学生服
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動きやすさや寒暖への対応のほか、男女に関係なく、ズボン、キュロット、スカートのいずれを着るか選べる[41][42]。栃木県の県立高校では、コロナ禍対策の換気による防寒もあり6割で女子生徒にもスラックスが導入されている[43]。既存の制服では寒暖差に応じた調整が難しく、また生徒が小学校でズボンを履き慣れていて制服のスカートに戸惑ったり、性差があらわな格好に抵抗を感じることがあるため多様性や機能性の配慮から女子用スラックスを追加するなど制服見直しが静岡県で進んでいる[44]

また制服を見直す団体には制服が肌に合わず苦しんだ、など体質的な問題を提起する声も寄せられている。一式の購入費が8?9万のため家計への負担のコストも考慮すべきとの意見もある[45]。制服については教育委員会ではなく学校長判断で着用が決定するが、公正取引委員会は2020年7月に愛知県豊田市にある県立高校6校の制服販売において価格カルテルを結んでいたとして、同市の販売業者3社に対し、独占禁止法違反で再発防止を求める排除措置命令を行うなど流通に不透明さが残る場合がある[46]
統計調査
NHKによる調査

1980年代に変形学生服の文化が学生間にどれだけ根付いていたかを示す調査結果として、NHKが1982年に行った生徒調査がある[47]。調査方法は、標本調査方式で全国12?18歳の男女3600人を二段無作為抽出し、個人面接法を行った。有効回答3465人(87.9%)、うち中高生は3112人。集計は中高生に限定し、地点ごとの中高生の人口構成比を考慮したウェイト集計。

質問内容として、「あなたの学校には、カードに書いてあるような生徒はいると思いますか。あなたが見たり聞いたりしたものをいくつでも答えてください」という問いがあり、カードには、全部で14個の「非行」が並んでいる。「友達をのむ生徒」「タバコを吸う生徒」「シンナーを吸う生徒」「万引きをする生徒」「先生をなぐった生徒」「学校の規則に合わない服装をする生徒」「学校の規則に合わない髪形をする生徒」「オートバイバイクで問題をおこした生徒」「口紅マニキュアをつける生徒」「パーマをかける生徒」「学校をさぼってブラブラしている生徒」「家出をした生徒」「妊娠した生徒」である。そして、「この中に見聞きしたものはない」という項目があり、そこから選択する。「わからない、無回答」という統計項目もある。

そのうち、「学校の規則に合わない服装をする生徒」の項目は、全体で79.6%(男子全体79.6%、女子全体79.6%、中学生男子75.8%、中学生女子77.3%、高校生男子84.7%、高校生女子82.6%)が選択をした。約8割の生徒が、規則違反の服装を見聞していることになる。ここで、「学校の規則に合わない服装」が直ちに変形学生服を示すわけではないが、実態として該当するものが変形学生服と捉えるられるので、以下ではその意で扱うとすれば、約8割の者がそれを校内で見聞きしており、変形学生服の文化が生徒の間にかなり身近にあったことを示唆している。カードに書かれている各種「非行」のうち、男子全体では「学校の規則に合わない服装」を見聞する生徒が最も大きな値を示している。中学生男子でもトップで、高校生男子では「タバコを吸う生徒」の91.4%についで2位であり、他の非行と比べても、制服の変形化が一般的に浸透していたことを示している。

別の質問内容として「では、カードの中で、あなたがやってみたいと思ったり、やったことがあるものがあれば、いくつでもあげてください」という問いがあり、カードに前問に類似した13個の非行項目が並んでいる。「友達と酒をのむ」「タバコを吸う」「シンナーを吸う」「万引きをする」「学校の物をこわす」「学校の規則に合わない服装をする」「学校の規則に合わない髪形をする」「オートバイ・バイクに乗る」「口紅やマニキュアをつける」「パーマをかける」「学校をさぼってブラブラする」「家出をする」「『キセル』乗車など不正乗車をする」である。そして、「この中にやってみたいことや、やったことはない」という項目があり、そこから選択する。「わからない、無回答」という統計項目もある。

そのうち、「学校の規則に合わない服装をする」の項目は全体で23.7%(男子全体27.2%、女子全体、20.0%、中学生男子19.0%、中学生女子13.6%、高校生男子38.2%、高校生女子28.1%)である。他の非行項目と比べた場合、中学生男子で「オートバイ、バイクに乗る」の19.2%についで2位、高校生男子で「友達と酒をのむ」の52.7%、「オートバイ、バイクに乗る」の48.2%についで3位となっており、同四位は「タバコを吸う」の33.9%である。男子全体で、「学校の規則に合わない服装をする」へ実に4人に1人が志向している。このように、本人の意欲や実際の行動としての問いでも、大きな値を示している。他の「非行」と比較しても、大きな値を示しており、「ヤンキー」「ツッパリ」以外の「一般の」生徒であっても強く、変形学生服への意向があったことが推測される。特に、高校生男子で突出して高く、中学生男子の2倍近くの約4割の生徒が志向している。高校生男子における変形学生服着用や変形学生服への意向が、「ヤンキー」「ツッパリ」に留まらず「一般の」生徒であってもかなりの割合で通有のものであったことを窺わせる。

女子の場合は服装とともに髪型の方にも強い興味を持っていた。「学校の規則に合わない服装をする生徒」を見聞する者は男女同率(男子全体79.6%、女子全体79.6%)に対して、「学校の規則に合わない髪形をする生徒」を見聞する者は全体で71.9%(男子全体66.5%、女子全体77.5%、中学男子54.0%、中学生女子69.5%、高校生男子83.2%、高校生女子87.6%)、「学校の規則に合わない髪形をする」の意向を持つ・行動する者の項目は全体で20.3%(男子全体17.8%、女子全体で22.8%、中学生男子9.9%、中学生女子17.4%、高校生男子28.5%、高校生女子29.7%)と、いずれも女子の方が多い傾向が出ていた。男女を比較するならば、女子が髪型と制服いずれも規則外のものに志向させていたのに対し、男子はとりわけ変形制服文化の根付きの強さと深さが指摘できる。

上述した「では、カードの中で、あなたがやってみたいと思ったり、やったことがあるものがあれば、いくつでもあげてください」という質問への学年別回答の詳細値(ただしこれは男女混合の数値である)も発表されており、「学校の規則に合わない服装をする」の項目は中学一年生6.5%、中学二年生18.0%、中学三年生24.2%、高校一年生26.6%、高校二年生35.9%、高校三年生36.9%となっている。ここからは学年が進むにつれて、より強く志向される傾向が明らかになるが、とりわけ中学一年生から中学二年生、高校一年生から高校二年生で特に強い伸びを示している。その理由として、入学から一年が経過し学校文化にも適応し変形学生服を志す余裕ができたこと、後輩ができたことによって、より格好良い自分を演じたくなること、そして「裏校則」で暗に一年生が変形学生服を着用することが忌避されている場合、進級でそれがなくなったこと、などが考えられる要因として挙げられる。

これに対し、中学三年生から高校一年生への伸びは鈍化している。いわゆる「高校デビュー」といわれるような、新しい環境に入る高校入学を機に変形学生服の着用を志す生徒は少ない傾向と一見捉えることもできるが、「学校の規則に合わない服装をする」という設問であるため、中学よりも高校で「学校の規則」が緩くなっているケースも存在し、その影響で数値が低くなっている可能性があり、変形学生服を志向するようになっても高校の規則で認められていれば、本問に肯定回答として現れていない可能性がある。

なおこの調査は、個人面接法で行われたため、上記質問のような反社会的質問への肯定割合は、実際よりも低く出ると推測され、上述した以上に、1982年時点で変形学生服の文化がかなり一般的に広まっていたものと考えられる。
京都府総合教育センターによる調査

また、京都府総合教育センターが1982年および1983年に発表した「子どもの生活意識と行動に関する研究調査―第1年次まとめ(中学校)―」(1981年10?12月調査)および「子どもの生活意識と行動に関する研究調査―第1年次まとめ(高等学校)―」(1982年9?12月調査)においては、中学2年生および高校2年生の、変形学生服など「各種問題行動」への意識、経験が調査されている[48]。この調査では、調査項目では「制服の変形」への意識、経験が質問されているが、「変形学生服」の着用と同じ意味と捉えて差し支えないと考えられる。

まず「制服の変形」をやってみたいと思うか、という質問に対して、「自分もぜひやってみたい」(中学2年生で13.8%、高校2年生で17.9%)および「やってみたいと思う時がある」(中学2年生で39.8%、高校2年生で42.1%)と回答しており、合わせて中学2年生で53.6%、高校2年生で60.0%の生徒が「制服の変形」をやってみたいと回答している。このように半数を超える生徒が「制服の変形」欲求をもっていたことから、「制服の変形」が中高生において、身近に憧れるものであったことが明らかとなり、高校ではより強く多くのものが衝動されることを示している(「やろうとは思わない」は中学2年生で46.5%、高校2年生で40.0%)。

なお「パーマ染髪」をやってみたいと思うか、という質問に対して、「自分もぜひやってみたい」(中学2年生で6.9%、高校2年生で18.0%)および「やってみたいと思う時がある」(中学2年生で26.2%、高校2年生で46.5%)と回答しており、合わせて中学2年生で33.1%、高校2年生で64.5%の生徒が「パーマ・染髪」をやってみたいと回答している。この結果は、生徒にとって「制服の変形」と同様に、「パーマ・染髪」も身近であったことを示しているが、中学2年生では「制服の変形」が「パーマ・染髪」を上回っている一方で、高校生では「パーマ・染髪」が「制服の変形」を逆転して多くなっていることは興味深い。

また、問題行動傾向の有無[注釈 3] によっても、「制服の変形」への意識の強さの差異がみられる。「自分もぜひやってみたい」(問題行動傾向有りで中学2年生59.0%・高校2年生60.0%、問題行動傾向無しで中学2年生7.5%、高校2年生で11.8%)で顕著で、問題行動傾向がある者にとって、とりわけ「制服の変形」欲求が強い傾向がある。ただし、「やってみたいと思う時もある」(問題行動有りで中学2年生31.9%・高校2年生で24.8%、問題行動無しで中学2年生40.9%、高校2年生で44.6%)では、問題行動の無いものもかなりの割合で「制服の変形」欲求を持っていることを表している。このことから、問題行動傾向のある者、言いかえれば不良文化と「制服の変形」は親和性があるものの、問題行動のないものでも一定の割合で「制服の変形」欲求をもっていたことが分かる。

次に、「制服の変形」の実行経験[注釈 4] については、中学2年生で「よくやった」が8.9%、「ときどき」が10.8%、「1?2回」が8.4%であり、合計28.1%もの生徒が実際に経験している(「やってない」は71.9%)。高校2年生では、「よくやった」が17.3%、「ときどき」が15.3%、「1?2回」が11.2%であり、合計43.7%もの生徒が実際に経験している(「やってない」は56.3%)。中学2年生で四分の一強、高校2年生で半数弱の生徒が「制服の変形」を経験していることは、「制服の変形」が実際にもかなり行われていたことを表している。意識と同様に、高校でより多くのものに「制服の変形」は行われており、意識との乖離が少なくなっていることから、中学では何らかの要因でやりたくても行えなかったものでも、あるいは後述するように強くやりたいと思わないものでも、高校では「制服の変形」が浸透していることが窺える。

意識との関連も強く「自分もぜひやってみたい」と回答したもののうち、中学2年生で75.6%、高校2年生で82.4%が実際に実行している(「よくやった」が中学2年生で42.1%・高校2年生で55.7%、「ときどき」が中学2年生で21.6%・高校2年生で19.3%、「1?2回」が中学2年生で11.9%・高校2年生で7.4%。「やってない」は中学2年生で24.4%・高校2年生で17.6%)。一方で「やってみたいと思う時もある」と回答したもので実行したものは、中学2年生で37.3%、高校2年生で54.2%となっている(「よくやった」が中学2年生で6.4%・高校2年生で12.6%、「ときどき」が中学2年生で17.8%・高校2年生で23.6%、「1?2回」が中学2年生で13.1%・高校2年生で18.0%。「やってない」は中学2年生で62.7%・高校2年生で45.8%)。また、「やろうと思わない」と回答したものでも、少数ながら中学2年生で6.1%、高校2年生で15.4%が実際に実行している(「よくやった」が中学2年生で1.2%・高校2年生で5.0%、「ときどき」が中学2年生で1.5%・高校2年生で4.7%、「1?2回」が中学2年生で3.4%・高校2年生で5.7%。「やってない」は中学2年生で93.9%・高校2年生で84.6%)。

この結果からは、「制服の変形」を中学2年生では「自分もぜひやってみたい」と強い意識を持っているものが中心の文化であったが、高校2年生では、「やってみたいと思う時もある」でも実行したものが半数を超え、「やろうと思わない」という意識をもつものまで一部やるようになるという傾向が見て取れ、中学から高校にかけてより広範な範囲に「制服の変形」文化が根付くようになることが示唆される。

なお、「染髪・パーマ」の実行経験については、中学2年生で「よくやった」が1.8%、「ときどき」が1.5%、「1?2回」が4.5%であり、合計7.7%の生徒が実際に経験しているに過ぎない(「やってない」は92.3%)。高校2年生では、「よくやった」が5.3%、「ときどき」が6.9%、「1?2回」が17.0%であり、合計29.2%の生徒が実際に経験している(「やってない」は70.8%)。

意識では前述のように、高校2年生において、「染髪・パーマ」が「制服の変形」を抜いていたが、行動では「制服の変形」が「染髪・パーマ」を上回っている。


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