妄想
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誇大妄想は主に妄想性障害: delusional disorder)のサブタイプとなっているが、ほか統合失調症や、双極性障害エピソードの可能性もある[9]
宗教妄想「:en:Religious delusion」も参照

宗教妄想(しゅうきょう もうそう、: religious delusion)は、誇大妄想の延長上、または、ひとつの症状として考えられている[10]。自分自身に何か超次元的で特別なパワーがあると信じたり、霊界のような所から特別な預言や啓示を受けた、またはあらゆる病気を癒す力を授けられたなど、内容が極めて非日常的で壮大なものであり、訂正不能な強固な確信があることが特徴で、現実世界からは考え得ることのできない壮大なスケールによって描かれる妄想が大半であり自分自身を“神”の化身であると信じてしまう症例である[10][11][12]。統合失調症のひとつの症状としても考えられているが[5]、人格崩壊まで至るケースは稀であるが憑依妄想を共に発症するケースがある。これが極端になると宗教団体の教祖にまでなってしまうケースも見受けられる。中壮年層に多く発症するが、青年期に発症する例もある[13]
注察妄想
「常に
盗聴されている」とか「隠しカメラで監視されている」と思い込む妄想。
関係妄想
周囲に起こっている現実を自らに結びつけて考える妄想。周囲の行動・言葉に過敏で自己に関係して捉えるが、それに動じることも多く、妄想まで発展し現実離れしていく。自分は人に嫌われ避けられていると思い込む忌避妄想も関係妄想の一種である。

恋愛妄想、被愛妄想「エロトマニア」とも呼ばれる。特定の相手に恋愛対象とみなされていないのに「自分は相手に愛されている」と思い込む妄想性障害
罪業妄想
「自分は非常に悪い存在」「
罰せられるべきだ」「皆に迷惑をかけている」などと思いこむ妄想。うつ病によく見る病状の一つでもある。
心気妄想
自分の身体の一部が
病気にかかっていると思いこむ妄想。実際に病気に罹っていても、その症状が自分の思っているより非常に軽い場合もこの種類に分類される。いわゆる「エイズノイローゼ」や「ガンノイローゼ」も一種の心気妄想である。
貧困妄想
現実にはそうでないにも関わらず、「自分は非常に貧しい」「
借金を抱えてしまった」などと信じる妄想。
その他
詳細は「
統合失調症#思考内容の障害(妄想)」を参照好訴妄想嫉妬妄想、不死妄想、カプグラ症候群、被毒妄想、血統妄想などがある。嫉妬妄想は隠される場合が多い。
原因

精神疾患統合失調症妄想性障害双極性障害うつ病妄想性パーソナリティ障害統合失調型パーソナリティ障害境界性パーソナリティ障害コタール症候群など)のほか、認知症アルツハイマー病)、せん妄進行麻痺(脳梅毒)、一部タイプてんかん薬物依存症に伴って生じることもある。しかし、健常者においても断眠や感覚遮断など特殊な状況に置かれると一時的に妄想が生じることもある。

また、原因となる基礎疾患によっても生じる妄想の種類が異なる傾向があり、統合失調症に多いのは被害妄想、関係妄想、誇大妄想などで、うつ病に典型的なのは罪業妄想、心気妄想、貧困妄想であるとされているが、必ずしも全例に当てはまる訳ではない。
病態生理学
生物学的な解説

統合失調症では中脳辺縁系のドパミン神経の過活動が妄想、幻覚の発生に関与していることが示唆されている。うつ病やせん妄に伴って生じる妄想に対してもドパミン遮断薬である抗精神病薬が有効であることなどから、それらの疾患でもドパミン神経系の過活動が関与していることが推測される。
精神力動学的な解説

戦争災害の被災者や凶悪事件等の被害者が、一時的に妄想状態に陥ることがある。これは、現実から遊離する事によって精神的なダメージを回避しているとみなすこともできる。統合失調症などの疾患においての妄想ですら、過剰なストレスが精神を破壊しないようにするため逃げ場であるという見方すらできる(ジョン・シュタイナー(英語版)『こころの退避』[14]を参照のこと)。但し安全装置という観点では妄想の代わりに衝動性が生じることもある(いわゆる、キレる状態)。

しかし、安全装置であるとは言え、病的な方法であることには間違いなく、治療が必要である。そして、本人にとっては安全装置であったがゆえに、治療の途中で激しい抵抗に遭うことは珍しくない。それなりに安住の地であった妄想の世界から現実の世界を直視することは苦しみを伴うのである。ここでいかに本人のペースを尊重しつつ、希望や安心感を与えつつ現実と折り合いをつけてもらうかが、精神科医や援助者の力量が問われるところである。
妄想の弊害統合失調症患者の自宅。張り紙に満ちている。

その妄想に対して否定的な現実を敵視したり、妄想を認めない他人に攻撃的になることがあり、ときには暴力犯罪行為に結びつくこともある。周囲から見れば異常行動をとり、周囲に疎まれ孤立したり攻撃されるおそれもある。本来は社会的動物である人間が社会から逸脱することは、本人にも周囲にとっても非常にダメージが大きく、妄想が回復した後の社会復帰にも支障を残すことがある。

また、「自分は空を飛べる」などの妄想に支配されて転落したり、「頭の中に埋め込まれた装置を取り出す」ために頭部を自傷するなど自らを傷つける危険性もあり、最悪の場合は自殺に結びつくこともある。
妄想(仏語)詳細は「妄想 (仏語)」を参照

この節の加筆が望まれています。 (2022年9月)

囚われの心によって、真実でないものを真実であると、誤って意識すること[15][16]。また、そのような迷った考え[15][16]。妄念[16]。邪念[15][16]古代より用いられてきた日本語であり、古くは「もうぞう」と訓じていた[15][16]

古代における用例

菅原道真漢詩集『菅家後集』(平安時代前期にあたる延喜3年〈903年〉ごろ成立)における、秋晩題白菊「老眼愁看何妄想、王弘酒使便留居」(円覚経[15]。「憂いに病み衰えた老いの眼は、如何なる幻想を見るのか。(陶淵明に美酒を贈った)王弘の如き、酒を持参するような使いなら、(ここに)留めて置きたいものだ。[17]」と謳っている。

なお、日本語としては、仏語(仏教用語)の「空想」と通用語の「空想」のいずれかが第1義で、医学用語の「妄想」は第3義である[1]


妄想(通用語)

この節の加筆が望まれています。 (2022年9月)

日本語の通用語としては、あり得ないことを取り留めも無くあれこれと想像すること、あるいはまた、淫らな考えにふけること、そして、そのような想像をも指して、「妄想」という[15][16]。つまり、健常者かそうでないかの問題ではなく、思考力のある人間であれば誰しもが行う、ネガティブなニュアンスを含む心の動きである。よく混同されているものとして「空想」があるが、こちらは基本的にポジティブなニュアンスがあり、建設的である、あるいは、たとえ生産的でないとしても後ろ暗さを感じない、そのような想像を指していう。人間の社会は、妄想と空想に溢れ返っているが、基本的にではあるが、他人に知られて消え入りたくなりがちなのは「妄想」であり、これに対して「空想」は、傾聴してくれる人がいれば披露したくなるものである。


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