妖精の女王_(パーセル)
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パーセルの早すぎる死の後、『ダイオクレシアン』が18世紀中盤まで人気を保っていた[2]。しかし、『妖精の女王』の譜面は消失し、20世紀初期に発見された[11][3]

『妖精の女王』を含むパーセルの音楽は2つの関連する変化により復興された。バロック音楽への関心の高まりと、アルフレッド・デラーやラッセル・オバーリンなどの先駆者によるカウンターテナーの振興である。前者の動きは、長い間関心の向かなかった作曲家であるパーセルやジョン・ダラウンドジョン・ブロウ、さらにはゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの作品も公演に繋げた。その一方で後者の動きは、作品をオリジナルの演奏と作曲家の意図に可能な限り忠実な演奏を行う方法を提供することにより、前者の運動を補完した(しかしながら、ヘンデルの作品においてはカウンターテナーはカストラートの代替として出てくるため、このかぎりではない)[12]。このことにより、『妖精の女王』の人気は高まり、多くの録音が行われ、古楽器がよくレコーディングに用いられた。『妖精の女王』の構成は現代の演出家にとって問題であり、カットしなければ長くなってしまう『夏の夜の夢』の一部としてパーセルの楽曲を使用するかを演出家は決めねばならない。ロジャー・サヴェージは長さが4時間になると算定した[13]。台本のカットはたいてい現代的な方向性への変更と一緒に行われるため、音楽、テクスト、アクションの整合性が完全に失われるような事態になることもある。このような点に関する批判が、デイビッド・パウントニーによるイングリッシュ・ナショナル・オペラの1995年の上演にも向けられた[14]。この上演は同年に映像として発売され、2002年に同じカンパニーにより再演された。ルイス・パエトウが演出したブラジリアンオペラカンパニーによる2000年の公演は、時間軸にとらわれない台本を使用するという大胆な方法で上演された[15]

2009年の11月、パーセル生誕350年記念の2ヶ月前にはブルース・ウッドとアンドリュー・ピノックにより『妖精の女王』は新版が制作された。その版では全ての舞台エンタテイメントだけでなくパーセルが作曲した音程も復元された。ウィリアム・クリスティによるグラインドボーン音楽祭でのエイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団演奏の公演は翌月にロイヤル・アルバート・ホールにてBBCプロムスで再演された[16]
文脈と分析

『妖精の女王』が属するイングランドのセミオペラの伝統においては、劇中の楽曲のほとんどは超自然的存在の紹介で導入される必要があったが、羊飼いと酔っ払ったキャラクターについては例外であった。『妖精の女王』の仮面劇は全て、ティターニアかオーベロンにより進行される。本来第1幕には音楽はなかったが、作品の多大な成功により1693年に再演された際、パーセルは酔っ払った詩人の場面やYe Gentle Spirits of the Air と The Plaint の2曲を加えた[5]。それぞれの仮面劇が特定の幕中の劇のアクションと隠喩的に繋がっている。このため、第2幕には夜と眠りを象徴する人物が登場するが、この幕ではオーベロンが"love-in-idleness"(パンジー)という花の力を使用し、多くの愛を惑わせる計画により構成されているので、夜と眠りがここで登場するのは適切である。シークレシーやミステリーなどの寓話的な登場人物が魅力的な夜の始まりを告げるのも進行にふさわしい。第3幕のボトムの仮面劇には、変貌、真実と虚構の愛の歌、見かけによらないものなどの要素が含まれている。第4幕の終盤にあるオーベロンとティターニアが和解する仮面劇は最後の仮面劇を予示している。オーベロンが「この恋人たちの婚礼の日を祝福せよ」と言ったあと、場面はウィリアム王の趣味である噴水の庭園に移り変わる。四季を表現する登場人物たちが、祝福された結婚は1年を通して良いものだと告げる。イングランドの王は伝統的に太陽に例えられる。最後の仮面劇にある中国の場面では、メアリ女王の名高い磁器のコレクションへのオマージュがあらわれている。ウィリアムとメアリの結婚を祝福する歌が演奏され、ト書ではウィリアムを示すオレンジの木を入れたメアリの磁器の花瓶をステージの前に出すことでこうしたシンボリズムが完成される[4]
評価

パーセルの短いキャリアが終わりに近づいた頃に書かれており、『妖精の女王』はパーセルの最も優れた劇場音楽を含んでいると考えられている[5]。とくにコンスタント・ランバートはパーセルのこの作品を極めて高く評価しており、『妖精の女王』から組曲を作り、エドワード・デントと共同で当時はできたばかりだったニュー・コヴェント・ガーデン・オペラ劇団による戦後最初に行われた上演のための編曲も行った[17]
脚注^ “ ⇒パーセル:歌劇「妖精の女王」(全曲)(スコラーズ・バロック・アンサンブル)”. NML ナクソス・ミュージック・ライブラリー. 2023年7月10日閲覧。
^ a b Milhouse 1984 p. 57
^ a b “Explore The Fairy Queen” (英語). Glyndebourne. 2023年7月10日閲覧。
^ a b c d Muller 2005 pp. 667?681
^ a b c d Price 2006


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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