なお、仕事探しをあきらめた人は就業意欲喪失者 (discouraged worker)と呼ぶ。 アメリカ合衆国労働省労働統計局(BLS)では、失業率のほか、失業の異なる側面を測定する6つの代替指標U1?U6を定義している[40]。 総務省統計局「労働力調査」詳細集計(2018年以降)の就業状態の分類 15歳以上人口 日本において失業率という場合、完全失業率を指す[43]。失業者とは「働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態にある人」を指すので、仕事探しをあきらめた人(就業意欲喪失者)は失業者には含まれない。 「働く意志がある」とは、労働力調査においては、ハローワークに通って職探しをするなど仕事を探す努力や事業開始の準備をしていること、とされている。仕事に就けない状態には仕事をしなくても職場から給与などを受け取っている場合を含まず、こうした場合は休業者として扱われる。 失業率は、国全体の景気動向を知る上で重要な指標となっている[43]。不況による失業率の上昇は、労働力が有効に活用されていないという経済的な無駄が増えていることを意味する[44]。 失業率は様々な経済活動と関連しながら変動する労働市場においての需給の引き締め度合いを表すシグナルとなる[45]。 失業率の抑制は経済政策の重要な目標とされる[46]。また、失業率を減らすことは、労働の経済学の重要な課題である[47]。 失業率は、 というの二つの側面がある[46]。 失業率は景気と相関があると言われているが、動きが一致するとは限らない。失業率は、景気循環要因以外にも、経済構造に関連する要因によっても動く[48]。伝統的な日本的経営のもとでは、企業は従業員の雇用を守ることを企業の社会的使命の1つと考えており、整理解雇、特にリストラをなるべく忌避し、ぎりぎりまで状況を見極めようとするからである。その反面、採用についても、大企業になるほど、慎重で計画性や人員構成のバランスを重んじ、不要不急の採用は避ける傾向にある(一方で、近年非正規雇用の採用は柔軟に行っており、雇用関係指標を見る際にはその点も考慮に入れる必要がある)。 また、労働者側も、不況が長期化すると就業意欲喪失者が増加するが(不況で求人が少なくなり「どうせ就職できない」とあきらめる人が増える)、このため失業者数が減り、失業率を押し下げる要因になり、表面上は景気が回復したかに見える。逆に、景気回復局面では(景気が良くなって求人が増えるだろう、と)新規に仕事探しを始める人が現れるので、かえって就労を希望する「失業者」が増えて、失業率を押し上げることになる。 以上のようなことから、失業率は景気に対して遅行指標となっており[46]、失業率のみならず他の景気指標を併せてみる必要がある。失業率は景気動向と比較して、通常1年から1年半送れて変動する。また、景気の先行指数の代表である株価と、遅行指数の一つである失業率は、一時的に正反対の動きを見せることがある。 高い失業率の問題は、国全体としての所得の低下にとどまらず、 といった痛みを人々に対して与える[49]。 失業率と犯罪発生件数は相関があり、失業率が下がると犯罪発生件数が下がると2006年版犯罪白書で報告されている。 各国の失業率及び概況を示す。ただし算定基準は日本と異なる国も多い。
米国
U1: 15週間以上失業している労働力の割合[41]。
U2: 失業、もしくはパートタイム契約を満了した労働力人口の割合。
U3: ILO定義による公式の失業率、すなわち無職であり、かつ過去4週間以内に積極的に仕事を探している場合[42]
U4: U3に就業意欲喪失者を加えたもの。すなわち現在の経済状況から自分には仕事がないと考え、仕事を探すのをやめた者。
U5: U4に、"marginally attached workers"、"loosely attached workers,"、働きたく考えているが仕事を最近は探していない者を加えたもの。
U6: U5に、フルタイム雇用を希望するが、経済的理由でパートタイムで働いている不完全雇用者を加えたもの。
日本日本における失業者や失業率の定義については「労働力調査」を参照
労働力人口 非労働力人口
就業者失業者 潜在労働力人口その他
従業者 休業者 拡張求職者 就業可能非求職者
景気等との関係
様々な経済活動の「結果」
失業率を契機とした景気変動などに影響を与える「要因」
影響
所得分配の不平等化の要因となる
貧困をもたらす
人々の幸福感を大きく阻害する
犯罪利率・自殺率を高める
各国の失業率欧州地域及びトルコの失業率(2019年,Eurostat.)[50]2000年1月-2021年1月の日本と米国とイギリス、欧州連合の失業率[51]米国各州の失業率(2020年 年平均) [52]
アメリカ合衆国 - 1970年代、高失業率に苦しんだアメリカだが、その後のIT革命などにより失業率は改善した。
Size:96 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef