妊娠
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つわりに関係する妊娠ホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピンの産出が少ない、何かしらの理由で月経のような血が出血するなどで発見が遅れる例は多い[26]
流産

流産とは妊娠22週未満の場合を指し、児の胎外生活は不可能である。22週以降は児の生存が可能な場合もあることから早産と区別される。周産期医療の発達した2008年現在も、34週未満の早産は予後不良な場合が多い。12週未満に起こった場合は染色体異常が原因のことが多く早期流産という。また、12週以降では羊膜絨毛膜炎が原因であることが多い。自然流産の発生頻度は15%程度である。そのため3回以上流産をする確率は0.5%未満であると考えられ、3回以上の流産が連続する習慣流産では何らかの異常が疑われ精査が必要となる。40歳以上では自然流産の確率は25%と高くなる。これは染色体異常の頻度が高くなるためであり、羊水の性状とは関係はないと考えられている。

少量の性器出血、軽度の下腹部痛を呈し、内子宮口が未開大である場合には切迫流産の可能性が高い。性器出血に加え陣痛様の下腹部痛を呈し、内診にて子宮口の開大が認められる場合は進行流産を疑う。切迫流産の場合は妊娠の継続が可能な場合もあるので安静、臥床とし16週以降で子宮の収縮が認められる場合は子宮収縮抑制薬を使用する。これらの治療は医療機関で行われるのが通常である。進行流産の場合には妊娠の継続は不可能と考えられており、子宮内容除去の適用となる。それ以外に無症状であるが経腟超音波検査にて枯死卵を認める場合を稽留流産といい、これも子宮内容除去の適用となる。
早産

早産も参照のこと。妊娠22週 - 37週未満の分娩を早産という。出産の約5%で認められているが34週未満では胎児の予後が不良であることが多い。34週以降では比較的良好であるといわれている。前置胎盤妊娠高血圧症候群常位胎盤早期剥離などによって母児救命のために行う人工早産と切迫早産や前期破水による自然早産が知られている。自然早産の原因はほとんどが羊膜絨毛膜炎である。妊娠22週 - 37週未満で規則的な子宮収縮、少量の性器出血、水様帯下などを自覚した場合は切迫早産である可能性がある。破水が起こっているかどうかによって対応は大きく異なるが、基本的には入院管理としできるだけ妊娠期間を延長させ、児の発育、成熟を図るようにする。破水をしていて、子宮内感染または胎児ジストレスがある場合は帝王切開の適応となる。未破水で胎児が安全である場合は安静を保ち、妊娠の継続を行う。そのため子宮収縮抑制薬やウリナスタチンなどを用いることがある。早産で生まれた子は未熟児となりやすい。
過期産

42週以降の妊娠を過期妊娠という。胎盤機能不全を起こしやすい。これを防ぐ目的でCRL,BPDの測定で正確な妊娠週数を把握し、過期妊娠となる前に誘発分娩を行うのが一般的である。
急速遂娩

帝王切開のことである。異常分娩の際は様々な理由によって帝王切開の適用となることが多い。児頭骨盤不適合や胎位、胎勢、回旋異常、遷延分娩の場合は経腟分娩困難ということで適用となり、子宮切迫破裂、常位胎盤早期剥離や子癇、過強陣痛、胎児ジストレスでも同様である。そのほか、経腟分娩が母児に危険をもたらすと考えられる病態もある。妊娠高血圧症候群、前置胎盤、帝王切開や子宮手術の既往、子宮奇形、骨盤位(逆子)、重症の母体合併症では帝王切開を好まれる。また長期不妊後の分娩も帝王切開となりやすい。
妊娠トラブルでの対応
切迫流早産

妊娠22週未満に子宮収縮または子宮収縮による下腹部痛を認められるが、子宮口の拡大といった頸管の熟化が認められない場合は切迫流産の可能性がある。医療機関の受診を行い、超音波検査によって胎嚢や胎児心拍の確認を行い妊娠継続が可能かを評価したのち、安静にて対応することが多い。また、進行流産への進展を防止する目的で子宮収縮抑制薬や止血薬が処方されることが多いほか、血腫の形成などが認められた場合などは入院管理となることも多い。

妊娠12週未満の場合
薬によって胎児奇形を招きやすい時期であるため、子宮収縮抑制薬ではなく、鎮痙薬
を用いるのが一般的である。ダクチル50mg(3T3×食後)の処方となることが多い。出血を伴う場合は止血薬であるアドナ30mg(3T3×食後)、トランサミン250mg(3C3×食後)の処方が追加される。

妊娠16週未満の場合
妊娠12週以後ではズファジランの安全性が確立しており、ズファジラン10mg(3T3×食後)といった処方はよく用いられる。妊娠16週以後ではウテメリンを用いることが多いが、動悸の出現などウテメリンの副作用が気になる場合、16週以降でもズファジランを用いることもある。出血を伴う場合、止血薬であるアドナ30mg(3T3×食後)、トランサミン250mg(3C3×食後)の処方が追加される。

妊娠16週以降の場合
妊娠16週以降の切迫流産および切迫早産の場合、ウテメリン5mg(3T3×食後)の投与を行う場合が多い。この時期になると感染による切迫流早産が多く、特に絨毛膜羊膜炎の可能性が非常に高くなってくるため、腟分泌物の精査が必要である。ウテメリン内服にてコントロールがつかない場合はウテロンの点滴やマグネシウム製剤の使用が検討され、入院加療が必要となってくる。感染兆候が認められた場合、胎児への影響が少ないセフェム系の抗菌薬、セフゾンなどが処方される場合が多い。なお、22週以降の生理的子宮収縮は10回/day程度であり、30週未満ならば3回/hour,30週以降ならば5回/hourの頻度の子宮収縮が認められた場合、病的な可能性が高い。収縮数のほか頸管の熟化も重要な所見であり、疑わしいと考えられたら医療機関での相談が望ましい。
つわり・妊娠悪阻

つわりは一般的には妊娠12週から16週ころには軽快することが多く、食生活の指導などで対応する場合が多い。栄養障害を起こし、妊娠悪阻に至った場合は外来にて点滴を行う。ビタメジンなどウェルニッケ脳症予防のためのビタミンB1を含む製剤や解毒剤であるタチオンを用いる場合が多い。悪心に対してはプリンペランを用いる場合も多いが、妊娠中の安全性は確立していないため少量、短時間の投与のみとするべきである。症状があまりに強い場合は比較的安全といわれている漢方薬を用いる。
妊娠中の高血圧

妊娠高血圧症候群、本態性高血圧の可能性がある。妊娠中はACEIやARBの投与が禁忌となる。妊娠中は可能な限り薬物の使用は避けたいため軽症の高血圧では安静・食事療法が基本となる。降圧薬を使用する場合はヒドララジン系降圧薬であるアプレゾリンやメチルドパ系降圧薬であるアルドメットが好まれる。これらの薬物でコントロールができない場合はαβ遮断薬としてトランデートなどを用いることもある。これでもコントロールができなければカルシウム拮抗薬であるアダラートLなども使用する。入院中で速やかな降圧が必要な場合はペルジピンも用いる。
妊娠中のかぜ症候群

第一選択はアセトアミノフェンによる解熱鎮痛となる。NSAIDsは胎児の動脈管収縮、閉鎖やその他の原因による死亡例が報告されており原則禁忌である。


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