物品(視覚性物体失認)、文字(失認性失読)、顔(相貌失認)、風景(街並失認)などがある。同時に複数生じることもあるが、それぞれ、単独で現れることもある[3]。 視覚性失認が、物品に選択的に起こった状態である[4]。 文字に対する失認であり、純粋失読
認知できない対象のカテゴリーによる分類
視覚性物体失認
失認性失読
相貌失認
詳細は「相貌失認」を参照
よく知っている人の顔を見てもそれが誰かわからない。しかし声を聞いたりすれば認識もでき、服装、歩き方などの認識も行うことができる。右半球の紡錘状回の側頭後頭葉移行部に責任病巣が考えられている。
街並失認
よく知っている建物や風景を見てもどこかわからない。そのため道に迷ってしまう。風景がどこかはわからないが個々の成分、家、道、木などは同定することができる。右半球の相貌失認より内側、海馬傍回後部が重視される。
色彩失認
色彩知覚は保たれているのに色の認知に障害がある状態をいうが、色は視覚以外のモダリティで認知できないので、臨床的には、色名の知識はあるのに色を見てその色名を答えることができず、色名を聞いて該当する色を示すことができない状態となる。そのため厳密な意味では色彩失認は存在せず、視覚―言語の離断による色彩失名辞にあたるとされている。純粋失読と合併して起こることが多い。 失認があることの確認には、実際の物品を見せて同定できないことを確認し、写真や線画などについても同定を行い、成績を比較する[5]。 視覚性失認の鑑別としては以下のようなものが知られている。 病態視力検査対象の呼称対象の使用をまねる対象の分類他の感覚を通して呼称 視覚性失語とは視覚的に与えられた対象を呼称できないが、その対象を認識していることを使用法を示したりすることで示すことができる状態である。物体失認と責任病巣が変わらず、左の後頭葉や側頭葉後部が重要視されている。連合型失認と同じ病態という説もある[要出典]。 統覚型視覚失認や連合型視覚失認が生じる病巣から外側に少し伸展すると視覚による認識障害のほか、両手の触覚による認識も障害される。この状態を多様式失認という。聴覚刺激を介せれば認識することができる。 聴力障害が認められないにもかかわらず、言語音あるいは非言語音を認識できない状態を聴覚失認という。厳密には非言語音のみを認識できない場合を聴覚失認(環境音の認知障害ならば環境音失認、音楽の認知障害ならば受容性失音楽という)、言語音のみを認識できない場合を純粋語聾、全てを認識できない場合は全般性聴覚失認と区別することもある。聞こえてはいるのだが、それが何か分からないと訴えることが多い。皮質聾という病態では聴力検査に異常が認められるので失認ではない。 聴力検査や聴覚脳幹誘発電位を行う。これらの検査では正常を示す。また失語症の検査を合わせて行う場合が多い。失語症と聴覚失認の合併を疑える場面は認められるが、聴覚失認の診断には聴覚以外の刺激では理解ができることが必須であるため、内言語障害がある場合は診断ができない。 皮質聾は皮質性聴覚障害、皮質性難聴ということもある。聴放線、一次聴覚皮質(ヘッシェル回)の両側性障害によって起こるとされている。聴力検査で軽度から中等度の異常を示す場合が多い。あらゆる音刺激に対して聞こえにくさを訴え、聾者のようにふるまうこともある。通常は二相性の経過で発症する。一回目の発作では聴力に関しては無症状であるが、二回目の対側障害で一過性の聾状態となる。経過とともに改善し、聴覚失認の状態となる場合もある。 読み、書き、話すことはできるが話し言葉の理解のみが障害された状態である。純粋語聾は両側側頭葉または優位側頭葉の病変によって起こることが多い。両側側頭葉障害では音刺激の時間的知覚の障害(連続する二音の識別覚の低下)で、優位側頭葉病変では言語に関連する音素の弁別障害で純粋語聾の状態となると考えられている。聴覚刺激からウェルニッケ野が孤立する病態が考えられており、ウェルニッケ失語の改善過程でも認められることがある。しかしその場合も診断をすることは難しい。 動物の鳴き声が認識できないなど、言語や音楽を除く有意味音の同定や認識が障害された状態を示す。 音楽が認識できない状態のこと。
視覚失認で行う検査
視力と視野
知能
全般性注意と空間性注意
言語機能
出来事の記憶
感覚チャネルの特異性
視力障害××××○
視覚失認○×××○
視覚性失語○×○○○
失語○××××
多様式失認
聴覚失認
聴覚失認で行う検査
皮質聾
純粋語聾
環境音失認
受容性失音楽
脚注[脚注の使い方]
注釈
出典^ Frederiks JAM The agnosias: Disorders of perceptual recognition. Vinken PJ, Bruyn GW, Aminoff MJ, et al (eds) Handbook of Clinical Neurology. vol 4, pp13-47, North-Holland, 1969
^ 『標準言語聴覚障害学 高次脳機能障害学 第3版』 藤田郁代監修 阿部晶子ら編集 「視覚認知の障害」 平山和美 pp56-57
^ a b c d e f 『標準言語聴覚障害学 高次脳機能障害学 第3版』 藤田郁代監修 阿部晶子ら編集 「視覚認知の障害」 平山和美 p57
^ a b c d 『標準言語聴覚障害学 高次脳機能障害学 第3版』 藤田郁代監修 阿部晶子ら編集 「視覚認知の障害」 平山和美 p58
^ 『標準言語聴覚障害学 高次脳機能障害学 第3版』 藤田郁代監修 阿部晶子ら編集 「視覚認知の障害」 平山和美 p67
参考文献
ベッドサイドの神経心理学 改訂2版 ISBN 9784498029293
高次機能障害 その概念と画像診断 ISBN 9784498128163
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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