契約
契約の相手方として特定の者を排斥することが許されない場合(労働組合から脱退することを雇用条件とすることを不当労働行為として禁じた労働組合法7条1項など)と契約の相手方として特定の者のみが許される場合がある(労働組合法7条1項のクローズド・ショップなど)[20]。
なお、契約締結の自由の制限は必然的に相手方選択の自由の制限を伴うことになる[17]。
相手方の選択自由の制限
採用において労働組合の組合員であることを要件とする労働組合法のクローズド・ショップ(労働組合法7条1項)などがこれにあたる。
契約内容決定の自由の制限契約内容決定の自由の制限としては、次のようなものがある。
付合契約
付合契約(付従契約)とは、電気・ガスの供給契約、保険契約や預金契約のように、契約当事者の一方によってあらかじめ作成した約款を用い、他方はそれ以外に契約内容を選択する自由をもたず締結される契約である。現代では契約当事者のうち経済的に優位に立つ側が一方的に契約条項を作成する付合契約が発達している[21]。
経済的弱者の保護
労働法・経済法・社会法の分野では契約内容決定の自由は制限されており[17]、雇用契約や不動産賃貸借契約などに関する規定は、労働法の各法、借地借家法や農地法などの特別法により強行法規化している[12]。また、消費者保護の観点から契約内容の自由が制限されている場合がある[17]。 日本法では、消費者保護基本法、食品衛生法、医薬品医療機器等法、消費生活用製品安全法、不正競争防止法、特定商取引法、製造物責任法などによるものである。
契約方式の自由の制限契約方式の自由にも制限がある。例えば、贈与契約は日本法では諾成契約であるが、諸外国では要式契約とされることが多く、ドイツ民法やフランス民法では公正証書が必要とされる[22]。日本法でも、農地又は採草放牧地の賃貸借契約については書面によらねばならないとされている(農地法21条)など、一定の方式を要する契約が存在し、また、大量化・複雑化する商取引においては取引関係を明確化・迅速化するため商法上に例外が設けられている[23][17]。要物契約は物の引渡しを要する契約で合意だけでは成立しない点で、契約方式の自由を制限するものとなるが、これらの契約が要物契約とされるのは沿革上の理由による[24]。日本の民法では587条による消費貸借が要物契約である(ただし2017年の改正民法(2020年4月1日施行予定)で587条の2が新設され、書面による消費貸借の場合は物の交付は不要とされた)[25]。スイス民法では現実贈与のみ要物契約としている[26]。
契約の種類
典型契約・非典型契約
典型契約
民法典の規定する契約類型を典型契約という。日本法においては、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用(雇傭)、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13種類の契約をいう[27][28]。有名契約ともいう[28]。典型契約は広義には商法典の規定する契約類型、すなわち日本法においては、商法第2編商行為に規定する9種類の契約である商事売買(売買)、交互計算、匿名組合、仲立営業、問屋営業、運送取扱営業、運送営業、商事寄託(寄託)、保険をも含む[29]。典型契約については民法と商法で二元的に定める法制(フランス民法やドイツ民法)と、まとめて一元的に定める法制(スイス民法)とがあるが、日本では前者の法制をとる[29]。古代ローマ法では、売買、賃貸借、委任、組合の4種のみが典型契約とされていた[25]。しかし中世に入ると取引の複雑化により典型契約の数は増えた[25]。典型契約の種類は各国ごとに異なっており、例えばフランス民法は典型契約として売買、交換、賃貸借、会社、貸借、寄託、係争物寄託、射倖契約、委託、保証、和解の11種類を規定する[30]。契約自由の原則により基本的に契約の内容や効果は当事者間で自由に定めうるにもかかわらず、法律で典型契約を規定する意味は、同時代の社会においては契約類型がほぼ一定しており、また、当事者意思が不明確な場合に契約解釈の標準とするためである[31]。
非典型契約
具体的な契約について、全体的にも部分的にも契約の定型(典型契約)に適合しない契約を非典型契約という[32]。日本では、出版契約などがこれにあたる[33][32]。無名契約ともいう[34]。中世には典型契約は「衣をまとった合意」と呼ばれたのに対し、典型契約に該当しない契約は「裸の合意」といわれ法的効力が認められなかった[25]。近代になって人間は自分の意思に従って自由に権利や義務を発生させることができると考えられるようになったことで無名契約にも法的効力が認められるようになった[25]。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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