委任統治が適用される地域は、委任統治領または委任統治地域という。委任統治領は、地域住民の自治能力の程度に応じて、A・B・Cの3段階に分類され、統治の方法が異なる。
A式は、住民自治を認め、早期独立を促す地域である。この地域は早期独立を前提としていたので、その住民には受任国とは別の国籍が与えられた。
B式・C式にあたる地域は、住民の水準が自治・独立に未だ不十分であるため、受任国の介入が期待される地域である。
B式は、宗教その他の面で地域住民の独自性を可能な限り尊重することが要求され、受任国とは別の法制度による統治方法がとられる地域である。C式は、人口が少なく地域の文化が受任国の文化と共通点が多いため、受任国の構成部分として扱うことが許された。日本が受任国となった南洋群島はC式である。B式・C式の地域住民に対しては、国籍は与えられなかった。
委任統治の監督は、国際連盟理事会の権限であるが、その事務処理を行うための常設の委任統治委員会が設置された。各受任国は、定期的に国際連盟理事会に対し、該当地域の統治に関する報告をする義務がある。
委任統治領西アジア・アフリカの委任統治領
1. シリア(仏)
2. レバノン(仏)
3. パレスチナ(英)
4. トランスヨルダン(英)
5. イラク(英)
6. 西トーゴランド(英)
7. 東トーゴランド(仏)
8. 西カメルーン(英)
9. 東カメルーン(仏)
10. ルアンダ=ウルンディ(白)
11. タンガニーカ(英)
12. 南西アフリカ(南ア)オセアニアの委任統治領
1. 南洋群島(日)
2. ニューギニア(豪)
3. ナウル(豪、NZ、英)
4. 西サモア(NZ)
シリア詳細は「フランス委任統治領シリア」を参照
旧オスマン帝国領で、施政権者はフランス。A式地域。
フランスはこの地域を3つに分割し、住民に大レバノン国・ダマスカス国・アレッポ国の国籍を与えた。その後1924年にダマスカス国とアレッポ国は統合してシリア国となった(1930年シリア共和国に改称)。
大レバノン国は1943年にレバノン共和国として独立。1938年には旧アレッポ国の一部がハタイ共和国として独立し、翌年トルコに編入されハタイ県となった。残りの地域は1946年4月17日にシリア共和国として独立した。
メソポタミア詳細は「イギリス委任統治領メソポタミア」を参照
旧オスマン帝国領で、施政権者はイギリス。A式地域。
1921年8月にファイサル1世をイラク国王に任命し、住民にイラク王国の国籍が与えられた。
1932年10月3日に同名のイラク王国として独立。委任統治領からの最初の独立となった。
パレスチナ詳細は「イギリス委任統治領パレスチナ」を参照
旧オスマン帝国領で、施政権者はイギリス。A式地域。
住民にはパレスチナ国の国籍が与えられた。
1921年にヨルダン川以東をイギリス委任統治領トランスヨルダンとして分離。一方でパレスチナはイギリスの三枚舌外交によるパレスチナ問題がこじれ、イギリスはこの地を国連に委ねた。その後、国連総会でのパレスチナ分割決議を経て1948年5月14日にイスラエル国が成立した。
トランスヨルダン
1921年パレスチナから分離。
1923年5月にアブドゥッラー1世を首長(アミール)に任命し、住民にトランスヨルダン首長国の国籍が与えられた。
1946年5月5日にトランスヨルダン王国として独立した。
トーゴランド詳細は「イギリス領トーゴランド」および「フランス領トーゴランド」を参照
旧ドイツ領トーゴラントで、イギリス領とフランス領に分けた分割統治。