宇宙大怪獣ギララ
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すでに数年前より、大船撮影所に特殊ステージを設け、フィルム合成、色彩テストなど慎重な準備をすすめてきたのが初めて結実したものです。脚本は、元持栄美、石田守良、二本松嘉瑞の共同オリジナルで、演出には、アメリカのエール大学で映画演劇を研究、「恋人よ」、「いたずらの天才」を発表した新鋭二本松嘉瑞があたり、また特撮監督として俊英池田博監督が起用されております。(中略)出演者は、和崎俊也、原田糸子、藤岡弘、岡田英次、木村功、園井啓介、柳沢真一、北竜二、穂積隆信のほか外人タレント、ペギー・ニール、フランツ・グルーベル、マイク・ダニングなど多彩なキャストで描く超娯楽大作でもあります。なお、現代最高のSF作家光瀬龍氏が監修にあたるのも大きな話題のひとつです。 ? 松竹タイムス、『松竹タイムス 宇宙大怪獣・ギララ』

本作は宇宙を舞台にしたSF映画の体裁をとり、東宝や大映の怪獣映画と差別化が図られた。科学考証には光瀬龍が招かれ、前半部では月面基地や宇宙空間でのメカ描写などが丹念に描写された。一方で月面基地に檜風呂が登場したり、恋愛ドラマも盛り込まれるなど、「松竹大船調」の演出によって、他社とは異質な作品作りが行われ、「メロの本家でも怪獣製作」などと報じられた。ストーリーは、謎の円盤の正体が結局明かされないまま終わるなど、やや構成の難が指摘されている。

怪獣のデザインが決定すると、前年12月17日に東急ホテルで製作発表会が開かれ、島田プロデューサー、二本松監督、池田特撮監督、光瀬龍の4人が出席し、「宇宙怪獣」の模型を囲んで大々的に宣伝が行われた。

脚本準備稿は当初『宇宙大怪獣』と仮題され、マンモス植物も登場する予定だった。次に『SF宇宙大怪獣』と仮題され、アストロボートの設定が盛り込まれて「SF」が全面に押し出され、この後の最終決定稿で『SF宇宙大怪獣ギララ』と表記された。封切り公開9日前の3月16日に、『宇宙大怪獣・ギララ』と題する完成試写台本が刷られ、本作題名となっている。
キャスト

ヒロインの原田糸子は西野バレエ団出身で、デビュー2作目で主演女優となった。公開に合わせ、ギララとともに和崎柳澤、原田ら出演者4名が関東周辺の孤児施設を周り、慰問活動を行っている。

佐野:
和崎俊也

道子:原田糸子

宮本:柳沢真一

塩田:園井啓介

月ステーション通信員A:藤岡弘

加藤博士:岡田英次

リーザ:ペギー・ニール(日本語吹き替え:武藤礼子

バーマン博士:フランツ・グルーベル(日本語吹き替え:大木民夫

スタイン:マイク・ダニーン(日本語吹き替え:大宮悌二

対策本部長:北竜二

FAFC技官:穂積隆信

FAFCのオペレーター:渡辺紀行

木村:浜田寅彦

大屋満

仲子大介

須藤照夫

月ステーション通信員B:小田草之助

FAFCのオペレーター:加島潤

警視庁長官:中田耕二

変電所係員:川村禾門

小森英明

山中淳

川島照満

沖秀一

園田健二

加登秀樹

比嘉照子

深山悦子

スタッフ

本作の特撮を担当したのは、元・松竹の特撮技師川上景司、前年に東宝を離れた渡辺明、小田切幸雄らによって結成された特撮請負会社「日本特撮映画株式会社」である[1][注釈 1]。同社は同年に『ガッパ』も手掛けた[1]

ギララの特撮スタッフには、島倉二千六、菅沼峻、滝川重郎ら当時東宝特技課に在籍中でありながらアルバイトでこっそり参加した者たちもいた。島倉によると、彼らがロケハン先で円谷組メインスタッフとばったり顔を合わせてしまってこれがばれ、契約違反で解雇されてそのまま島倉ら数人が「日本特撮映画株式会社」(1969年解散)に合流してギララに加わることとなっている[6]

製作:島田昭彦

脚本:二本松嘉瑞、元持栄美、石田守良

特撮監督:池田博

監修:光瀬龍

監督:二本松嘉瑞

撮影:平瀬静雄

特殊撮影:大越千虎

美術監督:重田重盛

音楽:いずみたく

録音: 中村寛

調音:松本隆司

照明:津吹正、高橋利文

編集:杉原よし

監督助手:白木慶二

製作主任:内藤誠

進行:萩原辰雄

特撮監修:川上景司

協力:日本特撮映画株式会社(渡辺明、小田切幸雄)

スチール: 梶本一三、金田正

製作宣伝:藤谷政雄

宣伝プロ:藤川忠勝

提供:渡辺製菓

主題歌
「ギララのロック」
作詞:
永六輔 / 作曲:いずみたく / 歌:ボニージャックス / セリフ:柳沢真一原田糸子
「月と星のバラード」
作詞:永六輔 / 作曲:いずみたく / 歌:倍賞千恵子

JASRAC録認第10386号、出認第413161号。

映画公開に合わせ、キングレコードレーベルで、ケイブンシャからソノシートが発売された。ソノシート版では「月と星のバラード」が正主題歌扱いになっており、「ギララのロック」の歌中台詞は柳沢ではなく和崎俊也だった。俳優陣を使ったドラマが挿入される内容に、映画スチールとイラストで絵物語が構成されている。定価280円。

同じキングレコードからはシングルEPレコードも発売された。ジャケットはギララとアストロボートの写真に、倍賞千恵子やボニージャックスの顔写真が並べられたデザインとなっている。
登場キャラクター
ギララ

諸元ギララ
身長60m
体重15,000t
[7]

謎の発光体がアストロボートに噴霧した胞子状の発光物質が、地球のFAFCに持ち帰られ、怪獣に変化した。当初は小型であったが、地球上の電気や電子エネルギーを吸収して巨大化する。長い爪で建物を破壊し、口から白色の火球を吐いて暴れる。身長と同じ大きさの赤い火球になって飛行することも可能。噴霧した物質に含まれるギララニウムが弱点で、これによってエネルギーを吸収されると体が縮む。資料によっては、触角からの超音波や尻尾の鋏からの怪光線などの能力を持ち、手足にはエネルギー吸盤や火炎袋や溶解液袋やエネルギー吸収袋を有し、耳のアンテナや目や脳のレーダーなどの機能が紹介されている[8]

『松竹タイムス 宇宙大怪獣・ギララ』では、その能力は以下のように説明されている(原文ママ)。首から上は、あらゆる現象を敏感にキャッチし、目は複眼で、手と口の吸盤からは、強力な熱線を放出します。また怒った時には、からだ全体から七色の光を放ちます。その威力は、原子兵器もおよばない破壊力があり、われわれ地球人未知のまったく新しい大怪獣です。 ? 松竹タイムス、『松竹タイムス 宇宙大怪獣・ギララ』
ギララのネーミング
ギララは『宇宙大怪獣』題名時の初稿脚本では、「怪虫X」、「怪虫」などと表記され、『SF宇宙大怪獣』題名時の準備稿で「デモラ(仮称)」と極秘扱いで表記された。また、本文で「デモス」表記された部分もあった。この「ギララ」については、「ギ」がギリシャ語で「巨大」、「ラ」はラテン語で「大きい」という意味であると説明されている。公開を前に渡辺製菓とのタイアップで、「宇宙怪獣」の正式名称が『週刊少年マガジン』や『週刊少年キング』、ポスターによって公募された。210,564人の応募(松竹の発表)のなかから「ギララ」が採用され、静岡県在住の12歳の女子小学生と神奈川県の16歳の2人に懸賞の欧州旅行招待券がプレゼントされた。1月28日には、撮影所内で「宇宙大怪獣命名式」と題し、林家三平の司会で行われた公開命名式の特撮セットに多数の子供たちが招待され、アストロボートの飛行実演などを見学している。
ギララの美術・造形
昭和41年12月に重田重盛によるデザイン画が決定し、1尺大の粘土模型が作られた。この模型は体色が緑色で、宣伝部によって「プラトニカル・ギララドニシウス」(Pratonical Gilaladonishious)とプレート刻名され、現在も松竹で保存されている。ぬいぐるみの造形は前年に東宝特美課を退職独立した開米栄三の指導のもと[9] 、これも前年に東宝特美課を退職し、「日本特撮映画株式会社」に参加していた小田切幸雄によって行われた。頭、手足の粘土原型が起こされ、ラテックスによる型抜きで製作された。表皮はいぼを型取ったものを貼り付けて作られて雲母が混ぜ込まれ、照明で輝くようになっている。
アストロボート

諸元アストロボート[10]
全長28m
全幅14.5m
重量20t
エンジン原子力エンジン
燃料ウラニューム(XTU原子燃料)
推力3,000t
速度マッハ6?360
武装レーザー砲2門
乗員4?8名

宇宙をテーマにした作品として登場するオリジナルメカ。宇宙探査と宇宙開発を任務とするFAFCの新型原子力宇宙船で、正式名称は「Atomic Astro Boat」(AAB)。別名「宇宙船AABガンマー号」。当初の任務は火星の有人探査であり、原因不明のまま遭難した以前の火星探査船の遭難原因の調査も目的とされていた。船体材質は特殊不燃性軽合金。打ち上げ時には通常の宇宙船同様、二段式ロケットの先端部にカプセルに格納された状態で搭載される。雑誌などでのアピール度は強かったが、劇中ではあまり目立った活躍はなく、ギララを攻撃するようなシーンもない。1尺、3尺のミニチュアが作られた。

なお、のちの『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』にはAABガンマー号のパロディとして、中国籍の火星探査船「AACベーター号」が登場する。
その他のメカ


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