗教法人」の合併や解散を進めるよう都道府県や自治体、各宗教法人へ指導しているが、地域の長い伝統風習や人情、数々な諸事情により合併や解散へは多くの困難が伴って長丁場となっている[9]。 政教分離原則は次の3項の禁止を定める。
法律的能力
権利能力
宗教法人は法令の規定に従い、規則で定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う(法第10条)。人格権は持たないとされるが、名称権や名誉権、精神的自由権などは宗教法人が享有でき、また、財産権については権利能力を具備しているため、宗教法人が営利企業の株主、設立時の発起人になることは可能である[5]。
行為能力
実行行為は自然人が行うため、その責任の所在を明確にするため、代表役員が行った行為が法人の目的の範囲内のものであれば、当該宗教法人が行ったものとみなされる。つまり、宗教法人の行為能力は規則に定める目的の範囲内に限定されることになる[5]。
不法行為能力
宗教法人は、代表役員その他の代表者がその職務を行うにつき第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(法第11条第1項)。宗教法人の目的の範囲外の行為によって第三者に損害を加えた場合は、その行為をした代表役員その他の代表者及びその事項の決議に賛成した責任役員、その代務者又は仮責任役員は、連帯してその損害を賠償する責任を負う(法第11条第2項)。
会計の公開
平成8年9月15日以前に法人格を取得している。
公益事業以外の事業を何ら行っていない。
年間の総収益が8000万円以内である。
宗教法人事務所への常備が義務付けられる書類等
規則及び認証書類(法第25条第2項第1号)
役員名簿(法第25条第2項第2号)
財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合の貸借対照表(法第25条第2項第3号)
境内建物(財産目録に記載されているものを除く)に関する書類(法第25条第2項第4号)
責任役員その他規則で定める機関の議事に関する書類及び事務処理簿(法第25条第2項第5号)
事業を行う場合の関連書類(法第25条第2項第6号)
報告及び質問
公益事業以外の事業の収益が、公益・宗教事業以外に使われている疑義がある
認証の取り消し事由に該当する疑義がある
解散命令の請求事由に該当する疑義がある
宗教法人の解散
規則で定める解散事由の発生(法第43条第2項第1号)
合併による消滅(法第43条第2項第2号)
破産手続開始の決定(法第43条第2項第3号)
所轄庁の認証の取消し(法第43条第2項第4号)
裁判所の解散命令(法第43条第2項第5号)
包括宗教法人における被包括宗教法人の欠亡(法第43条第2項第6号)
法令に違反し、著しく公共の福祉を害している
宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしている、または宗教団体の目的を1年以上行っていない
礼拝施設がない
代表者が1年以上いない
宗教法人の要件を満たさない(認証書を交付した日から1年を経過している場合)
宗教法人に関する統計
第1部「日本の宗教の概要」
第2部「宗教統計」
第3部「宗教団体一覧」
統計上の分類
神道系包括団体一覧
仏教系包括団体一覧
キリスト教系包括団体一覧
問題点
法人に所属する宗教者の労働者性
活動実態不明の宗教法人の急増
政教分離原則
特権付与の禁止 - 特定の宗教団体に特権を付与すること。宗教団体全てに対し他の団体と区別して特権を与えること。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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