学問のすすめ
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

更に古文や漢文については「よきものではあるがそこまでして勉強するものではない」(意訳)と、意義を否定はしないが、世間で扱われている程の価値があるものではない、と言って儒学者や朱子学者が使うような難しい字句のある漢文や古文を学ぶより、まず日常的に利用価値のある、読み書き、計算、基本的な道徳などの「実学」を身につけるべきだと書いている[7]

本書は数章を除いて、小学校の教科書とするため、もしくは高等教育を受けていない当時の一般国民を読者に想定して書かれている(5編)。そのため当時の基準では平易な文章だといえ、難解な政治思想を説明するため比喩が多く使われている。
批判

本書が執筆された明治初期は、明治国家の国家像が模索されている時期であった。福澤は自由市民による国民主権国家を構想していたが、やがて形成された政府の方針は、主権は天皇に存し、各国民は臣民として天皇の主権下に服す、天皇制国家であった。政府の方針が明確になりだした1882年(明治15年)前後から、福澤は政府の方針を反動として『時事新報』で批判を展開するが、1889年(明治22年)の大日本帝国憲法発布を経て、天皇制国家が確立する。忠義や孝行をはじめ、儒教的な価値観を完全に否定した福澤の思想は時代を先取りしすぎ、明治社会下では福澤自身への批判・攻撃を招いた。
赤穂不義士論

『学問のすすめ』への批判は、特に第6編「国法の貴きを論ず」と第7編「国民の職分を論ず」に集中した。第6編では、赤穂浪士の討ち入りは私的制裁であって正しくないと論じる部分が批判の対象となった。
楠公権助論

また第7編で主君のために自分の命を投げ出す忠君義士の討死と、主人の使いに出て預かった一両の金を落とし、申しわけなさに並木にふんどしをかけて首をくくった権助の死を同一視し、私的な満足のための死であり、世の文明の役には立たないと論じている。この部分が、楠木正成(楠公)の討死が無益な死と論じたものと解釈されて、批判の対象となった[8]。ただし、福澤自身は楠木正成にはまったく言及していない。
『学問のすすめ之評』

福澤は、上記の批判に対して、慶應義塾 五九樓仙萬(ごくろうせんばん)というペンネームで「学問のすすめ之評」という弁明の論文を記して投稿し、『郵便報知新聞』明治7年11月5日号付録に掲載された。さらに、『朝野新聞』同年11月7日号に「学問ノススメ之評」として転載され、『日新眞事誌』同年11月8 - 9日号、『横浜毎日新聞』同年11月9日号にも掲載された[9]。この投書が掲載されてから、「物論(ぶつろん)漸く鎭(しづ)まりて爾来(じらい)世間に攻撃(こうげき)の聲を聞かず」という事になった[10]
本書をモチーフにしたタイトルの作品・商品『学問のすゝめ』最中。菓子の名にも冠されている

有名な作品であるため、他の作品・商品に本書をもじった名前が使われることがある。

『学問のすゝめ』-文銭堂本舗 (東京都港区三田)が販売している最中

小説『ウソつきのススメ』-(林多加志、南伸坊

テレビ番組『爆笑問題のススメ』-(札幌テレビ日本テレビ系列

ドリンク『大豆ノススメ』(コカ・コーラ

パロディ

万亭応賀『活論学門雀』 全6冊、魁文社、1875年。https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/bunko11/bunko11_a0778/index.html。  - 2号の巻末書名:『活論学問雀』、初号下の外題:『活論学門すずめ』、2,3号下の題簽書名:『活論学門すすめ』。

川村貴司『学問のスズメ ショート・ショート』川村貴司、1971年。 

“(3)学問のスズメ(おれは直角)”, テレビ人気こどものうた, ビジーフォー・スペシャル歌、森雪之丞作詞、本間勇輔作曲、, 東芝EMI, (1991-11), TOCT-6349 (東芝), https://j-lyric.net/artist/a04a9e1/l001171.html  - 注記:録音ディスク 1枚:CD 12cm、収録時間: 77分37秒。

『學問のスズメ 文部省未検定』花田賢作 口演、澤龍 監修、かわら版出版〈かわら版選書〉、1996年4月。 

書誌情報福沢諭吉・小幡篤次郎共著『学問のすゝめ』(初版、1872年)
初版本

初版本は活版印刷で縦18cm・横11.5cm、端書を含め33ページで構成され内容は初編のみとなっている。現存数が少なく、日本全国で10冊ほどが確認されている[11]:14。

大分県中津市内の福沢諭吉旧居記念館内に初版本を展示している。

1968年日本近代文学館から「名著複刻全集 近代文学館 明治前期 29」として『学問のすすめ 全』(初編)が復刻されている。

小室正紀西川俊作編 『 ⇒福澤諭吉著作集〈第3巻〉学問のすゝめ慶應義塾大学出版会2002年ISBN 978-4766408799 には、『学問のすゝめ 全』(初編)初版本の影印が収録されている。
版本

福澤諭吉小幡篤次郎『學問のすゝめ』(初版)福澤諭吉、1872年。 

『学問ノススメ』(2版)福澤諭吉、1880年7月。https://iss.ndl.go.jp/api/openurl?ndl_jpno=40037797。  - 第1-17編合本版。

『福澤全集』 第2巻、時事新報社、1898年。NDLJP:898728/392。 

時事新報社 編『福澤全集』 第3巻、國民圖書、1926年4月。 

『近世社会経済学説大系』 第9巻、誠文堂新光社、1937年。 

『学問のすすめ』富田正文編、日本評論社〈明治文化叢書 第2〉、1941年。 

『学問のすゝめ』岩波書店〈岩波文庫 3064-3065〉、1948年。 

『学問のすゝめ』(改版)岩波書店〈岩波文庫〉、1978年1月。 

『 ⇒学問のすゝめ』岩波書店〈ワイド版岩波文庫〉、1994年11月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-00-007154-8。 ⇒http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/8/0071540.html。 

『 ⇒学問のすゝめ』(改版)岩波書店〈岩波文庫〉、2008年12月。ISBN 978-4-00-331023-6。 ⇒http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/33/3/3310230.html。 


福澤諭吉著作編纂会 編『福澤諭吉選集』 第1巻、岩波書店、1951年。  - 旧版選集(旧字旧仮名)。

『学問のすゝめ』富田正文校訂解題、慶應通信教育図書〈コレスポンデンス・ライブラリイ〉、1951年。 

『学問のす丶め』岩崎書店、1951年。 

『現代日本文学全集』 第51、筑摩書房、1958年。 

慶應義塾 編『福澤諭吉全集』 第3巻、岩波書店、1959年4月。 

慶應義塾 編『福澤諭吉全集』 第3巻(再版)、岩波書店、1969年10月。 

『現代日本思想大系』 第2、筑摩書房、1963年。 

『学問のすすめ』伊藤正雄校注、旺文社〈旺文社文庫〉、1967年。 

『学問のすすめ』金園社、1968年。 

『学問のすゝめ』文憲堂七星社、1968年。 

『近代文学館 名著複刻全集 明治前期 29』日本近代文学館、1968年。  - 初編の復刻。

伊藤整など 編『日本現代文学全集』 第2、講談社、1969年。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:59 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef