姓名
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姓名の構成要素の数、すなわち、ある個人のフルネームがいくつの部分から構成されているかは、文化によって異なっている。アメリカ大陸の先住民族など、個人を指す名前のみを用いる文化もある。サウジアラビアのように、3代前にまで遡って4つの部分からなるフルネームを用いることが当たり前の文化などもある。ブラジルのように一貫していない場合もある(これは、姓を持つ習慣が普及しつつあるが、完全に普及しきっていないためであると考えられる)。

また、親子の間での姓をめぐる取扱いも文化によって異なる。子供が両親のいずれか、あるいは両方の名前を受け継ぐ習慣や制度があるかどうかは文化によって異なっている。受け継がれていくのは姓に代表される血縁集団名、家系名であるとは限らない。姓を持たない文化においては、一連の名と続柄の連続をフルネームとする場合もある。(たとえば安倍晋三が姓を持たない文化に生まれたとすると、「晋三、晋太郎の息子、の孫」といった名前になる。)インドでは逆に「taro、taichiroの父」などといった形で、ある子供が生まれた時に与えられる名前に、さらにその子供の名前として使われるべき名(taichiro)が含まれているものもある。
構成要素の順序

姓名の構成要素の順序についても、民族・文化圏・使われる場面などにより異なることが知られている[注釈 4][注釈 5]。例えば、ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国では、日常的な文書や会話などでは、名前は名→姓の順をとることが多い。ただし、公的文書や学術文書などにおいては順序が逆転することがある。姓を前置することで検索性の向上や誤認の回避につながるためである。文献表においては第一著者については姓→名の順を取り、第二以下は名→姓で示す。この場合姓の後にカンマを付ける。日本中国韓国ハンガリーなどでは名前は姓→名の順をとる。つまり、あえてフルネームで呼んだり記したりする場合には、その順で呼んだり記したりする、ということである。

名前を記す際などに、その一部を省略することも多く行われる。英語圏ではミドルネーム(middle name)はイニシャルだけが記されることが多くある。スペイン語圏では、複数部分からなる姓の一部が省略されることがある。また古代ローマでは使われていた名の種類がとても少ないため、1?2文字に略して評することがあった。
名前の変更

基本的には、人名は通常、慣習や法などによって決まっている部分(姓)や生まれた時に両親などによって与えられ、それ以後変わることのない部分(名)のいずれか、またはその組合わせからなることが多く、生涯を通じて変わらない文化も多い。だが、ここにも例外がある。

例えば、婚姻や婚姻の解消に際して、夫婦間の姓の変更が行われる文化がある。婚姻やその解消は親子関係の変更を含むこともあるため、子の名前の変更を伴うこともある。

婚姻以外にも、人生の節目において名前を与えられたり改めたりする場合がある。一部のドイツ人の間では洗礼に伴ってミドルネームが与えられ、以後はファーストネームではなくその洗礼名が頻繁に用いられることになる。
その他の多様性.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}この項目には、一部のコンピュータや閲覧ソフトで表示できない文字(韓国語ハングル文字)が含まれています(詳細)。

また、家系名や個人名の多様性も文化によって大きく異なる。「姓#姓の数、由来」も参照

日本人の苗字の種類は10万とも30万ともいわれ(推計値の為、様々な説がある。丹羽基二は30万姓としている)、世界でも特に苗字の種類が多い民族とされる。一方、中国人の姓は5000以下であるとされる。最近の中国科学院の調査では、李・王・張・劉・陳がトップ5とのことで、特に李 (7.4%)・王 (7.2%)・張 (6.8%) の3つで20%強(約3億人)を占める。ベトナム人は、最も多い3つの姓で59%を占める[1]百家姓参照のこと)。韓国人の姓は、金(김)・李(이)・朴(박)・崔(최)・鄭(정)の5種類で55%にのぼり、「石を投げれば金さんに当たる」[2]ソウルで金さんを探す(無用な努力の喩え)」[3][4]などという成句もある。

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}韓国人は子の名を付ける際に、基本的に他の誰も持っていないオリジナルな名を与える(ただし、ある程度の流行はある)。これに対して、ドイツでは「すでに存在する名前」しか受理されない[要検証ノート]。フランスにおいても、ナポレオン法典の時代には、新生児の名は誕生日ごとに決められた聖人の名前から選ぶこととされていた。このため、既存の名前を組み合わせることが流行した(例えばルイ=ニコラ・ダヴーの名ルイ=ニコラは、聖人の名前ルイとニコラを組み合わせたものである)。

さらに、多くの文化においては、正式な名前とは別に愛称敬称などがあり、そのパターンは文化ごとに異なっている。そうした呼称は名前を省略したり変形して用いる場合もあり、名前ではなく帰属や当事者間の関係(父と子など)を用いる場合もある。
人名と文化、社会

人名をめぐる習慣や制度は一般的に、次のような文化的・社会的事象と結び付いている傾向にある。

個人・家族・帰属についての考え方(とりわけ姓をめぐる習慣や制度)

価値観。人にとって何がよい性質であるか(とりわけ名をめぐる習慣や制度)

また、こうした姓名についての知識は次のような場面で活用される。

歴史研究や家系図の作成などに際しての資料の解釈、記録された名前と個人の対応付け

戸籍・名簿などの管理・作成。それに関連したコンピュータ・データベースの構築

日本人の名前

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出典検索?: "人名" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2022年12月)
氏姓制度」、「古代日本の戸籍制度」、および「家制度」も参照
近世以前江戸時代末から明治にかけて活躍した月岡芳年錦絵大石良金の名を「大石 主税 藤原 良金」と「名字、通称、姓、諱」の順で書いている。

明治維新以前の日本の成人男性は、とりわけ社会の上層に位置する者は、家の名である「名字」・「家名」、家が属する氏の名である「姓(本姓)」、そしてその姓の区別を示す「姓(カバネ)」と実名にあたる「」を持っていた。

上古では『物部麁鹿火大連』のように、氏の名・実名・カバネの順で表記されていたが、欽明天皇の頃から『蘇我大臣稲目』のように氏の名・カバネ・実名の順となり、氏の名の後に「の」をつけて「そがの おおおみ いなめ」のように読まれるようになった[5]

公式文書である朝廷の口宣案等に記される際は、「位階もしくは官職、その両方」「本姓」「カバネ」「諱」の順で書かれる。例えば『勧修寺家文書』にある徳川家康従二位叙位の際の口宣案には「正三位源朝臣家康(徳川家康)」「蔵人頭左近衛権中将藤原慶親(中山慶親)」の二人の名前が見られる[6]。公式や公的な文書で用いられるのは本姓であり、徳川や中山といった名字は用いられなかった[7]

書状などで呼称する場合は官職名や通称である仮名を用いることがほとんどであった。また「道長朝臣」や「親房朝臣」のように名とカバネを連ねて呼ぶことは、特に「名字朝臣」と呼ばれ、四位の人物に対して用いられることが多かった[8]

家康が外交文書で「源家康」と署名したように、姓と諱をあわせる形式はあったものの、現代のような名字と諱だけを用いた「織田信長」という形式はあまり用いられなかった。『勢州軍記』の「織田上総守平信長」や、『新編武蔵風土記稿』の「熊谷次郎平直実」など、軍記物語や文芸等では本姓と名字・通称・諱などをつらねて書かれたものもあるが、正式なものではない。
氏・姓・本姓詳細は「」、「本姓」、「」、および「カバネ」を参照

大和朝廷(ヤマト王権)の成立前後、日本には「」と呼ばれる氏族集団が複数あり、氏族の長である氏上とその血縁者である氏人、それに属する奴婢である部曲(部民)も同じ「氏の名」を称していた[9]。これら氏には、天皇から氏の階級や職掌を示す「カバネ(姓)」が授けられた[10]


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