失業率は、
様々な経済活動の「結果」
失業率を契機とした景気変動などに影響を与える「要因」
というの二つの側面がある[46]。
失業率は景気と相関があると言われているが、動きが一致するとは限らない。失業率は、景気循環要因以外にも、経済構造に関連する要因によっても動く[48]。伝統的な日本的経営のもとでは、企業は従業員の雇用を守ることを企業の社会的使命の1つと考えており、整理解雇、特にリストラをなるべく忌避し、ぎりぎりまで状況を見極めようとするからである。その反面、採用についても、大企業になるほど、慎重で計画性や人員構成のバランスを重んじ、不要不急の採用は避ける傾向にある(一方で、近年非正規雇用の採用は柔軟に行っており、雇用関係指標を見る際にはその点も考慮に入れる必要がある)。
また、労働者側も、不況が長期化すると就業意欲喪失者が増加するが(不況で求人が少なくなり「どうせ就職できない」とあきらめる人が増える)、このため失業者数が減り、失業率を押し下げる要因になり、表面上は景気が回復したかに見える。逆に、景気回復局面では(景気が良くなって求人が増えるだろう、と)新規に仕事探しを始める人が現れるので、かえって就労を希望する「失業者」が増えて、失業率を押し上げることになる。
以上のようなことから、失業率は景気に対して遅行指標となっており[46]、失業率のみならず他の景気指標を併せてみる必要がある。失業率は景気動向と比較して、通常1年から1年半送れて変動する。また、景気の先行指数の代表である株価と、遅行指数の一つである失業率は、一時的に正反対の動きを見せることがある。 高い失業率の問題は、国全体としての所得の低下にとどまらず、 といった痛みを人々に対して与える[49]。 失業率と犯罪発生件数は相関があり、失業率が下がると犯罪発生件数が下がると2006年版犯罪白書で報告されている。 各国の失業率及び概況を示す。ただし算定基準は日本と異なる国も多い。 失業保険の給付期間の長い国ほど失業率が高い傾向があり、給付期間が短期なほど失業率が押し下げられる傾向が顕著となる。[54][55][56]日本の失業率(男女別、年齢別)。15-24歳の細線が若年失業者にあたる[57]。 研究チームの分析によると、2007年まで欧州では、相対的貧困レベルで世代間格差がなかった。しかし、2007年以降に欧州の65歳以上の高齢層の所得は10%増加した一方、同期間に15?24歳の若年層の所得はむしろ激減した。研究チームはその背景に「若年失業」と指摘している。EU統計局によると、2007年にEU地域の若年失業率は15.6%だったが、2014年に23.8%まで急騰した後、2016年にも20.9%で長期間の高い若年失業率が続いている。若年失業問題が欧州で極限に達した2014年には南欧諸国でスペインの53.2%、ギリシャの52.4%、イタリアの42.7%で約半分の15才から25才が失業者であった。国際通貨基金の研究者は、「失業の呪いが長期間持続されたことで青年たちはより一層仕事を見つける難しくなっている」、「欧州の若年層は、全体の世代の中で資産に対する負債比率が最も高い世代であり、金融危機が再発した際に青年層が最も脆弱で打撃を受けることになる」と述べている。2017年に世界の若年失業率は二年連続で悪化し、13.1%だった。世界で15?24歳の若年労働者 高い若年失業率で若者が就職難である韓国と対照的で人手不足の日本に就職する韓国人が毎年増加している。日本の厚生労働省が発表した2017年の「外国人雇用現状」で2008年には約2万人だった日本で就業した韓国人が2017年10月時点で5万5900人になって、初めて5万人越えした。2016年からの増加幅は過去最大で1年間で約8000人増加し、2008年からの9年間で約2.7倍になった。2017年の韓国の若年失業率は2000年以降最も高い9.9%で、日本を就職先として注目する韓国人が増加し、日本語の学習熱が復調している[59]。
影響
所得分配の不平等化の要因となる
貧困をもたらす
人々の幸福感を大きく阻害する
犯罪利率・自殺率を高める
各国の失業率欧州地域及びトルコの失業率(2019年,Eurostat.)[50]2000年1月-2021年1月の日本と米国とイギリス、欧州連合の失業率[51]米国各州の失業率(2020年 年平均) [52]
アメリカ合衆国 - 1970年代、高失業率に苦しんだアメリカだが、その後のIT革命などにより失業率は改善した。FRBの金利判断の指標の一つとなるなど、世界でもっとも注目を集めている失業率。
ドイツ - 1980年代までの旧西ドイツは失業率が高くなかったが、1989年のベルリンの壁崩壊以降、旧東ドイツの高失業を抱え込んだため、失業率は高止まりをしていたが、EU加盟によるユーロ安の恩恵を受けて輸出経済が発展し、ユーロ導入国の中では一人勝ちと言っていいほどの低失業率となった。ドイツ#経済も参照。
フランス - 高失業率に苦しんでおり、労働政策が政局にも影響を与えている。また、職を奪っているとして移民への風当たりも強い。フランス#高失業率、2005年パリ郊外暴動事件も参照。
シンガポール 2.25% (2019年)[1]
中華民国(台湾) 3.73%(2019年)[1]
ユーロ圏(EU) 6.7% (2019年,15歳以上75歳未満)[53]
ナウル - 経済崩壊と財政破綻により政府職員を除くほぼ全ての国民が失業状態のため、失業率は2004年時点で90%とされる。その後、失業率は2011年時点で23%とされる[1]。
日本 - 3.0%(2020年、完全失業率)。
諸外国の高い若年失業率問題
失業者の支援各国の失業保険給付期間については「失業給付」を参照