女神
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また、カトリックにおいては聖母マリア崇敬の対象とされ、女神的に扱っていると見られることもある。
日本神話(高天原神話)における役割

性差が存在することによって、一神教のような男性優位の社会を主張する流れとは異なる物語の形成に繋がっている。例として、イザナギイザナミの婚姻譚において、男から先に声をかけなかったために失敗したといった流れがあり、一見すると男性優位の物語として語られているように見えるが、その後、産まれた男神であるヒルコを廃し(流し)、女神たるヒルメを立てているところは女性優遇といえるものであり、河合隼雄は著書『中空構造日本の深層』において、男性優位と女性優位の物語を交互に語らせることで、カウンターバランスを成立させ、男女が互いに欠点を補い合うことで安定化を図っているとした社会思想を神話によって語らせているとしている。またアマテラススサノオの「清い心を示す勝負」では、男神を生み出したアマテラス=女神に対して、女神を生み出したスサノオ=男神を勝たせている。女神の存在は、一方の性を優遇するといった一辺倒な社会の否定に繋がっているともいえよう。

神皇正統記』に「陽神(おかみ)陰神(めがみ)」と表記されているように、陰陽思想の下では女神は「陰」に比定される(『神統記』内では陰神の表記が度々用いられている)。また、日本では女神の呼称の他に「姫神(ひめがみ)」という言葉を用い、これに対して男神を「彦神(ひこがみ)」と呼称する(『広辞苑 第六版』岩波書店より)。
山神と女神の関係

日本では山神は女神の場合が多く(後述書 p.103)、山神が男神の場合、狩猟伐採芸能を司る。水や生命を育む森・山は基本的に女性原理として表現されるため、山に男女で入ると女神が嫉妬したり、女性の入山自体を嫌う話も多いとされ、山神が生産を司る以上、日本語の「ヲンナ」は「ヲミナ」=産むの意であると捉えられている[1]

柳田國男は『妹の力』において、霊山における女性の立ち入りを禁じる結界岩は、多くは、山の中腹にあり、本当に入山を禁じていたのなら、中腹に結界岩を置くのは不自然であり、むしろ禁じていたのではなく、足の弱い女性が頂上まで登らずとも参拝できるようにとの配慮からと考察する。
女神と笑いの関係

ギリシア神話には悲しみに沈んだ大地の女神デメテルにバウボ(英語版)[2]という女が自らの性器を見せ、笑わせ、大地の生産力を回復させた話があり、日本神話にもアメノウズメが性器を見せ、神々が笑い、アマテラスが口を開いた話が見られ、怒れる自然(デメテルやアマテラス)に豊穣多産を回復させるために行う話の類型であり、自然を再生させることは、女神を笑わせ、機嫌を取り戻すことで、そうした神話(女性器を見せることで女神の笑いを取る)として表現されたものと松本信広は解釈している[3]。関連は不明だが、古墳時代の女性埴輪の中には性器を強調したものがみられる[4]。また、「ケルト世界のかなり古い神話的存在」で、「慣例でシーラ・ナ・ギグと呼ばれて」いる存在は、「これについての文字資料は皆無であるが、創造と破壊の女神として紹介されることが多い」が、「アメノウズメと同じような猥褻な動作をしている」[5]
女神の数ギリシア神話の女神の数については、ギリシア神話の固有名詞一覧を参照

『古事記』に記される280柱前後(神武東征以後は除く)の内、無性別の神・性別不詳の神・男神を除いた女神の数は65柱前後である。この内、オオゲツヒメが殺害されており(『紀』ではウケモチ)、またクシナダヒメの姉妹神もヤマタノオロチに殺されているため、厳密な数は不明。全体数の約4分の1とギリシア神話と比較して少ないが、これは日本神話において無性や性別不詳の神がギリシア神話と比べて多いためであり、例として、八種の雷神、因幡の白兎、サヒモチの神=サメなど人外神が豊富にいる。本州(大倭豊秋津島)=天御虚空豊秋津別も『記』における男神女神の書き順からいえば、女神だが、明記されていないなど不明瞭な部分がある。
備考

女神も兼ねた柱というのもあり、例えば、神としての
四国は、体一つに顔が四つで、顔にはそれぞれ名があり、男名2、女名2で男女対となっていると『古事記』には記述されている(例、伊予国の神名はエヒメと記され、女神として扱われる)。

元は女神を祀っていたものが、仏教(厳密には空海)の影響によって男神とされるようになった例としては、伏見稲荷神社がある[6]。逆に観音菩薩などのように、男神だったのが女神として信仰されるようになった例もある。

脚注^ 千葉公慈 『知れば恐ろしい 日本人の風習』 河出文庫 2016年 ISBN 978-4-309-41453-9 p.103.
^ 『バウボ』 - コトバンク


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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