奉神礼
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以下の記述はあくまで概略であり、膨大な内容を持つ東方奉神礼の特徴の一部に過ぎない。
ティピコンと省略

公祈祷としての奉神礼の構成については、ティピコン(奉事例)に基本的に従うが、施行時にはその場における司祷者の指示に従う。主幹の構成はどの各国地域の正教会でも同じであるが、参祷者(奉神礼への参加者)の奉神礼への熟達度や聖器物の装備など様々な要因によって部分的に省略を行う場合もある(修道院以外では省略を行わない方がむしろ稀である)。

便宜上誦経されている部分でも、出来うる限り歌う方向を志向しているのは、復活大祭の奉神礼でも明らかである。復活大祭ではほぼ全ての祈祷文が詠隊によって歌われ続ける。
連祷

公祈祷・各種礼儀で、神品と詠隊(聖歌隊)とがやりとりする「聯?」がある。「主憐めよ」や「主賜へよ」で神品の祝文に応え「アミン」で締めくくる。大きく「大聯祷」「小聯祷」「重聯祷」「増聯祷」に区別されるが、奉神礼の部分ごとに前後関係から少しずつ変わった形をしている。
時課正教会における、晩課早課も含めた、広義の時課が行われる大まかな時刻の図解。教会暦においては一日は日没に始まり日没に終わる。但し、このような時刻で全ての時課が行われる事は、大規模な修道院を除き極めて稀である。詳細は「時課」を参照

一日の定刻に起源のある奉神礼として、時課と呼ばれる昼夜奉事(ちゅうやほうじ)がある。「時課」は広義には昼夜奉事全てを指すが、狭義には日中の時課である第一時課、第三時課、第六時課、第九時課を指す。

広義の時課 - 晩課・晩堂課・夜半課・早課・第一時課・第三時課・第六時課・第九時課

正教会では(他教派でも多くが同様の習慣を有するが)日没が教会暦の区切りとなっており、晩課が一日の始まりの時課と認識される。従って、曜日ごとのテーマも晩課から第九時課までで一貫して扱われる事となる。例えばイイスス・ハリストス復活を記憶する主日(日曜日)の奉神礼では、世俗一般でいう土曜日夜に行われる晩課から翌日の第九時課までの間に、復活をメインテーマに据えた祈祷構成がとられる。

時課経には平日の日の出前から晩の一日の流れに沿って収録されている。なお、「第一時」等の時刻名は古代ローマの時刻の呼び方を踏襲したものである。日の出後:およそ午前6時が第一時、およそ午前9時が第三時、およそ正午12時が第六時、およそ午後3時が第九時と称される。

復活大祭の前の大斎の期間には、初代教会の時代に洗礼に向けての教義教育の期間が充てられていた由来もあって、その他の期間と構造が大きく異なる部分が多く、時課においても旧約聖書の部分が多く誦読される。
晩課晩課の聖入の場面。イコノスタシスの王門前にて。右に輔祭、中央に司祭、左(司祭後方)に堂役が二人、写っている。(2009年)詳細は「晩課」を参照

英語: Vespers 本来、日没後の祈祷であるが、教区では時間をずらして日中に行うことがある。正教会の奉神礼上の一日は日没からはじまるため、晩課はその日の祈祷のはじまりである。そのことはカフィズマ(聖詠の項を参照)の配置サイクルによく現れている。通常の週においては、土曜晩課に週の初めである第1カフィズマが充てられており、土曜早課に第19、20カフィズマが充てられる。

晩堂課詳細は「晩堂課」を参照

英語: Compline

「晩堂大課」と「晩堂小課」がある。八調経を用いる通常の平日にも晩堂課は設けられているが、教区では主に大斎期に行なう。祭日によっては前晩祷が晩堂大課から始める徹夜祷のこともある。その場合は晩堂大課の最後にリティヤが行われる。「晩堂小課」は「晩堂大課」を短縮した形と言えなくもないが、順序の中で信経を誦読する位置が異なるなど、若干の融通がある。

訳語「晩堂課」の「堂」の字は、修道院に於いては晩堂課が食後に行われる事から、「食堂」の意味を以て採用された。
夜半課

英語: Nocturne

早課詳細は「早課」を参照

英語: Matins

本来、日の出前後の祈祷であるが、教区の伝統・教会の事情によっては時間をずらして前日の夕刻、あるいは当日の早朝に行うことがある。徹夜祷の場合、晩課から連続して行われる。平日と主日ではその構造は若干異なる。

カトリックの朝課および賛美課に相当する。カトリックでは独立の時課となっている賛美課(羅: laudes)は、正教会では早課の末尾におかれ、その一部となっている。

六段の聖詠:聖堂中央で、指定の六つの聖詠を誦読する。

「主は神なり」:八調のうち指定の調で歌う。(大斎期には「アリルイヤ」を歌う)

ネポロチニ(道に玷《きず》なく)あるいは多燭詞《ポリエレイ》:主日、あるいは大きな祭の早課にはポリエレイが歌われる。

提綱《ポロキメン》:誦経者詠隊が掛け合いで歌う。

福音誦読:主日では計11箇所の「復活の福音」が指定されており、これを通年順番に朗読していく。

規程《カノン》:第一?第九歌頌があり、各々「イルモス」、冠詞、讃詞を含む。第六歌頌の後にその日の小讃詞《コンダク》が誦読(または歌唱)される。

主の讃揚歌「凡そ呼吸ある者は主を讃揚げよ」:此の後の讃頌《スティヒラ》は、教区では通常、省略されている。

大詠頌:司祭のひとこえの後に、詠隊が歌う。これを行なわない場合には、ほぼ同様の部分を誦読する。

萬寿詞

狭義の時課詳細は「時課」を参照

英語: Hours

正教会で「時課」の呼称は、狭義には第一時課、第三時課、第六時課、第九時課を指す。誦経者詠隊時課経をベースに様々な祈祷書を組み合わせて用いる。現在、教区ではこれらすべてを通年定時に行うことはまれであるが、大規模な修道院では行われることがある。


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