宇宙大怪獣ギララ
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この一大社会現象を背景に、当時斜陽化しつつあった邦画界の中、日活・松竹もこれを好機ととらえ、競い合って特撮怪獣映画を製作する事態となった[1]。こうして日活が『大巨獣ガッパ』を製作し、これに対抗して松竹が製作し、大映の『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』に続き、日活の『大巨獣ガッパ』に先駆けて春休み興行に打って出たのがこの『宇宙大怪獣ギララ』である。

『映画時報』1966年11月号には「東映が劇映画と動画をミックスした『大忍術映画ワタリ』などを出し、これが当たったので日活や松竹まで特撮映画を企画し、来年(1967年)の春休みを当て込んで公開を準備している」と書かれており[2]、『ギララ』と『ガッパ』は、『ゴジラ』『ガメラ』ではなく、『ワタリ』が切っ掛けで製作されたものである[2]。『映画年鑑 1967年版』にも「怪獣ブーム」や「怪獣映画」といった記述は一切なく、それらは全て「特撮』「特撮映画」「特撮もの」と記述されている[3]。『映画時報』1966年11月号には「特撮映画ラッシュも今年の特徴に加えていい」と書かれており[2]、1966年?1967年当時の映画界では「怪獣ブーム」や「怪獣映画」という捉え方はせず、特撮を使う映画をひっくるめて特撮映画と呼んでいた。

政府もこの一大「怪獣ブーム」を背景に、海外に売れる怪獣映画による外貨獲得の狙いをもって制作融資を行った。本作は「社団法人・映画輸出振興協会」による輸出映画産業振興金融措置の融資を受けて、製作された映画である[4][1]。製作費は松竹によると1億5000万円(当時)。

松竹は本作について、次のように解説している[5]。(原文ママ。題名の「宇宙大怪獣」と「ギララ」の間には「・」が入る)松竹では、このほど、SF(サイエンス・フィクション)的要素を盛りこんだ初の本格的特撮映画「宇宙大怪獣・ギララ」(監督二本松嘉瑞・特撮監督池田博)の製作を開始しました。すでに数年前より、大船撮影所に特殊ステージを設け、フィルム合成、色彩テストなど慎重な準備をすすめてきたのが初めて結実したものです。脚本は、元持栄美、石田守良、二本松嘉瑞の共同オリジナルで、演出には、アメリカのエール大学で映画演劇を研究、「恋人よ」、「いたずらの天才」を発表した新鋭二本松嘉瑞があたり、また特撮監督として俊英池田博監督が起用されております。(中略)出演者は、和崎俊也、原田糸子、藤岡弘、岡田英次、木村功、園井啓介、柳沢真一、北竜二、穂積隆信のほか外人タレント、ペギー・ニール、フランツ・グルーベル、マイク・ダニングなど多彩なキャストで描く超娯楽大作でもあります。なお、現代最高のSF作家光瀬龍氏が監修にあたるのも大きな話題のひとつです。 ? 松竹タイムス、『松竹タイムス 宇宙大怪獣・ギララ』

本作は宇宙を舞台にしたSF映画の体裁をとり、東宝や大映の怪獣映画と差別化が図られた。科学考証には光瀬龍が招かれ、前半部では月面基地や宇宙空間でのメカ描写などが丹念に描写された。一方で月面基地に檜風呂が登場したり、恋愛ドラマも盛り込まれるなど、「松竹大船調」の演出によって、他社とは異質な作品作りが行われ、「メロの本家でも怪獣製作」などと報じられた。ストーリーは、謎の円盤の正体が結局明かされないまま終わるなど、やや構成の難が指摘されている。

怪獣のデザインが決定すると、前年12月17日に東急ホテルで製作発表会が開かれ、島田プロデューサー、二本松監督、池田特撮監督、光瀬龍の4人が出席し、「宇宙怪獣」の模型を囲んで大々的に宣伝が行われた。

脚本準備稿は当初『宇宙大怪獣』と仮題され、マンモス植物も登場する予定だった。次に『SF宇宙大怪獣』と仮題され、アストロボートの設定が盛り込まれて「SF」が全面に押し出され、この後の最終決定稿で『SF宇宙大怪獣ギララ』と表記された。封切り公開9日前の3月16日に、『宇宙大怪獣・ギララ』と題する完成試写台本が刷られ、本作題名となっている。
キャスト

ヒロインの原田糸子は西野バレエ団出身で、デビュー2作目で主演女優となった。公開に合わせ、ギララとともに和崎柳澤、原田ら出演者4名が関東周辺の孤児施設を周り、慰問活動を行っている。

佐野:
和崎俊也

道子:原田糸子

宮本:柳沢真一

塩田:園井啓介

月ステーション通信員A:藤岡弘

加藤博士:岡田英次

リーザ:ペギー・ニール(日本語吹き替え:武藤礼子

バーマン博士:フランツ・グルーベル(日本語吹き替え:大木民夫

スタイン:マイク・ダニーン(日本語吹き替え:大宮悌二

対策本部長:北竜二

FAFC技官:穂積隆信

FAFCのオペレーター:渡辺紀行

木村:浜田寅彦

大屋満

仲子大介

須藤照夫

月ステーション通信員B:小田草之助

FAFCのオペレーター:加島潤

警視庁長官:中田耕二

変電所係員:川村禾門

小森英明

山中淳

川島照満

沖秀一

園田健二

加登秀樹

比嘉照子

深山悦子

スタッフ

本作の特撮を担当したのは、元・松竹の特撮技師川上景司、前年に東宝を離れた渡辺明、小田切幸雄らによって結成された特撮請負会社「日本特撮映画株式会社」である[1][注釈 1]。同社は同年に『ガッパ』も手掛けた[1]

ギララの特撮スタッフには、島倉二千六、菅沼峻、滝川重郎ら当時東宝特技課に在籍中でありながらアルバイトでこっそり参加した者たちもいた。島倉によると、彼らがロケハン先で円谷組メインスタッフとばったり顔を合わせてしまってこれがばれ、契約違反で解雇されてそのまま島倉ら数人が「日本特撮映画株式会社」(1969年解散)に合流してギララに加わることとなっている[6]

製作:島田昭彦

脚本:二本松嘉瑞、元持栄美、石田守良

特撮監督:池田博

監修:光瀬龍


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