妊娠
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一方、卵巣黄体が分泌する黄体ホルモンの影響により、子宮内膜が機械的刺激に反応して脱落膜を形成し、そこに胚が着床する[15]

妊娠期の長さは、ゾウの場合は20か月余り、キリンは約14か月、ウマは11-12か月、イヌネコは約2か月、ネズミは約3週間である[15]。成熟度に関しては、草食獣は生後まもなく走れるほどに成熟して生まれることが多いが、外敵の少ない肉食獣は目も開かない状態で生まれてくる。また、有袋類はとても小さく未熟な状態で誕生し(子宮から出て)、母親の袋(育児嚢)内で成長する。

一度に妊娠する子の数に関しては、ネズミのように多産なものから、ゾウゴリラのようにほぼ一頭のものまで様々である。これは、母体への負担と生後の生存率に関係していると考えられる。
受胎
排卵

女性は胎児期から、卵巣内に原始卵胞を持っている。平均して12 - 13歳で初経(当初は無排卵月経であることが多い)が起こり、その約1 - 2年後から原始卵胞は毎周期いくつか発達を始め、そのうち成熟の最終段階に至った1個が卵巣から排出されるようになる。この成熟卵子の排出を「排卵」という。排卵された卵子は卵管の先端(膨大部)に拾われる。

毎期の月経開始とともに、卵巣内で次の排卵に向けた卵胞の発育が始まる一方、子宮では月経終了後に再び着床のための子宮内膜を用意して排卵を待つ。個人差はあるが、一般に28日前後を1周期として、排卵が起こる。(⇒卵胞形成
受精

排出された卵子のもとに精子が到達すると、卵管膨大部で「受精」が起こる。受精した卵細胞のことを受精卵と呼ぶ。卵子は一旦受精すると、それ以外の精子は受け付けない。
多胎妊娠
まれに一卵性双胎、二卵性双胎が発生する(⇒双生児)。現在は体外授精などの不妊治療により、三つ子(三胎)、四つ子(四胎)が生まれることもある(⇒多胎児)。Hellinの法則によるとn胎の発生する確率は89のn-1乗に1例である[16]。多胎妊娠は妊娠経過中に多々の合併症を生じることも多く、出生予後も単胎に比べると良くない(ただし同体重の単胎児と比べた場合、多胎児の予後はむしろ良い)。そのため、体外受精の時に子宮内に戻される受精卵の数は原則1個と日本産科婦人科学会によって会告で通達されている[17]

排卵後に受精しなかった卵子は約24時間で寿命が尽きて消滅し、妊娠準備のために肥大していた子宮内膜は排卵から14日前後に経血として体外へ排出される(⇒「月経」)。
妊娠可能時期「受精#受精のタイミング(妊娠可能時期)」を参照

卵子は受精をすれば着床するが、しなければ数時間から24時間以内に退化してしまう。その一方で精子は最大で7日ほど、通常は数時間から3日ほどの寿命を持つため、妊娠可能時期は最大で排卵の前後8日間、可能性が高くなるのは排卵日1日に精子の受精可能3日を足した4日ほどとなる。「年齢と女性の妊孕性」も参照
子宮

排卵後の卵胞は「黄体」となり、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌する。「黄体ホルモン」は子宮を着床に適した状態に整える。この黄体の寿命は妊娠成立しなければ排卵から約14日前後で、黄体ホルモンの分泌が終わって子宮内膜を保持できなくなると、月経が起こる。
着床

受精卵はゆっくりと細胞分裂を繰り返しながら卵管を下り、およそ48時間かけて子宮にたどり着く。そして、子宮内膜の一箇所に取り付いて着床の過程を開始し、徐々に潜り込んでいって根を下ろし、排卵から7 - 11日後に着床状態が完成する。この着床をもって、妊娠成立と見なされる。着床した受精卵からは、胎盤が形成され始める(なお、胎盤は妊娠中期に入る頃までに徐々に完成する)。

すべての受精卵が着床に成功するわけではなく、染色体に異常がある受精卵など一定の割合は淘汰される。受精卵が着床しなければ妊娠は不成立で、排卵から12 - 16日後に月経が起こる。(cf.緊急避妊
子宮外妊娠「子宮外妊娠」を参照

受精卵が何らかの理由で卵管など子宮以外の場所に着床した場合は子宮外妊娠と呼ばれ、放置すると危険な状態になる。産婦人科での緊急な処置が必要となる。
妊娠判定

着床した受精卵の初期胎盤から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG) という特有のホルモン(これが黄体の寿命を延ばして子宮に着床状態を維持させる)の検出により、女性の尿が少量あれば妊娠の有無は簡単に判定できる。妊娠検査薬は薬局で求めることができるが、より確実を期するためには医療機関を受診する。
妊娠期間の数え方

受精後胎齢と月経後胎齢の2つの数え方がある。前者は発生学で用いられ、後者は臨床産科で用いられる。

受精後胎齢 - 受精初日を1日目として、満日数、満週数であらわす。

月経後胎齢 - 最終月経初日を0日目として、満日数または満週数で表す。

両者の関係は「受精後胎齢 = 月経後胎齢 - 2週」で表せる。

日本やアメリカでは一般に最終月経の第1日目を妊娠0週0日とする月経後胎齢で妊娠期間を計り、40週0日を標準的な妊娠期間として出産予定日を導出している。ただし、最終月経を起点とするこの数え方では、同じ週数でも各人の月経周期の長さ(最終月経から排卵までに要する日数)によって妊娠の経過にばらつきが出る可能性があるため、現代の医学の見解では妊婦健診における胎児の発育度合いから逆算しておよそ受精日 = 2週0日となるように微修正を加えることも多い。産科学では4週(28日)を1か月と扱い、最終月経から母体を「1か月」「2か月」と数えでの月数で表現する(満でないことに注意。すなわち、妊娠0か月は存在せず、最終月経開始日はすでに妊娠1か月であり、月経予定日〈4週0日相当〉を過ぎても次の月経が来ないことに気づいて検査を行った時点で、妊娠2か月である)。

なお、フランスでは臨床産科においても受精後胎齢が使われており、推定された受精日から何週、または何か月経過したかで妊娠期間を表している。日本でもかつては受精後胎齢を用いて、受胎から出産までを俗に「十月十日(とつきとおか)」と言い習わしてきた。
妊娠の経過

受精卵は、妊娠7週6日までは「胎芽」、8週以降は「胎児」と呼ばれる。


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