妊娠
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母子保健法第15条により、妊娠した者は、厚生労働省令で定める事項につき、速やかに、保健所や自治体に妊娠の届出をするようにしなければならない、と定められている[22]。届出をすると、母子健康手帳が交付される。

妊娠判明後、通常は産科助産所において定期検診として、妊婦健康診査を受ける。周産期の異常への対処を行い、周産期死亡率の改善を図っている。

妊婦健康診査は通常、妊娠23週(妊娠6か月)までは4週間に1度、妊娠24週間(妊娠7か月)から妊娠35週(妊娠9か月)までは2週間に1度、妊娠36週間(妊娠10か月)以後は1週間に1度行う[23]
妊娠の診断

月経の消失、市販の妊娠診断薬によって受診されることが多い。2008年現在、妊娠の決定は妊娠診断薬、すなわち尿中hCGのほか、超音波断層検査、ドプラ法などを用いて行う。これらの近代的な検査が存在しなかった場合は身体診察で経過観察を行っていた。古典的には妊娠不確徴(性器以外の徴候)としてつわり様症状、腹部膨隆など、妊娠半確徴(性器徴候)として子宮の腫大、軟化、乳房の増大、乳輪の着色、妊娠確徴(胎児徴候)として胎児部分触知、胎児心音聴取(Traube法、約12週以降)、臍帯雑音聴取、X線による胎児骨格、他覚できる胎動などがある。古典的方法では客観的に妊娠確徴が見られるのに妊娠5か月まで至っていた。2008年現在尿中hCG検査にて妊娠4週以降は診断可能であるため、月経の停止にて疑った場合は大抵は信頼できる。ただし、この時期では胎嚢が確認できないこともある。尿中hCGは腹痛不正性器出血など異常妊娠(子宮外妊娠、切迫流産)を疑う場合も救急外来で測定される。
妊娠時期の診断

月経歴、基礎体温超音波検査、子宮の大きさといった方法が知られているが、最も信頼性が高いのは超音波検査であるためにその他の方法は補助診断とされる。一般的なのは妊娠8 - 11週は頭殿長(CRL)を用い、12週以降は児頭大横径(BPD)を用いるというやり方である。

胎嚢(GS)

妊娠4週から5週に小さな円として確認できる。その後GS中に卵黄嚢、胎芽心拍動(約8週以降)などが認められるようになる。胎嚢最大径(cm)=妊娠週数-4という関係式は妊娠の初期では目安になる。

頭臀長(CRL)

頭部から臀部までの直線距離である。妊娠7 - 8週で頭部と体幹の区別が可能になるため測定可能となる。生理的屈曲の状態で測定する。妊娠8週 - 11週ではCRL値に個体差はないため分娩予定日の算出に用いられる。CRL(cm)=週数-7の関係式がある。

児頭大横径(BPD)

頭蓋骨外側 - 対側の頭蓋骨内側までの距離である。胎児発育の目安であり、妊娠週数の推定や分娩予定日の算出に用いられる。BPD(cm)=週数/4の関係式も存在するが妊娠後期では信頼性は乏しい。

推定胎児体重(EFW)

児頭大横径(BPD)、体幹前後径(APTD)、体幹横径(TTD)、大腿骨長(FL)を用いて推定する。推定式は各種存在し、コンセンサスは得られていない。妊娠6か月で500g、妊娠8か月で1500g程度あればおおむね良好である。
定期健康診査の検診項目

妊娠が正常に経過しているのかを確認し、特に妊娠高血圧症候群をスクリーニングすることに力をいれた検診である。特に以下の7項目は母子健康手帳に記載の義務がある。

子宮底長

腹囲

血圧

浮腫

尿蛋白

糖尿

体重

血液検査項目

初診時に1回
血液型(ABO式、Rh式、不規則抗体検査)、梅毒血清反応、B型肝炎ウイルス抗原検査、C型肝炎ウイルス抗体検査 、風しんウイルス抗体検査、HTLV-1抗体検査[24](30週までに1回)

初期・中期・末期に各1回
血算、血糖
医学的検査項目

子宮頸がん検査、性器クラミジア検査

これら以外に妊娠初期は母体の健康状態の詳細把握、ハイリスク妊娠の描出、胎児存在の確認と状態観察のための各種検査を、妊娠中期は妊娠高血圧症候群、流産、早産、胎児異常の早期発見と予防のための検査、妊娠後期は胎児well-beingの検査を行っていく[25]
妊娠の異常
クリプティック・プレグナンシー

クリプティック・プレグナンシー(英語版)は、妊娠症状を自覚できていない症状である。実際に出産するまで2500人に1人の割合で気が付かないとされる。つわりに関係する妊娠ホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピンの産出が少ない、何かしらの理由で月経のような血が出血するなどで発見が遅れる例は多い[26]
流産

流産とは妊娠22週未満の場合を指し、児の胎外生活は不可能である。22週以降は児の生存が可能な場合もあることから早産と区別される。周産期医療の発達した2008年現在も、34週未満の早産は予後不良な場合が多い。12週未満に起こった場合は染色体異常が原因のことが多く早期流産という。また、12週以降では羊膜絨毛膜炎が原因であることが多い。自然流産の発生頻度は15%程度である。そのため3回以上流産をする確率は0.5%未満であると考えられ、3回以上の流産が連続する習慣流産では何らかの異常が疑われ精査が必要となる。40歳以上では自然流産の確率は25%と高くなる。これは染色体異常の頻度が高くなるためであり、羊水の性状とは関係はないと考えられている。

少量の性器出血、軽度の下腹部痛を呈し、内子宮口が未開大である場合には切迫流産の可能性が高い。性器出血に加え陣痛様の下腹部痛を呈し、内診にて子宮口の開大が認められる場合は進行流産を疑う。切迫流産の場合は妊娠の継続が可能な場合もあるので安静、臥床とし16週以降で子宮の収縮が認められる場合は子宮収縮抑制薬を使用する。これらの治療は医療機関で行われるのが通常である。進行流産の場合には妊娠の継続は不可能と考えられており、子宮内容除去の適用となる。それ以外に無症状であるが経腟超音波検査にて枯死卵を認める場合を稽留流産といい、これも子宮内容除去の適用となる。
早産

早産も参照のこと。妊娠22週 - 37週未満の分娩を早産という。出産の約5%で認められているが34週未満では胎児の予後が不良であることが多い。34週以降では比較的良好であるといわれている。前置胎盤妊娠高血圧症候群常位胎盤早期剥離などによって母児救命のために行う人工早産と切迫早産や前期破水による自然早産が知られている。自然早産の原因はほとんどが羊膜絨毛膜炎である。妊娠22週 - 37週未満で規則的な子宮収縮、少量の性器出血、水様帯下などを自覚した場合は切迫早産である可能性がある。破水が起こっているかどうかによって対応は大きく異なるが、基本的には入院管理としできるだけ妊娠期間を延長させ、児の発育、成熟を図るようにする。


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